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「This is a pen.」をいえる日は来るか
今なのか。
そう思ったのは、日本行きの飛行機の中だった。
隣に座っていたカップルが、税関申告書を書くためのペンを持っていないようなのだ。
自分の申告書の記入を終えた私は、いざカップルに「ペンをどうぞ」と話しかけようと横を見た。
その時思ったのだ。
このシチュエーション。
まるで英語の教科書のワンシーンみたいじゃないか。
「This is a pen.」世代の私は、この有名すぎるフレーズを実際に使えたことが確かに今までなかったように思う。
今いえるだろうか。
でもこのシチュエーション。どうだろう。
「This is a pen … for you!」
と明るくいえば、それっぽくなりそうでないか。
とまで考えたのは後のことで、結局その時は「ペン使いますか?」と聞いて終わった私だった。
学校の授業で私が英語を初めて習った時。教科書に使っていたのはOneworld。
主人公はアキという名前で、確かオーストラリアに行くというストーリーだったと思う。
それまで学校の勉強といえば主にテストのためにしていたが、英語に出逢うとそれは別物だった。
海外へ行く予定なんて全くなかったその頃。
アキが飛行機でCAさんに食事はどうするか聞かれて、流暢に答えるシーンは私の憧れだった。
初めて国際線に乗った時、自分の座席の何列も前からCAさんがカートを押して近づいてくるのをチラチラ見て。
アキと同じ質問をされた時の興奮はいうまでもない。
あの時のOneworldの教科書はまだ捨てられずに持っている。
それは後に深く関わる英語の勉強をスタートした、はじまりの本だった。
あれからきっと英語の教科書の内容も変わったのだろう。
This is a pen.はもうないのだろうか。
それはそれで寂しい気がする。
さて、このフレーズを使うシーンは、実際どんなものが考えうるだろうか。
私はどうも素人漫才みたいなかけ合いしか思いつかない。
「ネェ。チョット、ペンチモッテキテ」
『はいはい、どうぞ』
「エェ!コレハペンデス…!ペンデスケド!」
こんなことはなかなか起きないか。
もしくはこんなのはどうだろうか。
薄暗い小路で、どう見てもペンに見えないペンを差しだす怪しい人物。
ペンを差しだされたその相手は、フームと疑いの目でそのペンらしきものを受けとるが、持っていた手帳に流れるような「あいうぇぉ」を書きはじめた瞬間。
「This is a pen!!!」と感嘆の声をあげる。
そんなCMがあってもいいのかな(どんなペンのCMだ)。
私のアイディアはここまでだ。
しかし。思いもよらぬ自然な流れでThis is a pen.をいう日がいつか来るかもしれない。
その時は。その機を逃すことなく、思いきりでも冷静に言おう。
This is a pen.
ちなみに私はpenとpencil どっちがどっちかわからなくなったことがある。
penといえばボールペンで、pencilは鉛筆。
書くという同じ用途を持つことからしても、似ている両者の名前には相関関係があると思ったが、そうではないようだ。次の記事によるとそれぞれの語源となったラテン語は別であるという。
まずペンは、ラテン語で「羽」を意味するpennaまたはpinnaに由来しているという。これは鳥の羽を削り尖ったその先にインクをつけて書いていた羽ペン時代にペンの起源があるから。
一方のペンシルは、ラテン語のpenicillusに由来し、こちらは小さなしっぽやブラシを意味するという。実はあのペニシリン(penicillin)も同じ語に由来するそうで。フレミングによるペニシリン発見のきっかけとなったカビが、箒や筆のような形状をしているため「ペニシリウム属」と学名がついており、そこからペニシリンの名がとられたそう。話を戻すと、ペンシルという名前は、現代の鉛筆ができるずっと前に使われていたという絵筆の形がしっぽに似ていたためについたものらしい。
ペンとペンシル、二つの言葉の音は似ているが語源は違うということがわかった。
もしも、タイムスリップしたのならThis is a pen.と目の前の人が言うその先に、見たことのない美しい文房具が現れるかもしれない。
その時はためらいながらも冷静に聞こう。
Is this a pen?
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