【感情紀行記】記憶にございません
暗記科目というのは、昔から苦手であった。特に、実用性や意義を感じられないものは覚えが悪かった。興味関心がないと覚える気にすらならない。
中国語のテストの一つに暗唱というものがあった。5行だけなのだが、未修得外国語である上に、発音が難しいため、覚えるのに苦慮した。本番当日、かなりのレベルとスピードを持って暗唱することができた。しかし、教授の前に立った瞬間に頭が真っ白になり、記憶という記憶が飛んだ。やり直し、初めは詰まったものの、変に繋がった単語たちが無意識に吐き出されたことには驚きを覚えた。忘れていた。自分は本番に弱く、あがり症であることを。
緊張すると何もかも考えられなくなる。話そうと思っていたことも記憶していなかったかのごとくまっさらになる。とあるお偉いさんと対面で話す機会をいただいたことがあった。その際も何もかもが吹き飛び、緊張していることを伝えるべく、「アイドルに会っているかのようです。」と支離滅裂で場違いな発言をし、後に赤面したこともある。
とにかく、頭が真っ白になるとは本当にホワイトアウトしてしまうのだ。自分の位置すらわからない。脳内のホワイトアウトは恐ろしく、記憶を辿る術すらない。そんな緊張感と焦燥に包まれた暗唱テストであった。