『ピエール瀧の23区23時』〜セカンドシーズン 千代田区編
ピエール瀧が東京23区の各区を夜中に散歩したら一体何が起こるのか?!という自由徘徊実験企画。決まっているルールは“23時になったら写真を撮る事”と“100円自販機を見つけたら興味本位で味見をする事”のふたつ。それ以外は基本行き当たりばったりのゆるゆる企画。ファーストシーズンは2010年に開始。その模様は『ピエール瀧の23区23時』(産業編集センター/刊)として2012年に書籍化されている。10年後の2020年、セカンドシーズンがスタート。
千代田区編
東京メトロ千代田線「国会議事堂前」駅スタート
ー今日は東京のど真ん中千代田区です。瀧さんの発案で、夜の永田町を歩いてみようと思います。
瀧:今日のテーマは「千代田区にある官公庁の建物を巡る」。総理大臣官邸とかニュースでよく見るし、あと「小学生の頃来たぜ、国会議事堂」っていうのはあるけど、結局あまり知らない建物ばかり。そんな千代田区永田町界隈の官公庁を夜中に巡ってみようっていう、ね。
ー瀧さんが発案してくれて、千代田区の地図を見て気づいたんですけど、日枝神社の辺りまで千代田区なんですね。あそこはもう港区だと思ってました。
瀧:そうそう、この地図でいうと左側の先がTBS(港区)で、ちょうど神社の辺までが千代田区なんだよね。千代田区ってさ、ちっちゃいよね。
ーそうですね、皇居が真ん中にドカンとありますけど。
瀧:そうかなるほど、皇居があるか。それはデカい!
ーさっき日枝神社の辺りから歩いて上ってきたんすけど、途中に「なんでこの辺が官公庁になってるのか」って説明が書いてあって。日枝神社って山とか水とか大地を司る神社らしいんです、それでこの辺の領域では、江戸城を中心に畜産業を行ってたらしいんですよ。その跡地がどうも官公庁になってるっぽいですね。
瀧:なるほど、武家屋敷とかじゃなくて、割とファームゾーンだったってことね。何かいろいろさ、皇居にまつわるオカルトチックな話とかもちらほらあるじゃない? 今日そこまで掘れるかどうかわかんないけど。
ーはっきりしてますよね千代田区って。地図見ると、港区と千代田区の境界線がここなんですけど、ここが特許庁で、その前はもう民間の建物ですからね。
瀧:なるほど。なんとなく回ってみようぜって言ったけど、どういうメニューかは考えてなかった。でもやっぱまずは国会議事堂は一応写真に収めたいじゃんか。あと、行ってみたいっつったら何処だろ? やっぱあそこだな、総理大臣官邸でしょうな。今いるここは国会記者会館の前なんだね。あとはこの地図だとなんとなく気になってるこれ、アメリカンセンターって何だろ? 夜のアメリカ合衆国大使館も見てみたいかな。
ーもうそっちは港区ですね、アメリカンセンターも。
瀧:あ、アメリカンセンターから港区になるのか。そうかなるほど。東横インは千代田区、山王パークタワーも千代田区側なのにな。残念。
厳重警備!首相官邸!
瀧:じゃどういう順番で巡っていこうか?
ーとりあえず国会議事堂の写真、撮るだけ撮りましょうか?
瀧:そうだよね、ここはまず国会議事堂から押さえていくべきだよね。じゃあ行ってみよう国会議事堂。首相官邸も、写真を撮る分にはいいんじゃないの? 「お前ら何やってんだ!」って言われたら「どーもすいません。てへへ」って言えばいいだけでさ。あ、中央官庁の案内あるね。
ーここでちょっとプランニングしましょうか?
瀧:あ、もうここが総理大臣官邸じゃんか、国会議事堂と近いんだな、やっぱりね。日比谷公園は千代田区?
ーそうですね、だから多分その辺がゴールになると思うんですよ、日枝神社まわってから。
瀧:オーケー、了解。首相官邸、厚生労働省、国土交通省、外務省、警視庁。あと桜田門ね。桜田門のあたりも周りつつ、せっかくだから普段歩かないところは積極的に行ってみたいよね。
瀧:しかしこれ、首相官邸はどの程度だったら写真撮らせてくれるんだろ?さすがに入口の前で撮るのは無理か。まあでもそりゃそうか、気軽に撮らせてくれるわけがないよねぇ。道のこっち側から(フォトグラファーの)横ちゃんに上手に撮ってもらおう。しかしお巡りさんがいっぱいいるな。ピリピリしてて簡単に近づけさせないムードが凄いわ。
ー一応人の家ですしね。
瀧:人の家だけど、俺の家でもあるんだぜ。一応税金で建てたんだから(笑)。どこかの何かの部分、1センチ四方ぐらいのキューブ的なものはさ、俺の家だって考え方もできるじゃんか。
お巡りさん:すいませーん。
瀧:はい。あ、写真を撮ったらまずいですか?
お巡りさん:いや、大丈夫なんですけども、報道の方じゃなくて街の写真撮ってるだけですよね?
瀧:はい。
お巡りさん:わかりました。それでしたら大丈夫なんですが、多分もしかしたら、この後も誰かにまた同じことを訊かれるかもしれませんので、その場合は同じように答えていただければ。
瀧:わかりました、ありがとうございます。じゃ撮ろう。
瀧:すごい、すごいな。他のお巡りさんもみんなこっち見てるわ。そりゃそうだよね。
お巡りさん:あのすいません、何もないと思うんですけども、一応鞄の中身だけ見せていただけますか? 仕事なもので。
瀧:はい。なるほど、危ないもんが入ってないか、ってことですよね? いやそりゃそうですよね。すいません、お仕事増やしちゃってごめんなさい。
お巡りさん:すいません、ありがとうございます。
(カバンの中身チェックする)
お巡りさん:はい、確認しました。ご協力ありがとうございます。大丈夫ですので。すいません、お引き留めしちゃいまして。
瀧:いえいえ、こちらこそすいません。お騒がせしました。やっぱそうなんだね。首相官邸の警備すごいちゃんとしてんだな。
ー本当ですね。まあ撮影でフラッシュ使うのだけはやめておきましょうか。
瀧:そうね。そのほうがいいかも。じゃあ国会議事堂の方に行ってみよう。
瀧、42年ぶりの国会議事堂
瀧:でも昼だったらさ、写真撮ってる人普通に結構いそうじゃない? こないだ「夜はいろんなことを許してもらえる」って話したと思うけど、逆に夜の方が許してもらえない感じよね、この辺の撮影に限っては。
ー確かにそうですね。
瀧:多分昼だったら写真撮ってもさ、そんなにうるさく言われないと思うんだよね。でも夜だと「何こいつら? すごく怪しい」って話になる。見てよ、警察関係の車両もあそこにバス2台待機中。そんなこと話してたら国会議事堂に到着、と。これは国会議事堂横門っていうのか。あれなんて書いてある? 衆議院か。お巡りさんすいません、ここで写真撮ってもいいですか? この表札だけ撮るので。
お巡りさん:そこだけなら大丈夫ですよ。
瀧:ありがとうございます。
ーさっきのお巡りさん、オリックスバファローズの吉田正尚に似てましたね。
瀧:ハイウエスト吉田(笑)? 確かに似てたね。しかし吉田はなんであんなにハイウエストなんだっていうね。渡辺謙さんか吉田正尚くらいだよ、あんなにウエストを上げるのは(笑)
ー自分の下半身の筋肉を強調したいのかな? と思うんですけど。
瀧:それだけじゃない気もするけどな。つうかさ、さっきお巡りさんと話した会話も含めて、もうこのエリア全てのお巡りさんに俺らの情報が行き渡ってそうじゃない? なんか撮影してる5人組が今いるよ、っていうさ。取材か旅行かはっきりしないけど、多分あれ取材かなんかだぞって。取材の場合だとさ、俺が建物と一緒に写るには申請許可が要るのかな。でもきっと横ちゃんが普通に撮るには許可要らないんだもんね。
ーこの企画でこんなに緊張感あるのも初めてですね。
瀧:それはすげぇあるね、夜散歩してるだけなのにね。普通にこうやって歩道を歩いてるだけなのに、なんとなく常に誰かに見られてる感じあるもんね。やっぱここも「防犯カメラ作動中」だもん。
瀧:すごいな。後ろの方の遠くにいるお巡りさんでさえガッチリこっち見てるね。「ちょっとでも変なことしたらお前らわかってんだろうな!」っていうムードすごい出てる。だってほら見てごらんよ、塀の上もさ、細いワイヤーでブービートラップみたいなの張ってあるよ。
瀧:そういやさ、さっきの表札に衆議院って書いてあったってことは、向こう側が参議院ってことだよね。そっちも見てみようか。
ーあ、ちゃんと参議院って書いてありますね。
瀧:本当だ。左が衆議院だから、右が参議院。なるほどなんか思い出した。国会議事堂は小学校6年生の修学旅行で来て以来だな。うちの小学校の修学旅行先が東京と日光だったんだよね。
ーその辺がやっぱし静岡シティボーイですよね。
瀧:全然シティボーイじゃないだろう。なんでだよ(笑)
ーいや、僕が住んでた宮崎県は修学旅行の行き先鹿児島県だったんで(笑)
瀧:宮崎県から隣の県へ? まあでも東京もほぼ隣の県みたいなもんか、静岡からの距離で言うとさ。一応間に神奈川は挟んでるけど。ところで、あの配置されてる警備のお巡りさん達は、どの庁舎のあたりでいなくなるのかね? それによってあんまり大事にされてない庁舎がわかるよね(笑)。あ、ナショナルダイエットメインゲートだって。議事堂って英語で「ダイエット」って言うんだね。
国会議事堂の裏側はどうなってるの?
瀧:参議院の側に沿ってさ、裏側とかまでグルッと回って見たくない?
ー議事堂の周りをぐるっと歩いて、もう1回スタート地点に戻ってから再度ルートを考えるってのも。
瀧:そうしよう。でも警備の人達から「なんだよ! あいつらまた来やがったよ。面倒くせーな!」とか思われそう(笑)。だってほら見てよ。あそこ(道の逆側)からもちゃんとずっと見てるもんね、若いお巡りさんがさ。向こうの方(遠くの角)からも定期的にチラチラ見てる。こっちは「夜中の国会議事堂を見たくて見に来ました」っていう、まあまあ真面目な動機なんだけどな。もしかしたら、マスクしてるから余計怪しく見えるのかもしれないな。あれ?道の向こうサイドの森っぽいのはなんだ?
ーそっちは憲政記念公園ですね。
瀧:憲政記念公園ってことは、日本が憲政になったことを記念して作ったってことだよね。なるほど。多分明治時代とか? 明治になって社会のシステム変わったんでってことかな、おそらく。夜は入れないんだよね?
ー(検索して)前は憲政の神様って言われた政治家、尾崎行雄の記念館だったのが、1972年に衆議院に寄贈された時に改称されたみたいです。そしてやはり夜は入れないですね。門が閉まってます。ちなみにあそこはお土産物屋さんだそうです。
瀧:あそこ土産物屋なんだ。夕方のニュースとかで取り上げられる、安倍晋三饅頭とか売ってるところってあそこ? 政権が変わると速攻で作って売り出すやつ。で、キャバクラとかでみんなで半笑いで食うんだよね。あ、これも見たことのない防犯セキュリティだな。ほら、その黒いかまぼこみたいなの。それ見たことないよね。
ー一瞬で人を気絶させる音を出すんじゃないですか?
瀧:キーン! みたいなやつ? 高周波とかで?
ーもしかしたらモスキート音出してるのかも。
瀧:若者が近づいてこないように?(笑)。普通の深夜の散歩だったら別にそんな事ないのかもしれないけど、ここら辺りだとどうやら一眼レフのカメラがあると相当向こうを警戒させるみたいね。だってさ、昔から夜中に酔っ払って歩いてる人なんてのはいくらでもいたわけじゃんか、絶対。有楽町で飲んだ後の帰りの余興とかでさ。そういう人が千鳥足でただ歩いてる分にはそんなに問題ないんだろうけど、やっぱ一眼レフだよ、あちらさんの緊張感を増幅させるのは。しかしこの辺りめっちゃ植物の手入れが行き届いてるね。落ち葉も定期的に掃いて清めてますって感じだもん。その向こうに見える議事堂の窓の形も格調アリっていうか、なんかかまぼこ型してる。国会ってさ、会期中しか開いてないじゃん。国会の会期って年間どんぐらい? 150日ぐらい? じゃあさ、国会議事堂って国会が開かれてないときって何やってんの?
ー見学を受け付けてるだけかもしんないっすね。
瀧:観光名所としての日数の方が多いのか。なんか複雑。あ、あそこのエレベーターホールの横に飲み物の自販機見えてるな。いくらの設定なんだろうな、あれ。
瀧:とか言って立ち止まってたら、新手のお巡りさんがまた近寄って来てる。「視認しました。赤いキャップ、黒い服、5人組。一眼レフ持ってます。」とか無線で報告してるっぽいな。お巡りさんが来た方向に抜けると日枝神社か。
お巡りさん:すいません、どちらまで行かれますか?
瀧:日枝神社の方までです。
お巡りさん:はい、わかりました。
瀧:やっぱ、僕ら怪しいですか?
お巡りさん:いやそんなことないですよ。
瀧:いやいや、でもきっと怪しく見えますよね。でもご安心ください、悪いことは企んでませんので(笑)
お巡りさん:はい(笑)。ありがとうございます(笑)
瀧:いえいえ、こちらこそすいません。ご苦労様です。
ー衆議院の裏に、国会の郵便局あるみたいですね。
瀧:俺もさっきMAPで見た。議事堂って吉野家も入ってんでしょ、確か。国会のバックヤードでみんなで牛丼食べてるってことだよね(笑)。「ミサイルどうする?」とか言いながら。コンビニもあったもんね、セブンイレブンが。これは議員宿舎?
ー参議院の議員会館ですね。
瀧:参議員の議員さん用の部屋が用意されてるのか。あ、そういえば昔「しょんないTV」のロケで来て中入ったことあるわ。ということは衆議院側の会館も別にあるってことだよね。当選したら、この中のどれか一つの部屋をあてがわれるわけでしょ。専用部室みたいな感じでさ。で、選挙で落選すると「はい、じゃあさっさと出てってね」っつって。ドライだわ(笑)
ーあの窓のとこ。衆議院議員会館の喫煙室で、こんな時間に黄昏てる人いますね。
瀧:議員の先生かな。
ーいやあ、秘書の方じゃないですかね。
瀧:議員会館にちゃんと喫煙室あるんだね。各議員会館は国会議事堂の丁度裏側にあるんだな。
徹底警備に心が削られる
瀧:国会議事堂ってさ、お札とかになったことなかったっけ? 俺、ホワイトハウスと勘違いしてるのかな。
ー調べてみますね。(検索して)あ、百円札に使われてますね。
瀧:百円札か。へえ、参議院の議員会館は1棟なのに、衆議院は2棟あるのか。なるほど。もうさ、これだけ長くここらをウロついちゃってると、警察サイドとしてはだいぶ俺たちに対する警戒レベル上がってきてると思うよ(笑)。中央コンソールルームのモニター上に、ピッピッピッって俺たちもう光の粒で動いてる感じだと思う。
ー「はい、カメラ切り替えてー」
瀧:「立ち止まってるな。何だ? なんかジュースの自販機の方見てます。喉渇いてんのか?」とかね。そして、ここにもまた謎の器具が設置されてるな。うかつに触るとキュ〜〜〜ンと鳴って記憶が2日分ぐらいなくなるんじゃない? そんな感じだよねこの黒いの。
ーT字路に来ました。ここを右に曲がって坂を下っていくと日枝神社ですね。
瀧:割と長い坂。ということは、日枝神社の裏を経て、TBS方面に続いてるんだよね。とりあえず1回曲がろうか。いい加減曲がらないとお巡りさんがずっと(振り返る)……ってほんと、まだめっちゃついてきてるじゃん(笑)。徹底マークされんのしんどくなってきたからいい加減曲がろう。ええと、山王坂か。
瀧:「ここもまた、実に走りたくなる坂である」感が凄い入ってってんね、山王坂。お巡りさんも、今本部に連絡してるだろうね。「はい、例の5人組坂下ってまーす」って。いなくなってくれりゃ、それが向こうにとっては一番いいんだろうね。でもさ、途中から絶対後つけられたよね。どの辺から?
ーお土産屋の辺りですね。
瀧:あと誰か(スタッフ)警察官に1回話しかけられてたじゃん、その後。今もなんか無線で喋ってるもんね。「はい、今離れました。離れていきました」っていう本部への報告でしょ、多分。ただ歩くだけなのに緊張感あったよね、本当に。いや別にさ、むしろなんか理由としては真面目じゃんか。夜中の国会議事堂前辺りどうなってるんだろうな、とかっていうさ。日本を支えるいろんな官公庁見てみたいっていう。理由としてはさ、至極真っ当な。むしろ昼間だったら歓迎されてもおかしくない理由なんだけれども、夜来ちゃうとこうなるっていう(笑)ピリッとするっていうさ。そして今も見られてると思うよ、望遠のカメラか何かで。
いつもの町並みに落ち着きを取り戻す
瀧:坂を下ってきましたよ、と。わ! これお家?
ー酒屋さんですね。
瀧:スッゴイとこにあんね。酒屋さん天竹。急に普通の家じゃんか。普通の酒屋さん落ち着くわ〜。いつもの町に戻ってきた感じ。そうか、ここはもうどっちかっていうと神社よりのエリアだ。矢吹君ここの酒屋って来たことある?
ーないですね。
瀧:でもホントいっこ坂下ったら解放されたね、監視スクランブル状態から。肌感覚でわかるモンだわ。今まで独特な緊張感に晒されてたもんな。
瀧:実は、今日家でさ、昼間に映画『新幹線大爆破』を観てたの。それを観た後だから、何となくさっきまでの妙にピリッとする感じが心地よいというか(笑)
ーそれめっちゃ面白いですね(笑)。警察に追われ続けてる映画(笑)
瀧:そうそう、それの気分的な名残をこっそり楽しんでたというかさ。ほんと坂1本下っただけで、地図上の位置で言ったら議員宿舎と首相官邸があるところのすぐ裏っかわだけど、それで全然違うもんね。あ、隣の建物もいいねこれ。料亭? 住所は永田町2丁目。
ーお蕎麦屋さんですね、永田町黒澤。臨時休業中ですね。もしかしてコロナ渦で今はやってないのかもしれないですね。
瀧:外装がカッコいい。あの松とかいいね。ちょっといい感じの佇まいだなあ。行ってみたくなるお蕎麦屋さんだね。
ー2020年4月7日から当面の間休業ですって。
瀧:やっぱりコロナ渦でか。でもこの蕎麦屋はいいね、おそらく議員連中食べに来るでしょ。
ーメニュー、カレーうどんありますね(笑)。しかも全然高くない。
瀧:この雰囲気でカレーうどんあんの!? (メニュー眺める)お弁当とかもあるよ。やっぱコロナウイルスって書いてあるじゃん。「2020年4月7日から当面の間、レストラン黒澤グループは、新型コロナウイルス感染症に対するお客様並びに従業員の健康と安全、感染の拡大の防止を第1に考え、当社グループが運営する下記店舗の臨時休業を継続することにしました。永田町の黒澤」へえ。夜23時までやってたんだね、以前は。それかもう、出前っしょ。国会に。「今日は長くなりそうだな、じゃあ黒澤のカレーうどんか。定番の」みたいな。
ー2階もありますね、しかも結構広い。宴会場ですかね。
瀧:この感じだったらありそうだよね。弁当って書いてあったから、仕出しのお弁当みたいなやつを並べて。国会で何か決まった後に、ちゃんちゃんとやって締めましょうみたいなやつをやってたんじゃないの。
ー打ち上げ盛り上がりそうですね。
瀧:うん、正当に打ち上がりそう(笑)
日本屈指の公立名門校
ー僕好きな景色があるんですけど、寄っていいですか?
瀧:いいよ。何? 矢吹くん、日枝神社の辺り歩き慣れてんの?
ーTBSラジオで仕事終わったあととか、この辺散歩して帰るんですよ。
瀧:なるほど。いい習慣。俺、この辺り歩くのは初めてなんだよね。車で通るとしても、まずこっちは通らないもんね。トイレ発見。公衆トイレだね。雰囲気から察するに、タクシーの運転手さん御用達トイレっぽい。
ーそのトイレの向かい側なんですよ、僕好きなの。日比谷高校です。都立高校では一番入るのが難しい、日本屈指の名門高校なんです。学校の敷地から自由民主党の本部が見えるんですよ。今は夜なんであんまりちゃんと見えないんですけど、あの横にちょっと青い字で自由民主党って書いてあって。
瀧:ああ、なるほどなるほど。確かにあるな。はいはい。
ー毎日あの看板を見ながら登校してくる、日本の一番賢い公立高校に通う子どもたちの気分を、ちょっとだけ味わえるんですよ(笑)
瀧:気分だけね(笑)。公立高校だからちゃんと受験あんだもんね。「偏差値90」みたいな感じなの?
ー東大進学率は都立高校で1番のはずですね。
瀧:男子校なの?
ーいえ、共学ですね。卒業生だと、夏目漱石とか安藤優子さんとか。
瀧:そうなんだ! オレ用の学校でないことは確かだわ(笑)。奥の自民党の看板、なんとなくうっすら見えるね。あの時計台の向こうの奥の白い建物の上。横ちゃん、なんとか写せる?
瀧:さて行くか。トイレ横の自販機に100円の缶コーヒーがあるな。これきっとタクシーの運転手さん用だろうね。運転手さんのための100円コーヒー。運転手さんが、オシッコしてから桜眺めて缶コーヒーを飲む。ほっと一息つきながら。桜と自販機か。しっくりくるよね。
ー桜、かなり散っちゃいましたよね。
瀧:そうね。ここは確実に運転手さん用のスポットじゃん。今この瞬間だけでもぱっと見るだけで5台くらいタクシー停まってるもんね。こんだけ両サイドに停めてられるってことはさ、一般の車があんまり通らない道なんだろうね。基本は昼間に日比谷高校に用がある人くらいでさ。ここは左側がもう日枝神社の敷地になるんでしょ? ここは何なんだろ? お茶屋さん?
ーここは「山の茶屋」、鰻屋さんですね。
瀧:何と鰻屋さん!? この佇まいの⁉ 超食べてみたーい(笑)。食べログ的なやつ見てみようよ。
ーランチで2万しますね……。
瀧:え⁈ ランチで2万ってどういうこと?
ー一番安いコースでも1万2000円ですね。
瀧:そりゃあ普段からこういうとこで飯食ってる麻生さんは、カップラーメンの値段なんか知らないよね。いやマジでさ。そんなことあんの? と思ったけど、こことか見ると「いやでもそれはそうかもな」って気もする。
ーそう考えるとさっきの「黒澤」の値段は良心的ですよね。カレーうどん870円ですから。
瀧:そうね。ここは「山の茶屋」コースのみか。でもちょっと何か行ってみたい気にさせるね。ハレの時に来たい感じ。入学祝いとか、日枝神社でお見合いする時とか。あとは七五三とかかな。お宮参りした後に、両家のおじいちゃんおばあちゃんと一緒に来たりしてさ。夫婦と子供一緒に7人ぐらいで。お着物着た子供囲んで「なんか疲れたみたい」「そうかもね」なんつって、うなぎ食べるんじゃない? いいなぁ(笑)。
千代田区にもちゃんとある100円自販機
瀧:日枝神社の周りって静かで落ち着いてんね。そういえば、日枝神社ってお参りしたことないなぁ。
ー折角だから行きましょうか。
瀧:是非行こう。どうせ行くなら、正面のあのすごい階段を上がって行きたいかな。
ーあそこの横に今、エスカレーターありますよね。そしてまたしても自販機ありましたね、ここ100円ありますよ!
瀧:お! キタキタ! ネクター100円、青汁100円……。ここは珍しいから青汁かな。神社の脇でネクターを飲むのは、気分的になんか違うっていうか(笑)。千代田区編は青汁にしよう、健康志向で。しかも日枝神社横なのにちゃんと100円だもんね。せっかくだからあそこの日枝神社の格調高い碑の横で飲ませてもらおうかな。
瀧:じゃあいただきます。うむむ、確かにゴクゴク飲めんね、この青汁。それがいい事なのかはちょっとわかんないけど(笑)。一応健康な気分にはさせてくれるな。
瀧、日枝神社にお参りする
瀧:今まで全然気づかなかったけど、あそこ伏見稲荷みたいに鳥居連なってるね。多分本宮とは別ゾーンだよね。あそこからまず行ってみようか。(階段登る)うわ〜、何だこれ!? なかなかの雰囲気じゃない? 赤坂近くにこんなトコあったんだ。
ー奥までずっと続いてますね。
瀧:でも、なんかいいねこの雰囲気。夜だと更に。いやもう幟に書いてある名前がすごいわ、本当に。ヤクルト本社、高島屋……、錚々たるラインナップ。ここ何かありそうじゃない? 茶道裏千家、帝国ホテル、任天堂、日本テレビ放送網、武田薬品とかに混じって個人の名前もチラホラあるな。なんなんだろうね、ここ。
ー瀧さん、すげえの見つけましたよ!
瀧:なになに? あ! オリエンタルラジオ! すげえ、あっちゃんかっこいい! マジのあっちゃんかっこいいヤツじゃん(笑)
瀧:あれこれ、お神輿用倉庫的な事? どこの町内のやつとか書いてある。八重洲1丁目、京橋2丁目、京橋3丁目、西八丁堀2丁目。結構遠くない?
ー元々、日枝神社の支社が八丁堀の方にあったんですよ。多分もともとあっちにあったのを今はこっちに置いてるんじゃないですかね。
瀧:ああなるほどね。日枝神社、ちゃんと夜入れてくれるのいいな。お百度参りで願掛けする人もきっといるだろうしね。仕事終わりで家にまっすぐ帰りたくないときに寄ったりしたら、気分変えてくれて、小さいことはどうでもいいかってなりそうな気もする。
ーところでさっきののぼり、いくらくらいなんでしょうね。10万ぐらい?
瀧:それか8万とかで縁起いい感じとかね。そうか、こっちから抜けると最後はあの正面の階段のところに出るのか。あ、これ何? さざれ石だって。なになに、えーと。「元は小さな石の意味で、国歌君が代の歌詞によまれ、その名を知られる。学名を石灰質角礫岩といい、岐阜県揖斐郡春日村の山中から発掘される石灰岩が長い年月をかけて雨水に溶解され、それにより生じた粘着力の強い乳状液が小石を結集して大きくなり、一つの大きな岩の塊に変化したものである」それがさざれ石。「巌となりて苔のむすまで」っていう君が代の歌詞の意味を初めて知った。少しずつ集まって固まり、最後は大きなものになって末永く続くんだ、って事なのね。
ーみんな歌うは歌いますけどね。
瀧のマネージャー藤森:僕、学校の方針で君が代歌わなかったから歌詞知らないんですよね。
ー確かに、私学だと歌わないところありますね。
藤森:そう。曲は知ってますけど。
瀧:そらで言えない? ちょっと歌ってみて。
藤森:君が代の〜♪
瀧:もう間違えてる(笑)。早ぇよ! あ、例の階段のトコなんかの工事中だ。遅くまでやってるなあ。知らなかったけど、上からの眺めも結構凄いんだな。これ何の工事だろ?
ー(聞いてくる)下りエスカレーターを新設中だそうです。
瀧:じゃあ、そっちの階段から下降りようか。神社の構えとしてはすげえなこれ。やっぱ迫力あるよ。
ーちょうど23時なので写真撮っておきましょうか。
瀧:そうだね。一番ぽく撮れるとこで撮ろう。
懲りずに再び警戒ゾーンへ!
ーしかし僕、瀧さんが『新幹線大爆破』を昼に観てたっていうのがずっと面白くて。そりゃあ国会周り歩くの怖かっただろうな、って(笑)
瀧:ずっとつけられてるっていう緊張感と、どんどん範囲が狭まってきて追い詰められる感じ(笑)。あの映画の最後も空港とかでその感じあるじゃん。でもかっこいいよねあの映画。モダンだなっていう。
ーちなみに階段降りた、ここからはもう港区です。そっちの方から曲がって千代田区に戻ります?
瀧:じゃあ官公庁街を最後に見て、日比谷公園ゴールぐらいがいいんじゃないかな。何あれBHオークションって? めっちゃかっこいい車あそこにない? 黒いやつ。
ーオークション会社ですかね。
瀧:これ旧車じゃない? ポルシェ? 違うかな。あ、ポルシェって書いてあんね。しかし、ここに噴水があるのも知らなかったな。夏とか酔っ払って入る馬鹿ちょいちょいいそうだな。「またTBSの社員が〜」って。
瀧:行こう、やっぱ水の近くはうっすら寒い。一応、ちゃんと千代田区ゾーンを歩いていこう。
ーここまっすぐ行くとさっきの場所に戻るはずです。
瀧:でもバリケード張って物々しく警戒中だわ。あの細い道を上ってみよう。この左側の施設は何なの?
ーここはもう総理官邸の裏ですね。
瀧:横ちゃん、総理官邸の裏撮って。連行されるとしたら横ちゃんだけにしておこう(笑)。もうさ、めっちゃ緊張するでしょ、写真撮るの。
フォトグラファー横井:します(笑)
瀧:また再度空気がピリッとしてきたね、本当に。いやあ、またあっち行くのなんか身構えちゃうね、本当に。この辺からもうちょっと警戒レベル爆上がりでしょ。ほらもうなんか、警察官待ち構えてない? さっきとは別の人達に遠巻きに囲まれてる。ほら、あっちからも来てるじゃん、正面からも。「なんかまた来てるぞさっきの5人組、赤いキャップを確認」って報告済んでるかも。しかし首相官邸はすげえな、壁が。絶対侵入させないぞ! っていう決意を感じる。脇を通ってるこれは首都高?
ー首都高ですね。
瀧:霞が関の降り口のとこだ、六本木を越えてきてからの。
ー官公庁一覧の地図がありますね。瀧さん、見てみたい省庁あります?
瀧:そう言われうと困るな。でも有名な省庁はやっぱ見てみたくない? 外務省、経産省とか……。ここは?
ーこれ内閣府ですね。
瀧:あ、ここってさっき話しかけられたところか! お巡りさんに。財務省、外務省はどうやら両方見れる、と。後は警視庁、その辺を見てみようかな。
ーそうですね、じゃあそのあたりのルートで行きましょうか。
瀧:やっぱ首相官邸の周辺は急にお巡りさん増えるね。「なんだよあいつら!また戻ってきやがった!」って言われてるかな。「大谷翔平のキャップをかぶったやつめ!」って。でも下手したら、すでに個人特定されてる可能性もあるよね、顔認証とA.I.解析で。もう俺なんてすっかりデータベースに入れられちゃってるだろうからなあ(笑)。
瀧:この建物は合同庁舎か。なんか経産省かなんかでさ、月に300時間残業してたみたいなニュースあったじゃない。全然家に帰ってないみたいな。コロナ禍になってから、厚労省の担当の人はほぼ家に帰っていなくて、ずっと泊まり込みで寝ずに対策やってるっていう。
ーしょうがないですよね、それ。
瀧:だよねぇ。そんだけやっててもそこらへんのテレビばっかり観てる連中に「何もやってないのか」ってあっさり言われちゃうんだよ。でもそんなテレビ観て文句言ってる連中に、対策班に入って一緒にやろうぜっつったら、そいつら半日ももたないだろうね。
ー損な仕事ですよね。
瀧:法律と感情と治安維持みたいなやつが全部ごちゃまぜになってカオスになってる状態から、皆が納得する一番いい抜け道を探せ、みたいな話でしょう。ホント損な仕事だよねえ。ストレス超溜まるだろうな。しかし停まってるなー、空車のタクシーが山ほど停まってるね。
ー「居酒屋タクシー」って問題になったの覚えてます?
瀧:タクシーが役人に「今日もお仕事お疲れ様っした!」ってビール出してくるやつだっけ? あとこの辺のお役人に毎回サービスで缶コーヒーか何か渡してたりして、後にそれは駄目だっていう話になったやつだよね。
ーそうですそうです。多分役人にしてみたら、毎回頼む仲がいい運転手ができてたんだと思うんですよね。
瀧:そうだろうね。「矢吹さんは明日何時ぐらいに終わるの?」
ー「明日は2時かな。」
瀧:「じゃあその時間に待ってますね」みたいなね。役所と癒着はダメ!って問題になったよね。
ーあの道を曲がると財務省と外務省があります。ほんとずっとタクシー並んでますねー。
瀧:深夜とかに役所の分科会みたいなやつが終わると、50人単位でバーっとタクシー配車の依頼が来るんじゃない?
国家の中枢、官公庁エリアを歩く
「中央合同庁舎第4号館」、これが? 国税庁、内閣官房……、めちゃめちゃいろんな省庁入ってんね。復興庁、国税庁、国土交通省、海上保安庁、農林水産省。
ー「合同庁舎」だから、各省庁から担当の人たちがここに集まってるんですね。
瀧:ってことなんだよね。ここら辺りは割と普通な雰囲気だけどさ、やっぱこの道挟んだ反対側(議事堂&総理官邸側)に行くと、一気に緊張感増すんだよな。あっちサイド違うわ〜。『太陽を盗んだ男』は原爆を盗んだんだっけ?
ープルトニウムを盗んで原爆を自分でこさえて国会に置いてく、でしたね。沢田研二が国会に入っていくシーン、ダマで撮影やったらしいんですけど、よくやりましたよね。今夜怖い思いしたから余計にそう思います。
瀧:当時は国会を狙おうなんて奴、もう映画の中だけにしかいなかったんじゃないの? うわ〜、ここめっちゃツツジ咲いてる。しかも北方領土を思いながら。向こうが財務省かな?
ーそうです。それであっちが外務省。
瀧:あっちが外務省か。なるほど、外務省はこの時間でも働いてるっぽいね。どっか暇そうな省庁はないかな?
ー特許庁とかなら今は明かりついてないかもですね。
瀧:どうなんだろうね。さて外務省前だ。「外務省特別警戒実施中 一般来訪者様は入場できません」だってさ。外務省だとちょっとまた、ピリっとし始めたね。かなりの窓に電気ついてる。バリバリ仕事してんね。
瀧:そして外務省前で客待ちしてるのは個人タクシーが多いね。さっきの財務省内閣府の車両は、黒いやつがほとんどだったのに。もしかしたら、省庁ごとに縄張りが出来てるのかもしれないな、タクシー業界で。でもその方が業界にとってはハッピーじゃない?
ータクシーチケット問題もあるかもしれないですね。省庁ごとに出してるタク券の発行元が違ったり。
瀧:あー、あるかもしれない。もう年間契約でさ、どさっと利権渡して、とにかく優先で省庁前で待ってろっていう話かもしれないよ。これはさ、絶対何か決まり事があるよね。
ーちょっと検索して調べてみましょうか。あー、どうも個人タクシー組合が外務省づきになってるみたいですね。
瀧:なるほど。でかい会社のM Kとか、東京無線とか、ああいう組織に対抗するためにみんなで組合作って、組織としてどっかに一個ぶっといパイプ作ろうっていう算段だよね。ところで今まだ電車走ってる時間?
ーはい、まだ23時台ですね。
瀧:まだそんなもんなんだ。今日何か1回疲れちゃったんだろうな、最初の数十分でさ。今になって振り返るとさ、すげぇ空気がピリッとしてたからか不思議と饒舌になったもん。なんか緊張感で。黙って歩いてると怪しまれちゃうからさ、向こう(警察)にね。怪しまれないように何でもないことでもいいから何か喋らなきゃいけない、っていう使命感と素朴さのアピールで。お、外務省の看板あった。この張られているチェーンから向こうは、普段ならちょっとはふざけて行ってみたりするけど、今は怖くてとてもじゃないけど行けない(笑)
ーさらに検索したら、省庁の仕事は入札制みたいです。外務省の担当は個人タクシー組合が入札で取ったってことじゃないですかね。
瀧:タクシー組合が独占の権利を落札したってことなのか。売店とかもそうなのかな、多分そうだよね、セブンイレブンとかも。
ーファミマが入ってるとこもありましたよね。
瀧:なるべく一つの業者に集中しないようにしてるんだろうね。「公平に」って観点で。
瀧、裁判所に凱旋!
この建物なんかすごい新しいじゃん、何これ?
ー裁判所です。
瀧:裁判所か〜! 俺来た事あるわ、ここ(笑)
ーもうすぐ行くと、最終目的地の日比谷公園ですね。裁判所写真撮っときます?
瀧:記念に撮っておこうか。当時は裁判所の前で報道陣に写真を絶対撮られないように細心の注意を払ってたんだけどね(笑)
瀧:このエリアから最寄りの駅が変わるのか。「霞ヶ関」駅だもんね。あれ? なんかさ、こっちから見ると、またあっちに違う種類のタクシーの車列が見えるよね。あれは提灯が緑だから何だろうな、東京無線かな。こっち側の列は白なんだけど。このタクシーが種類別にズラリ並んでる感じさ、夜じゃないとわからないかもね。車両の色の違いも含めてさ。昼だとこんなにたくさんは停まってないだろうしね。
ー確かにそうですね。
瀧:なんか書いてある。「当庁舎の柵や壁に横断幕や立て看板を取り付けたり、立てかけることを禁止します。東京高等裁判所事務局管理課」。裁判所第二南門か。あ、貼ってあるよ。掲示板に裁判のやつ。近々こんなの行われるよってやつでしょ。本日の裁判メニューじゃない?うわうわ、結構あるなあ。検察審査会、知的財産高裁、地裁民事。これ、公示だよね。こっち側にもビッシリ貼ってあるこの感じすごくない?
ー大学の掲示板を思い出しますね。
瀧:大学の掲示板ってこんな感じなんだ、でもこれほどの量じゃないでしょ?
ーいや、こんなもんですよ。
瀧:そうなんだ。これとかは係争中の対象の人に伝えるためのやつか。この日に出頭せよっていうような。「原告 ◯◯◯◯株式会社 被告は合同会社△△△△原告から訴状が提出されました。当裁判所に出頭する期日が下記の通り定められましたので、同期日に出頭してください。なお訴状を送達しますので、下記答弁書提出期限までに答弁書を提出してください」、期日○月△日の午前10時25分に裁判所までやってこい、だってさ。民事の案件だから、「土地とか物件とかを占拠しちゃってて出ていかない」とかなのかな? あとは「立ち退きは無効だ!」とかかも。なんか不動産業者とかが対象のやつ多いね。あ、個人対象のもあった。へえ、「共用部分移転登記手続請求事件」で出頭せよ、か。共同で使ってた生活道路とかの登記で揉めてる感じなのかな。事件扱いになっちゃうんだな。あと、どうやら刑事事件のやつを貼ってる様子はないな。
ー外国人の名前もいっぱいありますね。
瀧:建物明け渡し。おそらく居座りだね。出て行かずに居座ってる、もしくは部屋からいつの間にかいなくなっちゃってるとか。家賃も払わずに。
ーこれ家賃を踏み倒してるとかも多分こうなるんですよね。
瀧:ということじゃないの? ここに掲示されているのは民事だけっぽいな。
ゴールの日比谷公園到着
瀧:もう24時過ぎた?
ーまだ過ぎてないんですよ。
瀧:そうなんだ。今日長ぇな。
ー我々が、いかに最初の30分でめっちゃ疲れたかってことですよ(笑)
瀧:確かにあまり経験しないすげえ濃厚な30分だったような気がする。やっぱね、千代田区の千代田区たる所以ってそういうところにあるんだろうと思うな。ほのぼのしてる感じが一切なかった。ここ、野音(日比谷野外音楽堂)のすぐ向こう側の風景なんだもんね。個人タクシーがあんなに揃ってる瞬間なんて普段なかなか見なくない?
ーさて、日比谷公園に着きました。とりあえずひと段落ですかね。
瀧:しかしとにかく独特だったな。「こんな緊張するエリアって他にある?」っていう。何だろう? 小泉総理とかあのぐらいの頃までは、そこまでピリピリしてなかったような気もするっていうか。なんかもうちょっとだけ俺たち寄りじゃなかった?
ー今の時期(コロナ禍)っていうのもあるでしょうけどね。
瀧:そうね。ちょっと有事入ってるもんね、今は。まあようやく緊張が解けてきたよ。
ー野音での思い出って、瀧さん何かありますか?
瀧:野音? 出たこともあるしね。最近だと8.6秒バズーカのコスプレでスチャのヤツ(イベント)に出てはしゃいだりもしたし。電気でも野音でLIVEやった時に「電気ビリビリ」のイントロが流れた瞬間に、偶然夜空に稲光りが走ったっていう出来事はあったな。本物の稲妻がビカビカビカ!ってさ。それ見たお客さんがみんな「すげえっ!特効⁈」って驚いたっていう(笑)
ーボチボチ締めに入りますか。皆さん車、どこに停めてますか?
フォトグラファー横ちゃん:僕赤坂の方に停めましたね。
瀧:じゃあさ、最後赤坂の方に行ってみる? そうだ! 電車で行けない? まだ地下鉄走ってるなら、ちょっとそれで行ってみようか。
ー良いですね、まだ地下鉄やってるんで、それで行きましょうか。
瀧:「23区23時」で電車乗るなんて(笑)。ところでまだあるの? 電車。確かコロナで早まったんだよね、終電が。
ーまだ走ってますね。じゃあ霞ヶ関駅から丸の内線に乗って赤坂見附に行って終わりましょう。
瀧:うん、そうしよう。
ー瀧さん、在来線て乗ります?
瀧:在来線? 全然乗らないね。こないだ甲子園に野球観に行ったときに、新大阪から大阪駅行って大阪駅から阪神電車かな? とかで甲子園まで在来線乗ったけど。そのときに在来線に乗ったの超久しぶり、って話をした。電車の中って今こうなってるんだっつって新鮮だったよ。あの、俺、Suicaのアプリはあるんだけど、これをピッとやっていいんだよね?
ーあ、そのレベルで乗ってないんですね。
瀧:そう。もう本当に乗ってない。(ピッ)これが今の霞が関の駅か。もうちょいホームの奥まで行こうか。近辺の地図がある。
瀧:今夜歩いたのって、このぐらいのエリアだったんだね。ここの通りがめっちゃ怖かった。ピークここじゃない? 首相官邸。怖いなあ、首相官邸怖かった。あ、今こんなのあるんだ、行き先表示のLEDモニターみたいなヤツ。
ー結構前からありますよ。
瀧:そうなんだ。この時間になるとそんなにみんな霞が関からは乗らないね。
ー朝なんかは、電車は普通に混んでますけどね。
瀧:ここで降りる人(最終目的地)いるかな。
ー乗り換えとかで降りる人はいるかもしれないですけど、流石にこの時間だといないんじゃないですかね。
瀧:ああ、乗り換えか。電車来た、すいてる。うわ、かっこいい。今の電車かっこいいね。そして車内吊りの広告ってまだあんだね。これ全部モニターになってるんだと思ってた。まだこんな感じなんだ。
ー今、国会議事堂前駅だったので、次が赤坂見附駅ですね。
瀧:あれ充電していいの? モバイル充電コネクタ。
ーあんなのあるのは知らなかったです。
瀧:着いた? 降りよう。車両の外観のデザインちょっと昔風の、クラシックな感じなんだね。何もかもが新鮮なんだけど(笑)。ホームのベンチもこの感じなんだ、今。
ー東京の在来線、乗るの何年ぶりですか?
瀧:世田谷線を除いたら……5年ぶりぐらいかな。その5年前乗ったのも、田園都市線が乗り入れてる半蔵門線でどこまで乗ったっけな? 浅草とかあっちの方まで1回行ったぐらいかもしれない。
ー駅を出ちゃうともう港区になっちゃうので、ここで一度締めましょうか。瀧さん、千代田区とは。
瀧:監視カメラの街なんだよな、本当に。ずっと見られてたっていう。日枝神社とかでもカメラあったから。あと、見かけた人がおじさんばっかりだったんだよね。警察官もみんなおじさんに見えるっていう、若い人でさえも。だから「監視カメラとおじさんの町」だよね。
総歩数 10129歩
聞き手・構成/カルロス矢吹
写真/横井明彦
タイトル画/天久聖一
地図デザイン/日高慶太(monostore)
編集/松本貴子(産業編集センター)
協力/藤森大河(株式会社macht)
編集注:コロナ期間中はマスクを着用。撮影の時だけ周りに人がいないことを確認しながらマスクをとることがあります。
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