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#今月の本屋さん 走る本屋さん 高久書店(静岡県掛川市)


今回訪れたのは大河ドラマ「どうする家康」で盛り上がっている静岡県・掛川市にある書店「走る本屋さん 高久書店」さんです。東京駅から新幹線「こだま」に乗って1時間半で着く掛川駅。そこから6分ほど歩いたところにあります。

新幹線から降りて見えたJR掛川駅は、木造のかわいい駅舎です。戦前からの建築を今も守り続けているのだそうです。掛川市の歴史保存への想いを感じます。

高久書店に向かって歩いていくと、江戸時代から続いていそうな、趣のある建物がありました。看板に「清水銀行」とあります。壁には馬に乗る侍と女性のレリーフがあり、これは掛川城の城主であった山之内一豊とその妻だそうです。本当に銀行なのかしらと思ったら、「両替」と書いてあったところにATMもありました。

目的の高久書店さんが見えてきました。鮮やかな青い外観が目印です。看板にある、走る車の絵がかわいい。窓には本の紹介や図書カードなどの情報がびっしり貼られています。「本は生涯の友達です」というパネルが素敵です。

戸を開けると左手には文庫・文芸の棚、右手には学参(学習参考書)の棚、奥にはレジが見えます。店内ではビートルズが流れていました。

お店は10坪ほどの広さなのですが、児童書もしっかり置かれています。親子で訪れやすい本屋さんですね。

店長の高木久直さんにご挨拶。もともとは教職を経て、戸田書店さんなどで書店員をされていましたが、2016年にワゴン車による移動新刊書店「走る本屋さん 高久書店」を立ち上げました。車に本を積み込んで、無書店地域へと本を販売しに行く。「生涯の友達となる本」に出会える本屋さんが街に一店もないなんて……との想いで、街に読者を育てる活動をされていらっしゃいます。そして掛川駅の周辺に本屋がなくなったことをきっかけに、2019年から実店舗を構えるようになりました。掛川は「都会すぎず、田舎すぎず、きどらずに新しいことを始めるのによい土地」とのことで、若い人が徐々に戻ってきているのだそうです。

2Fにもイベントスペースがあると伺い、お店の奥を覗いてみると、駄菓子が売られていました。

2Fは屋根裏部屋になっていいます。子どもたちが書き残していったメッセージが展示されていました。ここは子どもたちにとっての隠れ家であり、心が疲れた時の避難場所でもあるのかもしれません。

1Fに戻りました。左手は充実した実用書の棚、右手は人文・教養とビジネスの棚。本の雑誌社の棚もあります。

その奥にはびっしり揃えられた学参の棚。学生さんにとって、頼りになる街の本屋さんですね。

学参の上のほうに「高校生が選ぶ掛川文学賞」という棚がありました。素晴らしい企画!掛川市のWebサイトには「『文芸のまち掛川』を実現するために高校生、公立図書館、学校図書館が連携・協働し、子ども読書活動推進の啓発を行う事業」とあります。話題作の『成瀬は天下を取りにいく』など、若者を意識した表紙が並ぶなか、見事大賞となった作品は……なんと青春ならぬ老春小説の『おかげで、死ぬのが楽しみになった』(著作:遠未真幸 発行:サンマーク出版)。白熱の選考の様子を静岡県立掛川東高等学校のWebサイトにてご覧になれます。

面白すぎる結果に、思わずこの本を購入。オリジナルブックカバーも巻いていただきました。

知らない本がたくさんで、ワクワクするレジ前の棚。

レジ前の棚には『レイリ』(原作:岩明 均 漫画:室井大資 発行:秋田書店)という漫画が全巻揃って置かれていました。岩明さんといえば『寄生獣』や『ヒストリエ』などで著名な漫画家さんですが、私はこの作品を初めて知りました。なぜレジ前に全巻置いてあるのか高久さんに伺ってみたところ、これは掛川にある高天神城を舞台とし、その城を徳川家康からの猛攻から守るために戦った武田家の名将・岡部元信を描いた、おそらく唯一の漫画だから、とのこと。渋い! 戦国時代好きの方はこれだけで食指が動く漫画ですよね。ということでこれも最初の2巻を購入。やはり大変面白い漫画でした。

お店を出ると、目の前に掛川城の天守閣が見えました。

なお、掛川の魅力は歴史だけではありません。たまたまその場にいたお客様が「聖地巡礼で訪れた」というので、掛川はなんの聖地なのか伺ったところ、なんとTRPGの聖地なのだとか! 「掛川TRPG先進都市化計画」というプロジェクトがあり、企業やシナリオ作家、プレイヤーなどが連携してTRPGとリアルの街を組み合わせた新しい遊び方を生み出しているようです。掘れば掘るほど面白い、掛川市!

高久書店公式サイト
高久書店X(旧Twitter)

(文・写真:PIE三芳寛要 撮影日:2023/11/12)

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