見出し画像

活かせるか

自由民主党総裁選挙

現在、日本のメディアでは自民党の総裁選挙の報道が毎日話題に上っている。現時点では告示前だが、自民党の総裁を決める選挙ということは、自動的にこの国の総理大臣を決めることなので、告示前であろうが大いに注目を集めている。岸田総理が不出馬を表明してから一ヶ月程度しか経っていない状況では、この選挙はお祭り騒ぎとまではいかないにしても、非常に大きな政治的イベントと言えるだろう。しかし残念なことに、この選挙では自民党の党員や議員など限られた一部の人々しか投票権はなく、一般の国民はその行方を見ているだけだ。とはいえ現時点では衆議院の解散や任期満了があるわけではないので、これは仕方ないことだろう。メディアは報道する必要もあるだろうし、有権者、というか国民はこの選挙の行方を見守る必要もある。

それは総理大臣になることを見据え立候補している人たちのこれからの政策内容を聞き、知ることだけでも十分に意味があるということで、まずは候補者の政策内容を知れば次期政権の向かう方向をが見えるということだ。そして候補者という政治家そのものの資質を見極められる可能性がある。これは一方的な報道に惑わされないということも含み、情報リテラシーの強化にもつながる。そしてそれらは今後の国や社会のゆくえや、次の選挙へ向けて知識を蓄えることになるだけではなく、選挙活動や選挙そのものへの関心につながり、もっと自分たちの国のゆくえについて考えることが重要だと思えるようになるかもしれない。

社会保障の中の医療費負担

そう思い今回の候補者が語っていることに耳を傾けてみて、どれだけ重要なことに言及しているのだろうかと考えてみると、思ったよりも重要なことには言及していないと思われる。重要なことはいくらかあるだろうが、エネルギー問題や税制の問題、あるいは防衛もあるのかもしれない。そして、もちろんそれらだけではなく様々な問題もあるだろう。私が思う現時点での重要なことのひとつには、日本国にとって喫緊の課題ともいえる社会保障の問題があると思う。社会保障といってもさまざまあるが、最大の年金も近く手を付けなくてはいけなくなるだろうし、できることをやると考えれば、速やかに高齢者医療費の三割負担をということがあるだろう。

今回、現時点でそれぞれの候補の言葉を聞けば、社会保障に関しての言及が無いに等しいと状況だと思う。現時点では河野太郎氏が高齢者医療費の負担増加について言及しているだけだ。医療費の問題は年金に次ぐ社会保障の大きな問題で、国の破綻に向かっているとも思えてしまう。その多くを占めるのは高齢者医療の負担だ。ここにも書いたことはあるが、私の母は病院は嫌いで行こうとはしない。だが、重大な病気のある私が、それでもCOVID-19以降、診察は年に数回と減ったが、病院に行くと年配の人だらけだ。それは総合病院なので重篤な疾患があるのかもしれない、しかし、街の小さいクリニックに毎日朝から大量の車が入ってゆく姿を見るのは異様だ。

その高齢者医療の問題は、医療費が一割負担になったのを境に医療費は増大するという統計データが存在し、後期高齢者になった年代から医療費のグラフは急激に上昇し、その角度も増すのだ。一方で死亡率は年齢に沿って変わらず、グラフも同じ角度で増えてゆく。そう考えるとすべてとは言わないまでも、それら医療費は本当に必要なものなのかという問題や、高齢者の資産が最大ならば、三割負担は現実的だともいえる。もちろんそういうものは個人差があるので、重大な問題があれば個々にセーフティーネットを設ける必要がある。問題は制度設計で、それが実現できるかどうかは非常に重要で、迅速に対応しなければ国そのものが困難な状況に陥るかもしれない。

決断

ただ、それら重要なことを考えてみても、今回の話題にの中にある夫婦別姓問題や原発の再稼働や新造、補助金漬けの政策、そのようなものはすぐに実行できるはずだ。何十年も議論を積み重ね続けるだけでは意味がない。夫婦別姓などすぐに導入すればいい。反対する意味が不明だ。それはどうみてもお気持ちの表明で、それを政策として語る意味はあるのか。選択の問題であるので別姓を選ばない人もいるだろうし、選ばない人の方が多いとも考えられる。そんな改革すらできないでいる現状なのだ。これは政治に対して失望が広がってもおかしくないことではないだろうか。

また、主電源となりえない太陽光発電の賦課金の廃止や、原発の再稼働やSMR(小型モジュール炉)など研究開発と新造は、国の基盤を固めるうえで必要ではないだろうか。しかし、これまでもそれらは一つとして実現できていない。TSMCが進出した九州では原発も再稼働していて、電力は安く安定供給している。しかし国を挙げて取り組んでいる北海道のラピダスでは電力の見通しは暗い。いくら広大な北海道に太陽光パネルを敷き詰めてもメインの電源とはなりえないからだ。それ以外にもラピダスには問題があり、成功する確率は低い。そういうプロジェクトに国が莫大な補助金を投入するのは疑問だ。産業を育成したいのなら、障壁を取り払い、自由に競争させるしかない。

現在の岸田総理大臣の評価が低いとは思わないが、ガソリンや電気料金の補助金を見ると、タコが自分の足を食べるように税金を使った補助は根本的な解決にはほど遠く、思考を疑うような事柄もある。そして理由がある増税ならば必要だが、それならば理由のある社会保障を減らすことを検討する必要もあるだろう。外交など様々な部分で評価もあるとは思うが、この国をどうしたいのかはよく分からなかった。かつて風見鶏と呼ばれた総理大臣がいたが、そうも思えない、現状では思いつきで行動しているように見えてしまう。今回のの選挙で選ばれる総理大臣には明確な決断を求めたい。それはいつもそうだろうが、やるべきことを実行し、十分に議論された問題に対してはもう議論を重ねる必要はない。

活かせるか

  最初に触れた今回の一部の国民しか参加できない選挙を盛んに報道する意味について、"選挙そのものへの関心"と書いた。しかしそれには続けて書いたように、"もっと自分たちの国のゆくえについて考えること"が必要で、ただ関心を持つだけでは困るとも思った。それは東京都知事選が盛んに報道されていた初夏のころだ。何も考えず投票する人もいるんだろうなという印象を受けた。私が政治について特に考えている人というわけではない。報道や議論には危うい部分もあり、選挙というシステムに対して自分自身が考えるべきだなと思った。ただ選挙で投票率が増えてほしいと思っていたし、現在でも増えてほしいと思っている。だが、そこには投票行動の意味を持ってほしいと思うのだ。もし解散があるとすると、選挙になる。その時は現在の状況、今回や今までの選挙の記憶による思考が活かされるはずだ。いや、活かされてほしいし活かせたいし活かしたい。そう思った。



いいなと思ったら応援しよう!