洗い立てのデニムから浮腫んだ足首と愉快な爪先。淀んだ朝、雨上がりの夕暮れ、頬への口付け、滲んだ睫毛。
わたしは歩く。あなたに見送られた場所から、あたたかいバスタブから、2日目のスープの鍋から、さみしい轍から離れてゆく。
通りは明るい。信号機は暖かな色をして、横断歩道を照らす。夜のガソリンスタンド、瓶の中にはやさしさ、私を愛撫するのは蛾のいるショットバー、湿気たパーラメント・ライト。でもそれらは、私を歓迎しない。酷いにおいのするペトリコール、点かなかったかなしいマッチ、まとわりつく煙、空を見つめる鳩、肩に触れる髪は冷たい。これはとある日のご機嫌なワンピース、脱げば水色。だからわたしはそのファスナーを下ろさず、溶けたマスカラを拭わない。