青春時代 第6話

さて翌日、部活動のみんなに新しいヒロインをさも自慢げに、興奮気味に紹介する俺。

初心者なので色々教えてあげて下さいと言うと、女子部員のNさんがやけに親しげに話している。

どうやら同じクラスだったらしい。

だったら最初から言ってくれれば、スーパージャパニーズドゲザで頑張らなくても一緒に頼めば良かったじゃん!と思ったけど、今となっては結果オーライ。

気にしない、気にしない。

だって憧れの彼女と一緒に居られるんだもん!

と言うわけで、早速練習を始めた。

もちろん俺は常に彼女の隣をキープ。
(やりすぎるとアレなので断腸の想いで時々外す)

演劇って結構体力勝負。

柔軟運動とかも欠かさずやります。

となると、二人ペアでやる運動は、もちろん彼女の前へ滑り込むようにしてペアチケットをもぎ取る訳です。

手なんて繋いだ事ないからドキドキするかと思ったら、案外そうでもなかった。

やっぱり繋ぐ時の気持ちって大切なのねって学んだ瞬間でした。

でも彼女と密着して柔軟運動出来るのは素直に嬉しい。

ドキドキはしないけど親密感が湧いて、距離が縮まる感覚が嬉しいのかな。(本当に縮まってればいいんだけど)

そんな中、柔軟運動中に、ふとした事で彼女の胸の谷間からブラがチラリと見えてしまった。

流石に童貞の俺には好きな子のそんな部分はちょっと刺激が。

慌てて目をそらすも、その不自然な様子が彼女に伝わり、気が付かれてしまった。

「あ、ご、ごめん」

「……うん、わざとじゃないし別にいいよ」

「あ、ありがとう」

そんなこんなで、彼女もだんだんと打ち解けてきて、練習にも熱が入ってきた。

彼女の飲み込みは早く、あっという間に、舞台で稽古出来るようになってきた。

これなら文化祭の公演まで間に合いそう。

でも実はまだみんな、舞台でも、台本読みでも、一度も歌った事がないのであった。

そこで、そろそろ舞台で全曲歌ってみる歌の発表会を行う事にした。

ヒロインの彼女が舞台の袖で心配そうに「どうしよう、どうしよう」って言ってたので、「大丈夫、俺もまだ一度も歌ってないし、これから練習すればいいから」と言ってみた。

舞台監督のIさんからご指名で、1番バッターはピコくんー、だそうだ。

いきなり俺かよ。

自分で作曲した曲が流れてきた。

それに合わせて、大きな声で歌う。

演劇の場合、ただでさえ、腹から大きな声を出さなくてはならないのに、音楽が流れていると、それよりももっと大きな声を出さなければならない。

マイクなんて当時は使えないからこればっかりは頑張るしかない。

振り絞って精一杯の大声で歌ってみた。

ちなみに人前で歌ったのはこれが初めて。

当時はカラオケなんてなかったので。
(ジェネレーションギャップ)

「おお?!ピコ君、上手いジャーン」
「イケてる、イケてる」

舞台監督のIさんも一発OK。

つぎは、ヒロインの彼女が選ばれた。

俺は舞台袖で「頑張って!」と声をかけた。

彼女も堂々とした態度で舞台に立ち、曲が流れると大きな声で歌いだした。

おおお、上手いじゃん!!
これなら大丈夫、大丈夫!!

歌い終わると、恥ずかしそうに小走りで舞台袖にやってきた。

「私ね?歌う時、大きな声を出さないと上手く歌えないの」

と照れ気味に言い訳してきた。

か、可愛いっ!!!

そんな君が好きです。なんて到底言えませんが。

その後も次々と発表が続いたが、それほど難航せずに終わった。

キーが合わなそうな人は、後で調整。歌いにくそうだったところは編曲して調整すれば問題なし。

こうしてようやく通し稽古(最初から最後まで、ノンストップで行う稽古)が出来るようになり、文化祭での発表を待つだけとなった。

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