青春時代 第1話
俺が高校1年の時。
元々絵を描く事が好きだった俺は、美術部で油絵を黙々と描いていた。
そんなある日、美術部の女の先輩が声をかけてきた。
「ピコくんってコンピュータやってたりして、機械いじるのが得意なんだって聞いたけど本当?」
「ええ、そうですねー。得意な方っすよ。なんかあったんですか?」
「演劇部で、照明を担当してくれる人を探してるんだけどできそう?」
「うーん、見てみないと分かんないっすけど、まあイケると思いますよ」
「やった!じゃあお願いしていい?」
「オーケーっす」
頼まれると断れない性格な俺だが、特に断る理由も無いので軽い気持ちで引き受けた。
そして後日、演劇部の部室に案内され照明器具を見せてもらった。
操作も簡単だし、楽勝だったので正式に引き受ける事にした。
演劇部の部員の方々とも挨拶して、台本を渡され、どこでどのように照明を操作するか教えてもらって台本に書き込んでいった。
実際にリハーサルも行い、あまりにも楽勝だったので、鼻をほじりながら完璧に本番もこなしてやった。俺様にかかればこんなのヨユーだぜ。
そして本番も無事終わり、全員が部室に集まって打ち上げをやっていた。
お祭り騒ぎが好きじゃない俺が、もうそろそろ帰ろうかと思って立ち上がった瞬間、部長が目の前にサッと一冊のノートを突き出してきた。
「え?なんすか?これ?」
「やだー。つぎの台本に決まってるじゃないー」
また照明をやるのかと思い、受け取ってペラペラとめくると、なぜだかセリフの上に俺の名前が書いてある。
「アレ?つぎも照明っすよね?アレ?」
「ちゃんと自分のセリフは覚えておいてね!そんなに多くしてないから楽勝よ?」
こうして、諸葛亮孔明の罠にはめられた俺は、舞台に立つ事になった。
俺は、昔からコミュ障。人前で、ましてや大人数の前で話をするなんて大の苦手。絶対にやらない、やりたくないと避けてきた。子供の時から、宴会の席で「お小遣いあげるから何かやってごらん」と言われても速攻逃げ出すタイプ。
舞台に立つなんて1番やりたく無い事なはずだった。