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一語の宇宙 | have (持っている)

 「have」。「持っている」という意味。haveという単語は、英語を学びはじめて最初の頃に学ぶ動詞のひとつであり、英語を母語としない日本人でさえ、知らないという人はほとんどいないだろう。

 しかし、基本語であるがゆえに、その使い方は多様である。今になって思えば、英語の動詞なんて「be動詞」と「have動詞」を完璧に習熟すれば、他の動詞はなくてもいい!、と言っても過言ではない(過言だろうけどね😊)。

 辞書で「have」を調べれば、たくさん意味や使い方が載っているが、「have」のコアの意味は「持っている」である。

 このエッセイでは、多様なhaveの使い方をすべて、「持っている」というコアの意味だけで解釈してみようと思う

「もっている女」に
なりたいわ💓


(1) have の一般動詞としての使い方


 まず、have のふつうの動詞(一般動詞)としての使い方から。
 「持っている」「飼っている」というふつうの意味の用例を挙げてみます。

I have a cat. (私はネコを飼っている)
He has a pen. (彼はペンを持っている)

 一般動詞の「have」は、「持っている」「飼っている」という意味ですが、必ずしも「今、手元に持っている」必要はありません。大袈裟な言い方をすれば「所有権がある」というニュアンスです。
 自分が使おうとすれば、今使えるという状態にある「モノ」や「コト」が、私の脳裏にある。それがhaveの「持っている」というニュアンスです。


(2) 「have to (do)」「has to (do)」という使い方


 「have to 動詞の原形」(主語が3人称のときは「has to 動詞の原形」)は、日本語では「~しなければならない」と訳される。

 中学生のとき、「have to」「has to」は「~しなければならない」という意味で、それぞれ「ハフ トゥー」「ハス トゥー」と読みます、と教わった。

 だから、「have to」「has to」が1つのまとまりで、そのあとに「動詞の原形」が来るのだと考えがちなのだが、「have + 不定詞」(has + 不定詞)と考えることも出来る。

 「have to 動詞の原形」を「『have』+ 不定詞(to 不定詞)」として、考えてみよう。

He has to do a lot of homework. 
(彼はたくさんの宿題をやらなければならない)

 この文を次のように考えることも出来る。

He has (to do a lot of homework.)

彼は「to do a lot of homework」(これから宿題をする)を持っている

 「to + 動詞の原形」は「不定詞」(あるいは 原形不定詞と区別して「to 不定詞」とも呼ばれる)と呼ばれるが、「これから~する」というニュアンスがある。


不定詞(to 不定詞)のニュアンスについてはこちら(↓)


 つまり、「have to (do)」とは、
『これから~する』状態を(今)持っている」という意味だと言えそうである。

 ここで、「~しなければならない」という日本語に対応する英語として「must」と比較してみよう。

 一般に、「must」は「have to (do)」よりも「~しなければならない」という度合いが強いとされる。
 「have to (do)」は過去形になれば、「had to (do)」となる。それは「have to (do)」の「have」に一般動詞としてのhaveの「持っている」というコアの意味が生きているからだ、と考えられる。
 
 それに対して「must」は「『今すぐ』『絶対に』しなければならない」というニュアンスであるために、「must」には過去形がない。「have to (do)」にはない切迫感がある言葉。それが「must」なのだろう。


(3) 完了形「have + 過去分詞」におけるhaveについて


 完了形は、「have + 過去分詞」という形をとる。
 「have」のテンス(時制)が現在ならば「現在完了形」といい、テンスが過去ならば「過去完了形」という。

 それゆえに、「現在完了形」は、「現在形なのか、それとも過去形なのか?」と問われれば、「現在形である」と言える。
 「単純形」「完了形」「進行形」という区別は、「時制」ではなく、「アスペクト」の違いである。


 完了形は、haveという動詞(助動詞と呼ぶ人もいる)と「過去分詞」から成り立つ。
 過去分詞は、テンス的には過去でも現在でもなく、テンス的に中立ではある。しかし、「過去分詞」は、「過去形から分かれて出来た言葉」なので、ニュアンス的には「過去形」の意味を帯びる*。

(*受け身の意味を帯びることもある。)

 完了形には、大きく分けて、「~してしまった」という「完了用法」、「~したことがある」という「経験用法」、「ずっと~している」という「継続用法」があると説明されることが多い。
 しかしながら、ここでも、「have」の「持っている」という「コアの意味」が生きている。


I have lived in America for ten years.
(私は10年間、アメリカに住んでいる)
この文は現在完了形の「継続用法」だが、次のようにも解釈できる。

I have (lived in America for ten years).
私は「『アメリカに10年住んだ』(という状態)を現在持っている」となる。


I have visited Kyoto twice. 
(私は京都に二度行ったことがある)
この文は「経験用法」だが、
I have (visited Kyoto twice). と解釈すれば、
私は「『二度京都に行った(という経験)』を持っている」となる。


I have just finished my homework. 
(私はちょうど宿題を終えたところだ)
この文は「完了用法」だが、
I have (just finished my homework). と解釈すれば、
私は「『ちょうど宿題を終えた』(という状況)を持っている」となる。


(4) 使役動詞としての「have」


 「~させる」という意味で用いられるhaveは「使役動詞」と呼ばれるが、ここでも「have」の「持っている」というコアの意味が生きている。

I had him repair my watch. 
(私は彼に私の時計を修理してもらった)

この文も次のように解釈できる。
I had (him repair my watch). と読めば、
「私は『him』(彼)が『repair my watch』する状況を持った」


いま挙げた意味内容とほぼ同じだが、haveの直後に「my watch」を置けば、
I had my watch repaired by him.となる。

これも先ほど同様に
I had (my watch repaired by him).を
少し書き換えれば、
I had [My watch was repaired by him]、
つまり、
「私は『私の時計が彼に修理される』という状況を持った」(ここでは過去分詞「repaired」は受け身の意味を帯びる)と考えられる。


結びにかえて


 この記事では、「have」について、その「コアの意味」である「~を持っている」という意味で、英文法を考えたみた。

 ここに書いたことは、「共時言語学」的なアプローチであって、「通時言語学」的なアプローチではない。


通時言語学・共時言語学についてはこちら(↓)


 もしかしたら、通時言語学的な説明をすれば、もっと違った説明の仕方はきっとあることだろう。
 
 しかしながら、「同じ形のものは共通した意味がある」(あるいは「異なる形のものは(どんなに似ていても)異なる意味がある」)という考え方は、(共時言語学的なアプローチのもとでは)汎用性が高いと思われる。

 この考え方は、単語レベルだけでなく、接頭辞や接尾辞にも応用できる。
 言い換えれば、「似たつづりの単語には似た意味が含まれている」「異なるつづりの単語には(どんなに似た意味を持っていようと)異なるニュアンスがある」ということにほかならない。

 英語だけでなく、ドイツ語その他、ヨーロッパ系の外国語を学ぶ際にも、役に立つことだろう。

💓持ってる女に
なりたいわ💓

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記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします