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ローマ字表記の問題点
(1)世界の文字の種類
現代語で使われている文字は、全世界で28種類あると言われている。
世界中の言語の数が、(数えかたにもよるが)6000~7000あることを考えると、文字の種類は圧倒的に少ない。
30にも満たない「文字」のうち、日本語では「ひらがな」「カタカナ」「漢字」(時には『ラテン文字』[英語のアルファベット])という3種類の文字が使用されている。これは他の言語においては、例にないことだ。
われわれ日本人なら、外来語ならば即座に「カタカナ」を用いることができるが、外国人にはかなりハードルが高いだろう。
ロシア語やモンゴル語などで使われている「キリル文字」は、さほど文字数は多くないが、はじめて学ぶ時には、かなり心理的な抵抗感があるかもしれない。
日本語を読めるようになることは、外国人にとっては、相当難しく感じるだろう。
(2)ローマ字の種類
外国人が日本語を学んだり、観光したりするときには、「ローマ字」が欠かせない。
「ローマ字」には、大きく分けると二種類ある。
1937年の内閣訓令に由来する「訓令式」と、幕末に来日したヘボンによる「ヘボン式」。
「訓令式」では、タ行は
「ta ti tu te to 」だが、
「ヘボン式」では、
「ta chi tsu te to」となる。
(3) 本質的な問題点
「訓令式」でも「ヘボン式」でも、表せることのできる音は基本的に同じである。だから、どちらがより優れているか?、ということは本質的な問題ではない。
問題なのは、外来語由来の音に対するローマ字がないことである。
例えば、「チェ」「ディ」「ツァ」のようなもの。
また、もうひとつ大きな問題は、いわゆる「伸ばす音」が十分に分かりやすいとは言えないこと。
一応ヘボン式には、伸ばす音の母音の上に「バー」を付けて区別しているが、英語その他の話者には理解が難しいらしい。
例えば「SOSHIKI」と書けば、
「組織」なのか「葬式」なのか判然としない。
(4) 正書法がない日本
正書法とは、文字の如く「正しい書き方、表記の方法」のことである。日本語では、とくに定められていない。
そもそも論として、「日本」は「にっぽん」なのか「にほん」なのかさえ、統一されていない。
ちなみにドイツ語には(改善したか否かは別として)、「正書法」がある。
今回の記事とは直接関係はないが、ドイツ語に特有の「ß」(エスツェット)が用いられる単語が大幅に減った。英語のキーボードにはないときもあるので、「ß」の代わりに「ss」を用いる単語が増えた。
「daß」から「dass」のように。
グローバル・スタンダードに合わせたと言えよう。
法律で規制する必要はないかもしれないが、少なくとも「公文書」や「新聞」や「教科書」では、従うべきルールを定めてもいいのではないだろうか?
また、パスポートの表記も、訪れる外国人の母語の音になるべく近い音を表現できるような「ローマ字」が必要なのではないかと思う。
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