連載小説⑱漂着ちゃん
「会えて良かった。あなたと結ばれて幸せでした。ナオミとあなたが結ばれることは、私の望みでもありました。もう思い残すことは、なにもありません。あなたをこんなに近くに感じられたことを嬉しく思います。一生の思い出になりました。では、どうかずっとずっとお元気で。ありがとうございました。さようなら」
私はエヴァとの逢瀬のあと、ナオミのもとへ戻った。これで本当に良かったのだろうか?
しかし、もう二度と会うことがないだろうと思っていたエヴァと再会することができて、愛し合うこともできた。こんなに燃え上がるような気持ちになったのは初めてだった。だが、私にはナオミとヨブがいる。私はこの二人のことを守るために生きているのだと、自分に言い聞かせた。
エヴァと再会してから10ヶ月後、再び所長から、書簡が届いた。
拝啓
お久しぶりです。単刀直入にお話します。
大変なことになりました。この度、あなたとエヴァとの間に、女児が誕生しました。名前はマリアと名付けられました。
あなたとエヴァの愛は、大きな障害物をものともしなかったようです。
エヴァは子どもが産めない体と思われていたのですが、不思議なものです。愛の力なのでしょうね。
この件に関して、私はナオミには知らせない方向で考えています。一児の母であるナオミの心を乱したくはないからです。
エヴァに子どもを産む力が残されていたのは、私の認識不足でした。
もちろん誰も、エヴァからマリアを奪う権利はありません。
しかしながら、この町の掟では、一人の男が二人の妻を持つことは許されていません。今回の件に関しましては、所長である私の責任も非常に大きいのですが、あなたに1つ、提案したいことがあります。
あなたは、今まで通り、ナオミとヨブと過ごすことを望みますか?
それとも、エヴァとマリアと過ごすことを望みますか?
それとも、第三の道を選択なさいますか?
「第三の道」について、今は詳細をお伝えすることはできませんが、どちらとも末長く過ごすという提案です。
もし、「第三の道」を検討したい場合は、私と個人面談をしてお伝えしたいと思っています。
あなたか、ナオミとエヴァのどちらかを選択できるならば、私との面談は不要ですが、二兎を追うということを検討されるならば、以下の日程でよろしくお願いいたします。
草々
…つづく
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