連載小説(22)漂着ちゃん
「あなたは責任感が強い。二児の父親になった今、もう自殺を考えることはないでしょう。何か意見はありますか?」
「意見は特にありません。あなたの仕組んだこととはいえ、おっしゃる通り、今の私には自殺という選択肢はありません。ただ、できることなら、ナオミとヨブ、エヴァとマリアと同じ時代に生きてみたい。わがままかもしれませんが、私にはどちらかを選択することなどできません」
「私とて、人情はあります。ただ、同じ時代に、同じくらい愛する女と子どもがいたら、女たちはやがていがみ合うことになるでしょう。だから、どちらか一方は、他の時代に生きたほうがいい。それはあなたのためでもある」
「そうかもしれませんが、必ずしもナオミとエヴァがいがみ合うとは限らないでしょう。ヨブとマリアは仲良くできることでしょう。それに加えて、私が他の時代に移り、生きることを、私の一存で決めていいような問題でもありません。ナオミとエヴァとも話し合う必要かあります」
「それはそうですね」
「どちらがどちらの時代へ行くのか?ところで、二人とも他の時代へ行くことを拒んだらどうなりますか?どういう罰則がありますか?」
「痛いところをつきますねぇ。罰則らしい罰則はありません、ただ…」
「ただ?」
…つづく
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