川
自転車のライト、漕ぎ出してから右足で点ける、わたし
自転車のライト、またがる前に手で点けて漕ぎ出す、きみ
そんなにおもしろいかい、はやく行こうよ、僕たちこれから、川へ行く
丁寧に手入れされて、すいすい隣を走るきみの自転車
雨ざらしで錆びだらけ、キイキイ喚くわたしの自転車
そんなに楽しそうにして、だってすてきなの、僕たちこれから、川へ行く
夜の川は真っ暗、夜の川は音が見える、星座をみて昔の人と一緒に並んだ、アンタレスは思ったより赤くて暗かった、長生きしたからだよ、きみは赤い星の色は見えない、わたしはくらやみの魚の名前を知らない、沢蟹だと思って拾い上げたら丸い石で笑った、もう帰る?と聞いたら、帰りますか、じゃなくって、帰りますか?と言った、そんなわけね、それから100匹沢蟹数えて、蜘蛛が水の上を走っていった、タオルで拭いて靴下はいた足、また水に浸けてしまった、きみは、クラムボンは泡だと思うと言った、かぷかぷわらうと梨が食べたくなるね、野良猫は誇り高くてずっとあの距離、僕たちこれから、僕たちもこれから、