ピカ炉
高校時代に文芸部で書いてたものをまとめました。 ところどころ黒歴史あり、まとめて愛してね
頭痛がひどくて学校を休んでいたある日の真っ昼間、突然どうしようもない気持ちになって全身を振り絞って泣いていた。よくあることなので、身を任せて泣いていた。 ふと、声は出さずに腹の底から筋肉で空気を玉にして吐き出すような自分の泣きかたが気になった。 自分は普段、しゃべるときにこういうからだの使い方をしたことがない。 突発的に泣くときだけ、力が入る部分と力が抜ける部分がある。 もしかして、と思った。 回復してから意気揚々とカラオケに向かった。 先日のからだの使い方を思い出して歌っ
繰り返し見る夢がある。 全部同じというわけではないけれど、 いつも変わらないのは、 泳ぐように体を動かすと空中に浮かべて移動できて、 眠くて横になって休みたいけれど地面がある場所には敵だったりややこしいものがいて(この状況や程度は夢によって様々で)、 空に逃げるけれど、空には天井があってぶつかってしまう。 へとへとになりながら空の天井に沿って飛んでいると、壁紙のようにめくれているところが見つかる。 むりやりそのとっかかりを爪でひっかき剥がすと、骨組みの角材が見えて、その間に
右上の奥歯が痛い。 ここ最近分かりやすく疲れていて、一昨日からは頭痛と微熱でどうしても頑張れず、休みをもらってベッドに引きこもっている。カーテンは閉めっぱなし、ごはんもあまり食べていない。 奥歯の痛いところを触ろうとしたら、何もなかった。前に親不知が生えてたところが、腫れてもいないのにぼんやり痛い。 そういえば親不知を抜いたのっていつだったっけ。1年前、頭痛と腹痛が少しずつ悪化して、病院は予約しても予約時間までに外に出れず、ほとんど動けなくてごはんもあまり食べないものだから、
木漏れ日は太陽のかたちをしている
まぶしいもの、銀杏の黄色に埋もれた猫の眼差し あたたかいもの、破れたソファの上にある冬の陽差し 強かったもの、コンビニ横の喫煙所で堂々としている真冬のタンクトップ 気がかりなもの、留守番している電気毛布 ねむくなるもの、曇りの日に白く反射するアスファルト しずかなもの、神社の後ろ姿と木目と溝 触りたいもの、ポケットの中にあるピンク色の指先 大事だったもの、早朝の珈琲の湯気向こうから帰ってこない たぶん欲しいの、りんごを皮剥いて食べる普通の日 さめてしまったか
ああ 言葉がほしいな あなたの物語がほしいな たくさん残してくれたけれど もうだれも続きを書けない ずっときらきらひかるお話を透かして世界をみていた それが本物だと思うほど ずっと新しいかがやきと いつまでも恋しい過去の感情たち それが永遠だと思うほど あなたが死んでしまってはじめて この大きな世界が、たったひとりの 生きた人間につくられていたなんて 世界がひとつおわっちった ああ 言葉がほしいな 懐かしい世界にしないで たくさん残してくれたけど もう誰も書けない続き 世
わたしは今日あの日を見た 夕日にベランダのブロックが焼けただれていた 後頭部を向けてチリチリと目をつぶっていたあの日を 転がる12色の色鉛筆を光は染める 窓ガラスは何味に溶ける 目を開けたらもうさっきの穏やかな炎の色は残ってないから怖くて目を開けられない 留めるように息をする 詩を暗唱するように息をする 今日を燃やしきらないで どうすればいつかまた本当に思い出すんだろう みんなの遅い昼寝を包む夕暮れは砂糖菓子のように脆い 紙をこする音で起こさないように 頬
眠りに落ちる直前と泣いた後は 研ぎ澄まされて 銀の海のよう 泳ぐ言葉に釣り針垂らし引っ掻き傷をつくる、忘れないように 寂しさは唯一奪われない 痛みは贅沢なダイヤモンド砥石だと言った 苦しみは それじゃあ苦しみは しあわせは しあわせは 眠りに落ちる直前の泣いた痕は 研ぎ澄まされて 銀の海のよう 浮かぶ言葉を網で掬って、救って あなたは、蒔いた寂しさに愛を注いで育った 傷口には、ことばを入れて刻んだ 美しい模様を背負うあなたは、船を漕ぐ 苦しみの波は砂を濡らしてはひいて しあ
一生あなたにはできないね、誰かに報告するための体調管理みたいに数をこなして、誰かに見てもらうために顔や腕に傷をつけるふりをして言葉を綴り、ちゃんと隣に座って味わえば大事にできる感情を、何を勘違いしたか、小さいから大きく見せないといけないと思ったのか、未熟な精神をもって、制御できない壮大なものとして振る舞っていたものね、豊かな人は無口でもたくさんの色を見せてくれるけれど、老害は自分のことをよくしゃべる。あなたの風通しの悪いすかすかの作品は、とても雄弁ね。
小さい人の真新しい下の歯を見て、チューリップが咲いたと思えるのは、わたしがまだ小さいときに、もっと小さい妹の歯を、かわいいチューリップの形だね、あなたもそうだったと、そう言われたから、そんなことで胸がいっぱいになって、ベランダにいそいそとからだを出してぽろぽろと息をこぼすのは、わたしも妹も、ぎざぎざのちいさい歯の頃から、長くあなたのまなざしに育てられたから、大きくなった今でもまだ、それを全部抱えるには小さいから
なにも投稿できていませんが、生きている上に、なんと! なにも書いていないわけではないのです。 修論を書いています。
夜眠れなくて、もう少しで朝がやってくるころにうつぶせになると、胸がきゅっとなる、ゆっくり息を吸って吐くと、甘じゅわりとお腹の底に溶ける。素敵だった週末へのお別れだから切ない。(月曜学校行きたくない/ピカ炉)
早めにお風呂をあがった。濡れた髪をタオルで包んだまま夕御飯を作り、机において、なぜかわたしは掃除をし始め、夕ごはんは冷め、ていうかお酒作っておいたのに氷も全溶け、部屋はなんかすっきりしたが(生活なんて全部やめてやる...)の気持ちでごはんを温め直している。 今日わたしがうまく生活できなかった分、だれかがうまくいったとかならば、わたくしも、怠惰でばか、という自分を許せるのですが、電子レンジがなる頃には食欲もなんだかしなしな失せ、ラップかけているところなので、もうなにがなん
木造の埃っぽいギャラリーの屋根裏へ向かう途中、重たいボブカットの年下女性が何かヒステリックに恨み言をいいながらついてくるので、隅っこに追いやって「ほら、見ててよ」って言いながらわたしは自分の左手の指を銃で撃ち抜く。少し怖かった。中指と薬指がクラッカーを引くように飛んで、空気中の埃がパッと動いて、小さい窓から入る光できらきらした。終わってみるとすっきりした。一階にはレトロでアメリカンポップなポスターがいくつか貼られていて、サイダーが売られている。女性は少し落ち着いて、しばらく
夢にはいるとき、大きな寸胴の穴を落ちていく、そこにはたくさんの横穴があって、風が吹き込む、吸い込まれて夢を見る、繰り返す悪い夢に飽きたとき、いつもは夢の中で目をつぶって、天井の豆電球や隣の母さんの背中を思い浮かべる、沈んで違う穴から夢の外に浮かび上がるの、でもある日、その途中で失敗したと思った、なんだか変な方向に頭を出してしまって、チカチカひかる灰の部屋にいる、わたしはどうやら良くわかってて、規則正しい脈のような配管の機械に刺さったカードを抜き捨て、なんとなく気に入ったカード