あの日を見た
わたしは今日あの日を見た
夕日にベランダのブロックが焼けただれていた
後頭部を向けてチリチリと目をつぶっていたあの日を
転がる12色の色鉛筆を光は染める
窓ガラスは何味に溶ける
目を開けたらもうさっきの穏やかな炎の色は残ってないから怖くて目を開けられない
留めるように息をする
詩を暗唱するように息をする
今日を燃やしきらないで
どうすればいつかまた本当に思い出すんだろう
みんなの遅い昼寝を包む夕暮れは砂糖菓子のように脆い
紙をこする音で起こさないように
頬をぬぐう音で起こさないように
12色の色えんぴつが焦る
なにも握れない手のひらが湿る
でも愛してる
まばたきの間にいなくなる夕暮れ時へのことば、愛してる
わたしは今日あの日を見た
遠い遠いあの日を見た