【箱庭図書館】乙一
※インスタに投稿した記事より、一部加筆修正してお届けいたします。
森博嗣、塩野七生、宮沢賢治に次いで、おそらく私が四番目に好きな作家の候補の一人が乙一先生です!(といっても、他にもたくさん候補があり、米澤穂信、道尾秀介、原田マハ、綾辻行人、辻村深月、湊かなえ……うーん、絞り切れませんねぇ)
乙一さんの話に戻ります。乙一作品は、特に初期の短編作品は、何度読み返してもグッとくるものがあります。時に切なく、時に悲しく、それでいて残酷だったりほんわかしたりと、様々な感情が湧き上がっては消えるという、不思議な読感の作品群だと思います。
ラノベのようでもあり、ミステリやラブコメ、ホラーやSFのテイストもあり、青春群像劇もあり……感動も恐怖も笑いも楽しめる、これこそエンタメ小説なのかもしれません。
さて、本書のお話です。
本書は、集英社の企画「オツイチ小説再生工場」から生まれた短編集です。これは、端的に説明しますと、一般の方に募集をかけ、寄せられた小説の中から選ばれたものを、乙一さんがリライトした短編集です。
原作も、Web上で読めますので、ご興味ございます方は探してみて下さい。
すごいなぁ……と思ったことは二点。
一つは、元はどこかの誰かさんの作品なのに、全て乙一ワールドになっていること!
話の大筋を変えたわけでもないのに、構成とか単語の選択、文章の表現力など、ストーリーとは別の部分にも作家の個性は宿っているんだなぁと思いました。もっとも、これは当たり前の話でもあるのでしょうけどね。
もう一つは、有機的な結び付きを持たせるテクニックです。
各話独立した話だったのに、乙一さんは短編集にまとめるにあたり、単なるリライトじゃなく、連作短編集に昇華させたのです。と、サラリと書きましたけど、これって、並大抵のことじゃないと思います。
具体的には、各話に共通の登場人物を設け、舞台背景も統一して……いやはや、これだけでも大変です。
なのに、そこから色んな伏線を張り、時系列をリンクさせ、何より世界観まで揃えるわけですから、そして、その全てをオリジナリティを尊重しながらやり遂げてるわけですから、もう凄過ぎて、逆に「すごいなぁ」としか言葉が出て来ません!
また乙一ワールドに戻りたくなりました。
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