櫟 茉莉花
過去に書いたエッセイやノンフィクションをまとめていこうと思います。身バレ防止の為、ほとんどの作品で、随所に創作を交えております。 あと、日記のような雑記とか雑感なども、適度にフェイクを交えつつ。
長編、短編など、小説を文字数で分類する正式な定義はないそうです。ただ、一般的には、4,000〜5,000文字以内の短い物語を、掌編小説(ショートショート)と呼んでいます。 ここでは、長くても5,000文字程度までのオリジナル小説をまとめていこうと思います。 冒頭に、文字数と読了時間の目安を記しますので、必要な方は参考にしていただければと思います。
自分で描いた猫の鉛筆画に、写真の目を合成して出来た画像に、簡単なポエムを添えてみました。 ナルシズム全開の完全なる自己満足シリーズです。
お題に沿って「54字の物語」を書く非公式イベント、「54字の宴」と、関連イベントにご参加くださいました作品をまとめます。 【第1回】お題:肝試し(2023.7月) 【第2回】お題:ハロウィン、落ち葉(2023.10月)
2019年の秋から、インスタで書いてきた「54字の物語」を、ここにまとめていきます。 現在も増殖中ですので、長丁場になると思います。 公式のルールに基く為、記号の後のスペースや三点リーダ等、通常と違う表記も含みます。 文字数調整の為、「ら」抜き「い」抜き言葉を使うこともあります。
他サイトで『オンコ知新』という連載をやっております。 これは、あまり有名じゃないけどすごく良いクラシックの曲を紹介するというコンセプトで、ほぼ自己満足だけでやっているのですけど、更新する度に、やっぱり私は音楽が好きなんだなぁと思うのです。 noteで連載したかったのですが、どうしてもチャットノベルのスタイルで書きたかったので、ノベルデイズを利用することにしました。 ♫ 🎶🎵♩♬♪♫ 🎶🎵♩♬♪♫ 🎶🎵♩♬♪♫ 基本的に、SNSでは「文芸」を主体に活動しているつもりです
(前話) 第6章 コンサート ② さて、いよいよ本番当日……大晦日の朝を迎えた。 私は、予定通り、十時半頃に彼等を迎えにホテルへ出向いた。何故こんな日に仕事を? という不満や疑問は、昨日の練習に立ち合えたおかげで完全に吹き飛んでいた。 どうせ二十分以上は待たされるだろうと予想していたのだが、珍しく時間通りに二人はロビーに降りて来た。兄弟は、昨日の練習時とは別人のような、陽気でお喋りな普段のイタリア人に戻っていた。とてもこれから大一番を迎えるとは思えないほど、リラック
毎年、ご近所さんにカリンをいただくのですが、今年は大豊作のようで、かなり大きめのカリンを6個いただきました。 さてさて、例年はシロップを作るのですけど、氷砂糖は年々高くなっており、庶民には手が出せない高級食材になりつつあります。 近所のスーパーでチェックしたところ、1kg入りで最安値が478円! ほんの数年前までは、二百円代で購入していたのに! 全部、岸田のせいです。多分。 石破さん、先ずは何より氷砂糖が手頃な価格になるような政策をお願いします! この6個全部をシロップ
(前話) 第6章 コンサート ① ニコロージ兄弟が来日すると知った時、私は再会出来ることを嬉しく思った。 当時の私は、フリーランスのピアノ調律師を名乗っているものの、大した仕事もなく、大手楽器店や運送屋に頭を下げて調律を分けてもらいながら、ギリギリの生活を送っていた。また、母校でもある那古野ピアノ技術専門学校の非常勤講師として週に数回教壇に上がることもあれば、教材用のピアノの修理や整備も引き受けていた為、夕方は毎日のように学校へ出向いていた。 ある日のこと、校内で波
(本文約2,600文字) 紅葉から「赤」を抽出して保管する——それが、この季節の僕の仕事。でも、誰もそんなこと知りやしない。孤独な任務なのだ。 抽出した「赤」は大きな陶製の甕で保管する。百リットルぐらい入るらしい。そんな大きな甕が僕の蔵に百個もある。赤は希釈して使うので、一つの甕に1/4ぐらい貯まれば十分だけど、何せ百個もあるからね。単純計算で、2,500リットルもの赤が必要なんだ。 それでも、昔は楽々と集まったんだ。国中、探せば至る所に楓の木があったし、毎年ほぼ決
(前話) 第5章 トライアングル ② ほんの一例として、T大学で時々開催される「キャンパスコンサート」を取り上げよう。 このコンサートは、年に数回、不定期的に行われているのだが、企画は全て杉本が大学に持ち掛け、大学の文化事業の一環として、また地域住民への還元と称して、多額の運営費を捻出させるのだ。 ちなみに、ニコロージ兄弟はこのルートから外れた招聘ではあったが、主要関係者はいつもの三悪人。双子によるキャンパスコンサートも、来日中に開催された。きっと、大学が出資した
(前話) 第5章 トライアングル ① 悪人が三人いるとする。それぞれの思惑が同じベクトルを示す時、暗黙のうちに三者は協力的になり、欲望の三角関係を構築するであろう。しかし、当の本人達に言わせれば、その関係を「友情」と呼ぶので腹立たしく思えるものだ。 ここで言う三悪人とは、T大学の杉本教授、那古野ピアノ技術専門学校の波多野理事長、ProssimoPiano社アントニオ・デ・ロッシ社長のことを指す。そして、とても悲しいことに、私はこの三人と比較的近い関係にあったのだ。
久しぶりに『オンコ知新』を更新しました! https://novel.daysneo.com/sp/works/episode/d4f4b48959d654899f52266348b39556.html 今回は、バッハの大曲「フーガの技法」です。 『Le Pianiste』は、明日から再開します🙇♀️
(前話) 第4章 新境地 ② 数日後、彼女からメールが来た。「近いうちに、また会えませんか?」と。おそらく、コンクールの話がしたいのだろうな……と予想した。 すでに、ニコロージは帰国していた。彼等と美穂の関係も、彼等のコンクールでの考えも知っていた。「マリが判断して……」と、ファビオが言っていたことを思い出した。まだ早いかどうか分からないが、そもそも、適切なタイミングなんて分からない。 ただ直感で……そろそろ美穂に本当のことを話しても良いような気がしていた。 私
(前話) 第4章 新境地 ① 帰国して四年目の冬、私は運良く長期休暇を取ることが出来、イタリアを一人旅した。イタリアといっても、所縁のあるナポリに貼り付いて、その近辺だけを散策するだけの予定だ。 その時に、何かとお世話になった人物がナポリ在住の日本人調律師、太田輝昭氏だ。私がナポリで働いていた時は、太田氏には何から何までお世話になり、「テルさん」「マリちゃん」と呼び合い、技術的には師弟のような、プライベートでは兄妹のような関係を築いていた。 と言っても、それはあく
(本文約2,200文字) 秋と本音で話し合う為に、駅前の広場で待ち合わせたのだが、まだ秋は到着していないようだ。なので、僕は少し大きめの月曜日にそっと腰掛けた。ここで待とうと思う。 でも、約束の場所は確かにここにしたんだけど、そういえば時間を決めていなかったことに今更気付いてしまった。となると、「時空」の合致は困難だ。時空って、時間と空間のことだったはず。時間がないと、空間だけになる。空間だけ共有しても、秋に会える保証はない。 そんなことよりさ、何となくだけど、待
しなやかさと俊敏性を犠牲に 丸くてふくよかな 愛嬌に特化した進化 でも明晰な頭脳と 思慮深い洞察力と 射るような眼差しは健在だ 私が今 何をしようとしているのか 瞬時に理解して 抱かれるものかと 目だけで牽制する しかし 逃げ足は遅くて そんなわがままボディも ただ愛しくて ニャンコの目⑴
(前話) 第3章 音楽愛好家 音楽は、娯楽でもあり、アートでもある。どちらの側面からアプローチしようが、それぞれに様々な楽しみ方がある。様々な付き合い方もあるし、様々な効果もある。向き合い方や関わり合い方はもちろんのこと、そこに至る理由や目的も、得られる結果も千差万別だ。 そんな音楽を、職業としている人もいる。いわゆる「音楽ビジネス」だ。しかし、その範囲はとても広い。 単純に、演奏家、作曲家、作詞家だけでなく、アレンジャー、バックダンサー、振付師、楽器店、ホール運営
(前話) 第2章 審査員 ② あのコンクールの日も、三人で夕食を食べながら、コンクールの話で盛り上がっていた。しかし、その時に限っては、普段の部活のような和気あいあいとした楽しい雰囲気はなく、いつになく三人とも神妙な面持ちでの議論になっていた。 私は、どうしてもニコロージ兄弟に言いことがあった。 「あなた達が会場で聞きたがってたこと、今なら話せるよ」 そう切り出すと、サンドロが「何のことだ?」と惚けてきた。コンクール会場では執拗に聞いてきたくせに、今はあまり触れら
(前話) 第2章 審査員 ① ローマとナポリのほぼ中間ぐらいに、Sola(ソーラ)という街がある。周りを山で囲まれた小さな街だが、その中心部にニコロージ兄弟の生家がある。もっとも、生まれてからずっとこの家に住む二人にとっては、生家というより自宅と呼ぶ方がしっくりくるだろう。 そして、自宅に隣接して、ニコロージ音楽院が建っている。 言うまでもなく、ニコロージ音楽院は、ファビオとサンドロによるピアノ専門の音楽学校だ。と言うと、日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、日
(本文約1,300文字) 爽やかな秋空に誘われて、私は久しぶりに外出してみた。しかし、たった今、目の前を横切った野良猫とは違い、私は社会環境の変化に上手く適応出来そうにない。 あの野良猫も、この朗らかな季節の心地よい陽光に誘われて、のこのこと出てきたのだろうか? 目的は、陽だまりか食べ物かパトロールか……街を歩くことはリスクを伴うだろう。それでも歩く。私も似たようなものかもしれない。 長らく引きこもっている間に、この街も公園も……いや、この列島自体があまりにも変わって