【モダン】原田マハ
※インスタに投稿した記事より、一部加筆修正してお届けいたします。
例えば、ピアノのコンサートが行われるとします。その時、当然ながら主役はピアニストです。
しかし、ピアニストがピアノを弾くという行為を芸術、または娯楽といった鑑賞用のコンテンツと捉え、そこに商業的な価値を見出したものがコンサートだとするならば、それを成立させる為には実に様々な人が多様な役割を果たしているのです。
例えば、プランナー、プロデューサー、マネージャーなど。
他には、予め、コンサートの宣伝も重要ですし、その為のポスターやチラシの作成も必要となるでしょう。そうなると、デザイナーやカメラマンも大切です。場合によっては、メディア担当の広報も必要になります。
また、当日用のプログラムを作成するなら、文章を書く人も要ります。それに、当日の会場にも沢山の人手が必要となります。受付、クローク、影アナ、警備、誘導、照明、舞台設営、ピアノ調律師……etc.
そう考えると、一つのコンサートの為に、実に沢山の役割があり、それぞれのプロフェッショナルが関与するのです。いや、プロスポーツも含めたあらゆるショービジネスに共通した話でしょう。
これは、美術でも同じです。
この物語は、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で働く様々な人達にフォーカスした5つの短編集です。キュレーターや館長、デザイナー、監視員まで、実に多様な「役割」を担う方々により、展覧会は支えられているのです。
そんな彼等による多角的な視点からのアプローチで、物語は進められます。
実際にMoMAでの勤務経験がある著者ならではの、詳細でリアルな描写も臨場感がありますし、9.11や3.11などの実際の事件を絡めたり、実在する名画にちなんだ話だったりと、リアルとアンリアルの狭間の話で、とても興味深く、ハートフルな5話でした。
とにかく感動しました。
レビューは、このひと言で済ましてもいいのかな、と思うぐらいに。
最後に、特に印象に残った言葉を備忘録を兼ねて引用しておきます。
「人間は汚い。ずるい。醜い。だからこそ、『美』を求める」
「知らないところで、役に立っていて、それでいて美しい。そういうものを『アート』と呼ぶ」
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