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【火花】又吉直樹


※インスタに投稿した記事より、一部加筆修正してお届けいたします。

 言わずもがな、芸人さんが書き、数年前に芥川賞を獲った話題作です。でも、ひねくれ者の私は、どうせオトナの力学が働いたのでしょ? と決めつけて、この本を避けていました。

 しかし、今更になって読んでみて……ホントに良かったと思います。
 これが芥川賞の基準に合致しているのかなんて私には分からないし、そんなことはどうでもいいと思いました。ただ、受賞したことによりこの本を知り、又吉さんの才能に気付くという側面から見ると、本の評価以上に、「世に出す」という意味でとっても意義深いものがあると思います。
 もっとも、近年は芥川賞自体が「有望な作家の新人賞」といった意味合いの強い賞ですから、そう考えると妥当な選出と言えるのかもしれません。
 芥川賞を獲ったからこそ避けていた私も、結局は、芥川賞を獲ったからこそこの本を知ったのですし、最終的に読むことになったのですから。

 この本は、一見お笑いの世界の厳しさを書いた話のようですが、私は「漫才」というカテゴリーを利用した表現者の話と受け止めました。
 絵を描く、文章を書く、モノを作る、演技をする、楽器を弾く、歌を歌う、ダンスする……こういった全ての表現者に共通する葛藤や喜びが、漫才師の生き様を通して垣間見えるのです。

 評価を恐れ、評価される為に媚び、評価される為の対策を練る人。一方で、周りの評価に目もくれず、信念を貫き、己の生き様を赤裸々に晒す表現者。
 どちらが正解なんてなく、時代や受信者によっても目紛しく評価が変遷する中で、たまたま受け入れられる人もいれば、拒絶される人もいます。
 才能も努力も人間力も処世術も、実力であれ運であれ、結果が出て初めて成功と言える世界にて、どうやって表現し、どのように生き抜くのか……

 仕事でも趣味でも、鑑賞だけでも、もし「表現すること」に少しでも関心のある方は、何かと感じる部分も多い作品だと思いました。

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