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掌編小説集

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長編、短編など、小説を文字数で分類する正式な定義はないそうです。ただ、一般的には、4,000〜5,000文字以内の短い物語を、掌編小説(ショートショート)と呼んでいます。 ここで…
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#人形

ひとしずく

ひとしずく

もしも、一滴一滴の雨に生命が宿っていたら……
私は、そんな空想をします。



一滴の雨が、空から舞い降りています。
彼は考えます。

「僕は、まだ生まれたばかりなのに、落下するしか出来ることがないんだ……この先、一体どうなるのだろう?」
「何故、僕は生まれたの? どうして、生きないといけないの? 死ぬことは出来ないの?」
「生きるってどういうこと? 死ぬってことは?」

一滴の雨に

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家族人形

家族人形

(本作は977文字、読了におよそ2〜3分ほどいただきます)

 愛する我が子を亡くした悲しみは、計り知れないものだ。現実に直面出来ず、途方に暮れるだろう。
 それは、私達夫婦も例にもれなかった。妻は、突然の悲劇を直視出来ず、現実から逃避し続け、やがて精神に異常をきたした。すると、愛娘が肌身離さずに可愛がっていた人形に目を向け、空想が織りなす危険な解決へと収束した。しかし、そのベクトルは、とても脆く

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