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フォルマシオン・ミュジカルによる音楽経験の多様さについて

8歳がマーラーの交響曲を聴くの?


先日、比較的新しい、BD(いわばフランス版漫画)風のフォルマシオン・ミュジカル教材、音楽の魔法(La magie de la musique)の第2巻を紐解いてみたら、マーラーの1番の交響曲の第3楽章を聴かせる課題がありました。
この第2巻の対象は主として8歳(フランスでは小学校3年生)の子供です。8歳の子供でもマーラーを聴くのです。日本だと考えにくいですよね。
(私がマーラーの交響曲を演奏会で聴いたのは多分高校生)

マーラーというと大人が聴くものとか、マーラーは長いし重いし子供は退屈しそうという先入観があって、日本で音楽を学んでいると子供の教材としては選ばないかなぁと思ってびっくりしてしまいました。

よくよく観察してみると、この曲は、フランスの子供なら誰でも知っている童謡(日本でも比較的知られていると思う)のパロディーが冒頭に使われてて、その比較だけでも生きた音楽の学習になります。他の要素を考えても8歳の子供に相応しい内容ではあるのでここで教材として使われるのは納得です。

そして、このまだ感受性が高い時期にこういった重い曲を少し耳にしておくことで、子供の音楽経験が多彩になり、大人になってからの音楽生活がさらに豊かになるのかな、とも思います。


11歳がタンホイザーを歌うの?!


ルルが先日持ち帰ったプリントは、ワーグナーのオペラ、タンホイザーの「 O du mein holder Abendstern(夕星の歌)」から抜粋で、さらに歌いやすいように先生が編曲したものでした。半音階がたくさん出てきています。

ルルのクラスの生徒は、11歳、12歳の子がほとんどです。ワーグナーのオペラどころかオペラ作品を楽しめる年齢とは思えません。しかもワーグナー…。

ルルがいうには「まだ歌ってない」という話ですが、半音階の練習をそのための曲を使うのではなく、タンホイザーという現実の曲に触れることで音楽の演奏と結びつける意味があるはずです。そしてワーグナーという作曲家、長大なオペラ作品の一端に触れることで音楽的視野を広げる意味合いもあると感じています。
オペラ作品全部を見るのは授業では不可能だし、ワーグナーのオペラとなったら体力勝負的な面もあるのでなかなか難しいとは思いますが、こうして音楽に少しでも触れるのはこの年齢でもやり方次第でできるんだなと学びました。


長調と短調の聴き分けは理屈ではなくまず経験から


ある日、テレビの映画のBGMにベートーヴェンの交響曲7番の第二楽章が流れてきました。それを耳にしたシュシュが「あ、これ短調だね」とあっさり言いました。

シュシュは「この音はこういうものだから」と考えて答えたのではありません。フォルマシオン・ミュジカルの授業でたくさん音楽を聴いて雰囲気で聴き分けているのです。確認はしていませんが、フォルマシオン・ミュジカルの授業で聴き分けをやっているんだと思います。

もちろん、長調と短調の音の並び方の違いなど学習もしています。でも、楽譜をみながらの調判定ならまだしも、聴き分けるのは理論的なことを知っているからできるというものではありませんよね。それもBGMでちらっと流れてきただけの音楽ですよ。

夏休み中、シュシュにアウフタクトの有無を聴き分けられるかやってみたところ、これもバッチリでした。バイオリンはまださほど弾ける方ではないのですが、フォルマシオン・ミュジカルで音楽経験を積んでいることで色々わかるようになっています。

子供時代からフォルマシオン・ミュジカルをやる意味は、子供が母国語を覚えるようにまずは経験を積み重ねて区別をする、理論的な裏付けは後から学ぶということなのです。

なぜまず経験からなの?

音階も調性も元々あった音楽からまとめられました。理論先にありき、ではないのです。
文法は、話されてる、書かれている言葉を整理して体系化されたものですが、音楽理論も同じ、それまでに実際に行われているものをまとめて「こういう風になる」とモデル化したものです。

つまり、規則を規則としてだけ教えられても、生きた音楽につながりにくくなります。そして、積み重ねる音楽経験は、自分が弾いているだけでは足りません。注意して聴く、音楽に耳を傾ける必要があります。

フォルマシオン・ミュジカルの授業では、音楽全般を理解するという目的から「音楽に耳を傾ける」時間をきちんと取っています。理論の学習も実際の音楽を利用するように努めています。

フォルマシオン・ミュジカルで、子供たちは多様な音楽経験を積んでいます。

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