ラザール・ベルマン先生の思い出 その2「ベルマンが家に来る!?」
前回は、ベルマン先生のスロヴァキアでの講習会について書きましたが、最終日に「先生がお住まいのイモラ(イタリア)に行けば、時々レッスンをしていただけますか?」と聞いてみたところ、「それもいいけど、ブリュッセルにいるのなら、友人で素晴らしい先生がいるから、是非習うといいよ!」とご紹介くださいました。その時のベルマン先生の目が真剣で、きっといい先生なのだろうと思いましたが、それがロシアの強烈なおばあちゃん先生の「エフゲニア・ブラギンスキー先生」です。留学生活を振り返って真っ先に思い浮かぶのが、この先生。またその話は、後日ゆっくり書きますね♪
スロヴァキアからブリュッセルに戻ってからは、王立音楽院の先生とブラギンスキー先生のレッスンを、それぞれ週1回受ける生活をしていましたが、ある時、ベルマン先生がリサイタルのためにブリュッセルに来られることを知りました。早速、ベルマン先生のご自宅に電話をして、「ブリュッセルに来られるなら、レッスンしていただけませんか?」と伺ってみたところ、先生はすぐに「いいよ」と言ってくださり、「きみの家にピアノある?あったらそこでレッスンするよ」と仰ったのです!
さあ大変、「ラザール・ベルマンが家に来るのー??」と大慌てです。今で言う「出張レッスン」ですね。ラザール・ベルマンの出張レッスン・・・、なんて贅沢なのでしょう!
そこからは、準備に大忙しでした。家ではスリッパで生活をしていましたが、ベルマン先生のためのスリッパを探さなければ。しかしベルギーではスリッパは品数が少ない上に、サイズもよく分かりません。やっと選んだスリッパを、当日先生は履いてくださいましたが、レッスン中に「本番では靴を履くのだから、靴で練習した方がいいよ」と言われてしまいました・・・(笑)。
レッスンは午前中の予定で、せっかくベルマン先生が来てくださるのだから、お昼ぐらいは用意しよう、とメニューを考えていました。その少し前、私は「ベルギー人の奥様にベルギー料理を習う会」に参加したことがあったので、メインはそこで習った「アンコウのトマトクリーム煮」に。あとはパンとサラダとコーヒーをお出しすることにしました。
ところが、レッスンの一週間ぐらい前から酷い風邪をひいてしまって、レッスン当日は、いわゆる味覚障害に!においも全く感じられず、分かるのはかろうじて塩味ぐらい。なんてことなのー!!と非常に焦りましたが、材料も買ってあったし、とにかくレシピに忠実に作るしかありません。それにしても、そんな風邪の中で料理をお出しするなんて、今から思えばよくなかったですね・・(汗)。先生、その後大丈夫だったかなぁ・・・。
当日の朝は、ベルマン先生は時間通りに来てくださって、先生とカラヤン&ベルリンフィルのCDでよく聴いていた「チャイコフスキーのピアノ協奏曲 第1番」をレッスンしていただきました。私の持っていたカワイのピアノも、ベルマン先生が弾くと素晴らしい音に!しかもCDで聴いていた曲を生で間近に聴けて、「ラザール・ベルマンが私のピアノを弾いている!」と、ファンとしてはお宝の時間となりました♪
レッスン後は用意してあった昼食をお出ししましたが、先生は美味しい美味しいと言って食べてくださり、ゆっくりお話もされて、ご機嫌で帰って行かれました。私の中で、ベルマン先生にお出しした料理の味は、未だに謎のままですが・・・(笑)。
その直前、「展覧会の絵」などを弾かれたブリュッセルでの先生のリサイタルは、とても素敵なものでした。思えば私の中でのベルマン先生は、いつまでも憧れのピアニスト「ラザール・ベルマン」のままの気がします。今回、ブログを書くにあたって、ベルマン先生の演奏を沢山YouTubeで聴きましたが、改めて、凄いピアニストに習えたのだなぁと胸がいっぱいになりました。これからは、ベルマン先生の弾かれる領域に一歩でも近づけるように頑張ろう!と、気持ちを新たにしているところです♪