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創作活動と1型糖尿病とわたしについて

 「1型糖尿病とわたし」というマガジンをつくりました。

 私は1型糖尿病です。小学生のときに発症して、かれこれ20年弱の付き合いになります。
 今でこそサラッと内心ドキドキしながら言えるようになりましたが、ネット上で自身の病気について話したのはこちらの記事が初めてだったと思います。

 その前書きにもあるように、私はずっと自分の病気を全面に出すことにかなりの抵抗がありました。学校や職場でさえ限られた人にしか伝えていないのに、オンラインなら尚のこと説明する義理も義務もありませんし。

 でも、あるきっかけで考えが少しずつ変わりはじめたのです。それは「Web展・すきまのひとびと」への参加でした。

 「Web展・すきまのひとびと」は、熊本のシェアアトリエ&ギャラリー「キノコファクトリーのねじろ」の店主であるくさもとさんが2019年に主催した、オンライン上のアンデパンダン展。2022年にはねじろで開催されました。
 先の『普通の生活とは何なのか』という記事は、その「すきまのひとびと」に触発されて筆を執ったものです。
 ずっと蓋をして抑え込んできた、あるいは隠し続けているうちに自分でもわからなくなってしまった本音と、改めて向き合う覚悟(と呼べるほどの自信はないけれど)や勇気をもらった経験でした。

 その頃、さまざまな展示に参加したり、いろんな作家さんの作品に触れていく中で芽生えたのが「創作活動において作品と作者の中身は切っても切り離せないものである」という思いです。

 つまり、私がどんな人間なのか。どんな生き方をしているのか。それらは多かれ少なかれ、そして良くも悪くも、創作に必ず滲み出るということ。
 そう考えたとき、「私という人間を構成するいち要素としての1型糖尿病」について改めて──いや、初めて、きちんと向き合ってみようと思ったのです。

 そうして考えた中のひとつが、「1型糖尿病を持つ絵描き」としての創作活動でした。

 といっても、啓蒙活動をするわけではないです。「1型糖尿病のある私にとっての日常」を絵や日記に表すことで、同じ病気を持つ方の中に「あ、こんな感じでいいんだ」と心が軽くなる人が1人でもいたらうれしいな、ぐらいの、ほんとに小さなもんです。
 初めから誰かのためにやるというよりは、自分のために書いた(描いた)ものを公開して、それが届く人がいたらラッキーだなという感じに近いのかもしれません。

 あまりにもささやかで、効率も悪いと思います。イラストだってブログだって、他にもっともっと魅力的なものを発信している方はたくさんいらっしゃいます。こうして記事を書いておいてなんですが、自分には発信力なんて全然ありませんし。
 だけど、“社会のすきまに生きる”自分だからこそ、できることがきっとある。そう考えています。

 私は、いわゆる「普通の人」にはなれませんでした。それは糖尿病以外にもさまざまな要因があってのことですが、日々の治療においても、みんなと同じようにがんばれないことがずっとずっとコンプレックスでした。
 創作活動をとおして、ようやく「みんなと同じじゃない、自分は自分のがんばり方を探そう」と思えるようになりましたが、未だに何かの拍子にスイッチが切れてひどく落ち込むことはよくあります。

 そういう人が本当はたくさんいると思うんです。今はSNSを見ればいくらでも「がんばっている人」の姿が目に入ります。それが生活のほんの一部分を切り取ったものだと分かっていても、治療がうまくいっている人と自分を比較して苦しくなってしまうのは決して珍しくないのではないかと。

 そこにただ、寄り添いたいと思ったんです。ねじろができるまでずっと、私には安心して弱音を吐ける人も場所もなかったから。偉そうに聞こえるかもしれないけれど、今度は自分が分け与える番になりたいんです。
 エゴですよ、誰かにとっては鬱陶しくて気持ち悪いかもしれませんよ、だけど私はやります。

 直接誰かを救うことはできません。でも、治療に疲れて息が詰まるような日々の中でたまたま私の絵や日記を見た人が、一瞬でも苦しみから逃避できたらいいなと、それだけを思っています。


 最後に宣伝です。
 先日、NHK熊本放送局の番組「くまもとの風」でねじろの密着ドキュメンタリーが放送されました。ありがたいことにお声がけをいただいて、副題のデザイン&イラストを担当しております。
 ねじろの魅力がぎゅっと詰まった、あたたかくて素敵な番組です。生きづらさを抱える人、創作が好きな人、いろんな人に観てほしいなと思います。
 7/28(金)の夜7:55まで配信中ですので、ご覧になれる方はぜひチェックしてみてください。

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