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<第25回>超一流の著者が超やさしく紐解く戦略論

『良い戦略、悪い戦略』 
リチャード・P・ルメルト著/村井章子訳(日本経済新聞出版)

❶イントロダクション~よい戦略vs.悪い戦略、その決定的な違いとは?

本書はいまから10年ほど前、2012年に発刊された英経済誌『エコノミスト』の、「マネジメント・コンセプトと企業プラクティスに対して最も影響力のある25人」にも選ばれた戦略論の世界的権威、リチャード・P・ルメルト氏の著作です。世界的な権威の著作と聞くと、難解な本をイメージしてしまうかもしれませんが、まったくそんなことはありません。読みやすいだけでなく、戦略的な対人術も、じつは学ぶことができます。メルカリCEO・山田進太郎氏も激賞する一冊です。

今回は本書の「序章」から、気になった部分を抜粋してみます。

”良い戦略は、目標やビジョンの実現以上のことを促す”
”良い戦略は、直面する難局から目をそらさず、それを乗り越えるためのアプローチを提示する”
”だが残念ながら、良い戦略はめったにない”
”悪い戦略は、厄介な問題を見ないで済ませ、選択と集中を無視し、相反する要求や利害を力ずくでまとめようとする”
”悪い戦略は、目標、努力、ビジョン、価値観といった曖昧な言葉を使い、明確な方向を示さない”
”本書の目的は、良い戦略と悪い戦略の驚くべきちがいを示し、良い戦略を立てる手助けをすることにある”

あらためまして、本書の著者は戦略論の大家「リチャード・P・ルメルト」。「世界で最も影響力のあるビジネス思想家」に毎年選出されるような大御所です。ルメルト氏は、「よい戦略は、『診断』『基本方針』『行動』という基本構造を持っている」といいますが、じつは、とてもシンプルな戦略思考法だと気づかされます。
早速、読み解いていきましょう!!

❷独断と偏見のお勧めポイント:悪い戦略の特徴&はびこる理由

「課題」発見が戦略立案の第一歩

前述したように、本書は「戦略論」大家が書いた名著です。メルカリCEOの山田氏だけでなく、たくさんの著名人がさまざまなコメントを寄せています。その一部をご紹介しましょう。

「必読書! 戦略に興味があるすべての人に本書を強力に推薦したい」
――W・チャンキム(ダイヤモンド社『ブルー・オーシャン戦略』著者)

「あなたの会社がライバルたちを圧倒する業績を挙げる準備ができていて、未来へ先んじる用意があるなら、本書を買わなくていい。もしもその逆なら、もしも少しでも不安が残るなら、いますぐに本書を開いたほうがいい!」――ゲイリー・ハメル(日本経済新聞出版『コア・コンピタンス経営』著者)

ここまで書かれてしまうと、もう読むしかないですよね(笑)。
本書は400ページを超えるボリュームですが、まったく飽きません。ほんとうに読みやすく、面白いですよ。

ここでは、本書で紹介されている「悪い戦略」の特徴と、そのはびこる理由を挙げさせていただきます。

「これは、当てはまるな……」
「やってしまいました……」

必ず気づきがあると思います。

【悪い戦略の特徴】
・空疎である
⇒華美な言葉や難解な表現を使い、高度な戦略構想を語っているように見えるが、実際は内容がない。
・重大な問題に取り組ませない
⇒ほんとうに重要な課題を見つけ出すための分析を避け、お手軽なテンプレートに沿って作成されており、重大な問題に取り組ませない
・目標を戦略と取り違えている
⇒困難を乗り越える道筋を示さず、たんに願望や希望的観測に基づく目標を示している。具体的な道筋を示していないため、戦略実現のための行動を促さない
・間違った戦略目標を掲げている
⇒戦略目標が重大な問題と無関係だったり、単純に実行不能だったりして、戦略を実現する手段として機能していない

【悪い戦略がはびこる理由】
・ほんとうの課題を見つけることの困難さ
⇒よい戦略は、本当に重要な課題を探り出すことが必須だが、その困難さは並大抵ではない
・選択することが困難
⇒よい戦略には、選択と集中が必須だが、選択することそのものが難しい。なぜなら、夢や希望を捨てるのは、心理的・政治的・組織運営上難しいからである

いかがでしょうか。
ほんとうの課題を見つけることや選択することの困難さから逃げていませんか? そもそも、戦略を立てることは簡単なことではないことを、あらためて認識したのではないでしょうか。

まず「課題」は何かを見つけること、ここから始めてみることが、戦略立案の第一歩といえるでしょう。

❸深掘りの勧め:よい戦略はどこが違うのか

シンプル・イズ・ザ・ベスト!?

では、お待ちかねの「よい戦略」は、どうやればつくることができるのでしょうか。

本書には、よい戦略の特徴や強みについても書かれていますので、その一部をご紹介しましょう。これだけでも読む価値がありますよ。

【よい戦略の特徴】
・根拠に立脚した基本構造である「カーネル(核)」を持っている
⇒「カーネルは、事実から診断を、診断から基本方針を、基本方針から行動を導き出す

【よい戦略の強み】
・テコ入れ効果
⇒リソースの集中によって大きな効果をもたらす
・近い目標
⇒近い目標を定めることで、曖昧な状況を整理して、何から手を付ければよいかが明確になる
・フォーカス
⇒適切なターゲットに一点集中し、自社の方針や行動を設計することによって、相互作用やオーバーラップ効果をもたらし、より大きな力を生み出す
・優位性
⇒自社と競合の非対称を明確にし(カーネルの診断に該当)、それらを自らの優位性に変える

いかがでしたか?  横文字も多いので、「うっ」となってしまった人もいるかもしれません。

しかし、これはなにも、目新しいものではありません。

簡単に言い直すと、よい戦略とは、とてもシンプルでわかりやすく、誰もが納得のできる根拠に基づくものではないかと思います。これも、本書で言いたかったことの一つではないでしょうか。

本書には、ほかにも具体的な事例を紹介しつつ、著者の的確な分析方法を読むことができたり、具体的な戦略の立て方の参考になる部分がたくさんあります。ほんとうにわかりやすく書かれていますので、興味のある人はぜひ読んでみてください!

◆今回の名言◆

「日々是新なれば、すなわち日々是好日』」
松下幸之助(1894~1989年/パナソニック創業者)

毎朝これを意識するだけで、毎日の行動が変わってきます。毎日が新しい一日!  頑張っていきましょう!

★おまけ★最近読んでいる本

『企画者は3度たくらむ』 
梅田悟司著(日本経済新聞出版)

ロングセラー『「言葉にできる」は武器になる。』(日本経済新聞出版)の著者である梅田氏の企画力の秘密が、この一冊でわかります。「理想と現実とのギャップが課題である」「問題を解消することではなく、課題を解決することが企画。問題はあくまでも結果でしかない」など、トップ・コピーライターならではの思考法は、目からウロコでした。お勧めです。




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