世が世ならSOS団JDC支部
僕たちがなんとかしなければ、確実に世界は崩壊するのです。どうも、神山です。
というわけで皆さん読みましたね「涼宮ハルヒの直観」!!!読んだでしょう!!!読んでない???読んでこい!!!今すぐにだ!!!
はい、というわけでネタバレしながら感想を書いていくってわけですよ。涼宮ハルヒシリーズへの重たい感情は、まぁ、また今度。好きな女性キャラは朝倉涼子、好きな男性キャラは古泉一樹。
『直観』は、画集に収録されていた短編:あてずっぽナンバーズ(初詣に行くわよ!)、雑誌収録の中編:七不思議オーバータイム(七不思議を見つけるわよ!)、書下ろしの長編:鶴屋さんの挑戦(読者として挑戦を受けるわよ!)の三本から成り立っており、それぞれが独立した話になっていながら、前2編が長編の前日譚として、前提条件の共有があざやかになされている。
僕は『あてずっぽナンバーズ』『七不思議オーバータイム』を既読ではあったものの、まさか連作短編としてこんな綺麗に構成されるとは思わなく…。新刊が短編集か、と正直ガッカリしていたところに投げられた『鶴屋さんの挑戦』にノックアウトされてしまった。
さて。今回の『涼宮ハルヒの直観』はミステリです。そう、これまで『閉ざされた孤島』『吹雪の山荘』などの王道ミステリ的展開をやってきたが、ミステリパロディの風味が強かった涼宮ハルヒシリーズが、真正面からミステリをブチかましました。正直夏に出てたらミステリランキングに入れざるを得なかった気がする…。本当に?ハルヒって神みたいなものでしょ?そんなのがいるミステリって大丈夫なの?少しでも涼宮ハルヒシリーズを知っていればそう思うでしょう。実際僕もそう思っていました。涼宮ハルヒはいわば神、物語の方向性を決定づけるデウス・エクス・マキナ。あまりに探偵に向かない属性持ち。けれどそれをやってのけてしまったのが谷川流だったってワケです。
ここからネタバレをじわじわしていきますので、マジで本編を読めよな。
『あてずっぽナンバーズ』はみんなで初詣に来た中で古泉が呟いた意味深な数列が何か?をキョンが考えながら初詣をして、ハルヒとひと悶着あって…。みたいな話。ここで『鶴屋さんの挑戦』に続く「鶴屋さんはいい感じにお金持ち」という話をしながら、キョンに出された問題は読者に真相が明かされない、というミステリ作品の某作や某作みたいなことをされます(ググればすぐわかる答えとはいえ、悔しいじゃないですかそうするの)。
『七不思議オーバータイム』は放課後、ハルヒが北高の七不思議を探そうって言い出す予兆があったため、それを食い止めるためにハルヒ抜きのみんなで七不思議をでっち上げるという物語。『鶴屋さんの挑戦』では重要な役割を担っている新キャラ・ミス研所属のX(七不思議~では名前が明らかにされない)が登場します。これまで散々ハルヒに振り回されてきたSOS団がハルヒの先回りに成功し、初めて超常現象の阻止に成功するという、これまでのシリーズから考えると異色な話だったな、と思います。これまでハルヒが問題発生を担い、その解決をSOS団各位がやっていた、ということの反転構造、探偵が犯人に仕掛ける「逆トリック」のようでしたね。個人的にはアニメオリジナルストーリー・サムデイインザレイン(キョン不在の物語)の対置として、書かれたのか・・・?とか考えてましたね。ハルヒ不在の短編は他にもあったと思うけど。
ここまで、前述したとおり2作ともそれぞれ単作で読んでおり、これまでの傾向からすると少々地味だなぁとか思ってはいたにせよ(時もかけないし、宇宙とのコンタクトもない!)、まさかこれが狂言回し・古泉一樹のターンになるなんて誰が想像できます!?古泉主役スピンオフはまだ序盤から泣いて読めてないのに!!!ありがとう谷川流!!
『鶴屋さんの挑戦』序盤から飛ばす飛ばす。語り手のキョンを置いてきぼりにして古泉・長門・Tが延々ミステリ談義。めちゃくちゃ具体的な作家や作品の名前を出し、オールタイムベストミステリは何かとか、本格ミステリとは何かとか、読者への挑戦状は何かとか、このまま延々やっててくれ、これをAudibleにしろ、という感じでした(読者への挑戦状の話は、11月半ばに参加した読書会で僕が発言したりしていたこともあり、ハチャメチャタイムリーだった)。これが与太話と思いきや、ちゃんと本編に絡んでくるので恐るべき谷川流。裏表紙のあらすじにある通り(というかこの長編のタイトルがそうであるように)、今回は遠出した鶴屋さんから届く思い出話メールの謎を解け、というもの。鶴屋さんから届く挑戦状も本書と同じく三編構成となっており、メタメタに狙ってるのでは(怖い)と思いながら読んでました。
第一の旅・第二の旅・第三の旅、と重ねるごとに複雑化する謎を、珍しくSOS団が解いていく構成。しかし物語はそんなものじゃ終わらなかった。鶴屋さんから届く挑戦状と、今部室で行われている謎解き、それら自体がさらに大きなひとつの謎となっており、さらにそれをSOS団が解くという構造に発展する。その謎が解かれた後、エピローグでは後期クイーン問題と涼宮ハルヒの存在の話がパラレルに繰り広げられる…。
これまでの「超SF」に近い構造で話を進めていた涼宮ハルヒシリーズが「超ミステリ」としての側面をひっさげて帰ってくるなんて…。今回は完全に古泉一樹のターンでした、SF解説とミステリ解説キャラではありますが、ここまで前面に出てきてくれるなんてね…。ありがとうございます…。
……作中で解説されていない謎もあるのでは、と疑心暗鬼な毎日を過ごしています。だって「鶴屋さんの挑戦」が3部構成であるように、「涼宮ハルヒの直観」も3部構成なんですよ、この本一冊がさらに別の可能性を内包しているかもしれないじゃないですか……。
以上、ド真ん中豪速球に見せかけた変化球的本格ミステリ「涼宮ハルヒの直観」は最高でしたね。来年度のミステリランキング、ランクインしなかったら暴動ですよ暴動。
今回は感想記事でした。ほんとうはいつか考察とか批評的な記事を書きたいですね。ライティングの訓練が必要だな…。
ではでは。
最近読んだ新本格ミステリでよかったのはこれ、蔓葉さんの解説もGOODです。おすすめ。
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