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毎日の詩、抜粋2024年10月

2024.10.1『見つけられない』
失われたことなどないものを見つめている
それが人間だと気づくのが遅すぎた
実はそこに既にあるなんてことを
誰も言わなかったのだ
たとえ口にしてもすぐに霧消してしまうことなど
それでもそばで語らうあなたの声は美しい

2024.10.2『世界を取り戻す』
終わってしまえば何もないことを
体が過剰に恐れているということ
この言葉がもはや何の効力も発揮することなく
ただ苦しみだけが宙へ浮いている
そして何事もなかったかのように
世界をただ取り戻していく
この変化を


2024.10.7『見上げた光』
暗さは共有した方が良いだろう
場所のもつ負の力も共に手伝って落ちてゆこう
落下する速度は不思議とゆっくりだ
地底に叩きつけられることなどなく
奈落の底から上を見上げれば
そこには光しかない、それが希望

2024.10.10『対話を』
それは間違いではないが確実になにかを落としめる
という行為は結局その内的態度が始まりである、と
少なからず自分の弱さを自覚して、他者の弱さを思え
綻びが広がっていくなかに手をふれるやわらかな光

2024.10.14『進みつづける』
開かれた先には無数の輝きを
しかしそれは光がなければわからないこと
光を当てよ
そうすればその美しい姿を見ることができるのだから
さらに見るには技術だって必要なのだ
この肉眼を越えることでさらなる輝きを

2024.10.18『人に依存する』
限界の一歩手前を限界と呼ぼう
この身体の有限性の一つ先へ向かうことはしない
しかしただこの身体を支えているのは人、
限りなくやさしい人
たくさんの人々の顔を思い出す
そして依存している、それでいい

2024.10.21『魔術的はじまり』
少しずつ不思議なメロディが近づいてくる
もうこの日は避けられないだろう
いったいなぜここに魅かれていくのかと
魔法は私の内にある、この地上は内面世界
だからいつでもこの魔術者から始まる世界を
楽しむことにしよう

2024.10.25『健やかに』
この心に健やかな火を灯すのは睡眠
私の魂を異界へと預けるための儀は
夜にこそ行われるもの
そしてまた新たな一日は成長のためにやってくる
ただそのためだけに
進まない一日など存在しない
日々が歩むために

2024.10.26『人間と暮らすとは』
人間が暮らす世界に住む生きものは
その複雑などうしようもなさとともに
生きていかざるを得ないのだ
この地上に敷かれた魔法陣には
命すらも制御する切ない意味合いが
含まれていたなんてと人間の有り様を思う

2024.10.29『最中の祈り』
身体の不調が不幸を上回らないで
これは一時的な苦しみとして過ぎ去ってほしいと願って
私たちはこの嵐を悲しみを受け止めながら見届けるつもり
ああ、大切なものももうすぐ吹き飛ばされてしまうのかもしれない

2024.10.31『気枯れと闇を』
美しくない、こんなのは、と文句を並べて
それを食している、自分のむなしさよ
汚れがその原因なんだ
だから心の隅にある暗がりのなかで
闇の中は光でいっぱいと叫んでいる
そんな複雑で踊る気持ち

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