毎日の詩、抜粋 2024年8月
2024.8.1
『弱さを』
人の弱さを知らない人間ではいけない
優しさを失うなかれ
人間の身体はとてもやわらかくもろいのだ
そしてしなやかな力を放つ
まるで風になびく柳の木々のようにして
音にして受け流すこの風景のように
在りつづけて
2024.8.2
『海の呼び声』
美しい魚が夢に出てくる
澄んだ海を優雅に泳ぐさまが
まるでこの地べたには
不自由がへばりついているかのように
そして海を見つめる
波が不規則なリズムで我々に
こちらに来いと呼んでいるような気がする
2024.8.5
『悲しみの器』
学びを深めるうちに
一つの到達点へ
そしてまた次の場所へと
この心が悲しみのなかで掴んだもの
それも一人の部屋のなかで
安易に消えてしまわぬように
そっと書き留める
失った地上の楽園は
自らの手でつくるのだ
2024.8.6
『ゆっくりと注ごう』
もし愛が気づけばそこにあるものならば
この世界には愛が溢れているだろう
いくつもの愛を掬って愛すべき君たちの頭の上から
ゆっくりと注ごう
顔に少しずつ滴る
透明で少し粘稠の液体は
やがて肌全体を温めて安心を与えるだろう
2024.8.8
『怒涛の』
いろんなものを一気につめこまれた私たちは
一つ一つ確実に消化していった
その過程で起こる喜びも悲しみも混乱も含めて
生きていた、少しだけ
仰ぎ見る時間が出来たとき、
空は澄んでいた
果てしなく
切なさが浮かんだ
2024.8.11
『浄化とエナジー』 坂口恭平さんのLiveを見て
そばにいた、存在の神秘は
常にどこに、
ここに、
そして内に、
だから口ずさんだフレーズと言葉が
泡のように溶けていく様のはかなさのなかに
ただやわらかな感触だけを残した掌は
歌声とともに人々の女神
心に希望が一つ浮かんで
2024.8.18
『訪れる幸福』
想いが現実となる過程はときに
急速に訪れるものだと誰もが知っているのに、
心身は追いつかないもの
だから辿ってきた道を
何度も振り返っては
過去を確かめる、
もう後戻りはできないのに
ーーーーー
やがて目の前の道が少しずつ華やかに
はじめて
振り返る必要がなくなる
2024.8.21
『地下の蟲』
平和な日々はずっと続かない
いつもの間にか音も立てずに
少しずつ崩れはじめる地面の上に
気づかぬまま過ごしているだけだとは
ーーーーー
地面の下に住んでいる蟲
毒を帯びた蟲
殺される前に射止めたい主
これは私の世界
だけれども私たちの世界
静かに備えよ
2024.8.22
『聖なる旅』
ああ、何ものも失われない自由よ
ああ、ここから飛び立つ星よ
今も我々の影を解き放ち、
静かに、そして果敢に世界へと向かえ
祈りの旅は終わらない
悲しく聞こえる歌声は
今もあなたの胸へも木霊(こだま)するだろう
2024.8.28
『白黒の世界を』
傍に黒は影
消えない光があるからわかること
苦しみもいつも隣りに
白い十字架は遠い過去から
ずっと何かを語ってきたのだ
空が高い
目の前には結晶が散らばって舞い上がる光景
そして黒い影は
一人で勝手に動き出す
2024.8.31
『湖を前にして』
空中に浮かんでいる雲の下に広がる湖
眼前に広がる宇宙の一景色に
重ねる過去の記憶が、熱を帯びてくる
巡ってゆく山々の地熱は、
身体をもゆっくりと温めてゆく
突然降り出す雷雨に翻弄などされない
濡れたままでも佇む
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