カシミールティー/ハロウィーンパーティー/アーンドラ家庭料理会:カレー哲学の視点(10/24〜10/30)
「音楽をやる」とか「原稿をやる」というような表現のアナロジーで、「カレーをやる」という言い方をすることがある。え、あるよね?
使用例としては「一日のうち、どのくらいカレーやってんの?」とか「カレーやり始めていま何年くらい?」というように使う。
カレーは食べるもの、作るものでもあるけど、もう少し主体性を持たせて考えてみる。カレーを表現活動の一種であるととらえると、カレーについて考えることやカレーについて書くこと、カレーについて語ることや少しでもカレーに関係のある世界に触れることはすべて「カレーをやる」ことになる。
カレーだけやって生きていけたらいいけど、なかなかそうもいかないですね。カレーが逃げ口として、純粋な「遊び」として機能しているからこそ生きていけるのかもしれないけど。
何者かになるために最短距離で逆算してそこを目指す、一切のムダがない生き方がもてはやされているように思えるけど、本当にそんなことが可能なのだろうか。
少なくとも自分は夢中になれるようなことが偶然見つかって、これからやりたいことも無限に思い浮かぶので幸せだとは思う。とにかくなんでも実際にやってみる姿勢って大事で、無駄だと思えることが後々どこかで役に立つことがあるし点と点が結びつく瞬間というのがやってくる。だから自分はムダや冗長、時間の浪費を一生懸命突き進めたい。
面白そうなことには片っ端から頭突っ込んで、何をやっている人なのかよくわからないままフラフラ生きていきたい。
今週はあまり記事を更新できなかったので部活動レポートを中心にいくつか書きます。
カシミールティーについて
伊勢崎のハラームカリーに行って、パキスタンのカラチぶりにカシミールティーを飲んだ。
カシミールティーは、パキスタンで冬になるとよく飲まれるピンク色のチャイの一種。本当はNoon Chaiと言って、砂糖ではなく塩だけを入れて飲む。チベットの方には塩バター茶があったりするけど、寒いところだとしょっぱくて濃厚な飲み物が必要になるのだろうか。
紅茶ではなく緑茶を使い、重曹でpHを変化させて赤くしてから牛乳を加えるのでピンク色になる。ここで飲んだのはミルクティーに色付きのミックスを振ったようなものだったけどナッツが香って美味しかった。
よくある話だがカシミールの人はカシミールティーとは呼ばず、カシミールティーというのはカシミールから離れたところでの呼び方らしい。普通のチャイに飽きたら作ってみてはいかがだろうか。
マサラ部室ハロウィーン
10月はなんやかんや合って無理だったのでノーテーマだったので、ハロウィーンだしイドゥリを蒸しまくるイベントを開催した。
イドゥリは生き物。そろそろ自然に発酵する気温には到達しなくなってしまったため、浸水した豆と米をウェットグラインダーでよくグラインドしたあと、ボウルを低温調理器で温めるような形で発酵させている。今回は寒くて微妙に発酵度合いが弱くて重くなってしまった。
イドゥリの良さは自分で作るようになってから初めて知った。
昔インドで食べていたときはやたら酸っぱい物が多く、蒸したてで食べられる機会も少なかったのでそんなに好きではなかった(チェンナイのRayer’s Messでは感動したけど)のだが、イドゥリブリーダーになってからがイドゥリの本領だ。
そんなに複雑なことをしているわけではないのだがプロセスに時間がかかる上、条件は意外とシビアだったりする。温度設定をして生地がよく温まるようにセッティングをして放置するのは、まるで何かの卵を孵すかのようだ。細かいことを言えば、生地をかき混ぜる人の手によって発酵具合や味が少し変わったりもするらしい。かきまぜる人だけを変えたときにどのくらい差分が出るか試してみたい。
イドゥリには長ネギのチャトニ、牡蠣とデーツのチャトニ、黒ごまのチャトニ、ポディ、ギーなどを付け合わせで用意しました。
カレーはオディシャのマトンカレー、オディシャの豆野菜カレーダールマ、牡蠣のカレー、ビーフレザラなど。今回は原理主義者のマサラ部室には珍しく、日本の秋の食材をたくさん使った和印折衷なプレートとなった。
アーンドラ家庭料理パーティー
以前、アーンドラ・ダイニング社長のParamataさんにインタビューをさせてもらったことがあった。
一番好きな料理は何ですか?と伺ったところ、社長さんは奥様の作るマトンカレーを必ず毎週日曜に食べ、それが大好きだと言っていた。
その話を聴き、是非食べさせてくださいとしつこくお願いし続けたらありがたいことにスペシャルターリーの会をセッティングいただけました。場所はアーンドラカフェで、こちらは社長さんの従兄弟さんが経営されている店舗になるそう。
今回の料理はすべて社長さんの奥様Kavithaさんが作られていた。すごい。以前は漠然とレストランの料理って家庭の上位互換なのかと思っていたけどやはりものとして全くの別物だと実感した。全体的にレストランでは食べられないような仕上がりのものが多く、よい食体験だった。
今回の料理は、すべてご家族の出身地、アーンドラプラデシュ州カキナダの料理だという。
豪華ラインナップ!
お店につくとテーブルの上がバナナリーフで埋め尽くされており、順番に料理をサーブしてくれた。
先日自分たちでイベントをやっていたときはサーブする側だったので、サーブしてもらうことのありがたみが身にしみてよくわかった。
特にスパイスで香りをつけたBagara Riceが美味しくて、プラオでもビリヤニでもないお米の喜びが畳み掛けてきましたね。
なすのカレー、gutti vankayaはそのままの意味だと「まるごとなす」という意味らしい。まるごとのナスに十字に切れ目を入れ、まるごと柔らかく煮込んだピーナッツベースのカレー。以前レシピ書いたけどこれはまるごとじゃないのでvankaya kuraとしている。
これが熱々でほんとにおいしくて、家庭ではなかなか作らないだろうけど社長さんちの子供になりたいと思いましたね。
ちょうどこの日から奥様が作られた新しい商品、アーンドラマサラとチキンピックルが新発売となり、そういう意味でもおめでたい日となりました。
ありがたや。
オディシャ料理を作る
11月からはオディシャ料理を作る。手始めにいくつかオディシャ料理を作ってみた。
概要記事は別途書きますが、11月からのゼミキックオフMTGとしてオディシャ有識者にお話しを聞く会を実施しました。
日本だと本当にマイナーでオディシャってどこ?状態だと思いますが、西ベンガルとアーンドラプラデシュ州の間に位置します。ベンガル料理は最近日本でも少し流行っていますが、その源流のひとつとなったのがオディシャ料理です。
オディシャ料理のざっくりとした特徴ですが、だいたいこのくらい覚えておけばテストも乗り切れると思います。
お米大好き
マスタード大好きでオイルもペーストも使う。
パウダースパイスの使用量は少なめ
甘い味つけが多い
寺院のプラサード(神への捧げもの)はピュアベジとなりにんにくや根菜などは不使用。また、唐辛子やトマト、じゃがいもなど新大陸のものは使わない。
沿岸部では魚介類をたくさん食べる。
パンチフォロンと同じだが、パンチャフタナという名前になる。
ピッタやスイーツ類が豊富にある。オディシャ発のスイーツも多い。
今週はこんな感じで。今年もあと2ヶ月ですが、カレーにコミットしていきましょう。
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