2022年時事予想問題 第3位 ヤングケアラー(2023年1月追記しました)
(0) はじめに
「各社重大ニュースに載っていない(扱いが小さい)が、出そうな問題」第3位は、「ヤングケアラー」です。2018年に中公新書で取りあげられ、コロナ禍で一気に社会問題となりました。末尾の予想問題は有料ですが、本文は無料で読めます。
更新履歴
2023年1月13日 こども家庭庁についての説明を追加しました。またこれに合わせ、予想問題を追加しました。
(1) ヤングケアラーとは
本来なら大人がやるべき家族の世話をしている、18歳未満の子どもを指します。厚生労働省の指針によるヤングケアラーは、次の通りになります。
・高齢の家族や、障がいを持った家族の介護をしている
・大人の代わりに、料理や洗濯などの家事をしている
・アルコール、薬物、ギャンブル依存の家族の対応をしている など
詳しくは厚労省のサイトをご覧ください(トップ画像の出典もここです)。https://www.mhlw.go.jp/stf/young-carer.html
埼玉県の調査によると、埼玉県の高校生のうち、約4%、25人に1人がヤングケアラーに相当します。じわじわと広がってきている問題だといえるでしょう。
(2) ヤングケアラーが抱える問題
ヤングケアラーは家事や介護に時間を割かなければならないため、学校を休みがちになったり、勉強に時間を割くことができなかったりします。部活ができなかったり、友だちと遊ぶ時間が取れなかったりし、孤立しがちです。
また進学をあきらめざるを得ない場合もあります。そうなると高い賃金の職場に就職することは難しくなります。
ヤングケアラーであることは、子どもが当然保証されるべき「学ぶ権利」「健康で文化的な生活を営む権利」が保証されていない状態であるといえます。そして貧困につながりやすいのです。
(3) ヤングケアラーになる原因
ヤングケアラーになる原因は、まずひとり親であることが挙げられます。大人の人手が足りないために、ヤングケアラーにならざるを得ないのです。
次に、貧困であり、有料のサービスに頼ることができないことが挙げられます。これは一番目の理由と密接に関係があります。
最後に、支援の仕組みはすでにありますが、ヤングケアラーが支援の情報にアクセスできないことと、学校が支援情報を教えられるかどうかわからないことです(厚労省と文科省は連携して対策を取っていますが)。ヤングケアラーは、支援の仕組みからこぼれ落ちてしまいやすいのです。
(4) 対策
ヤングケアラーの問題は深刻です。子どもの未来が閉ざされてしまうのですから。そこで最初に挙げた厚労省のサイトでは、国による支援の窓口、民間による支援の窓口が、まとめて掲載されています。このページにたどり着けさえすれば、支援を受けることはできるでしょう。
地方自治体による対策も進んでいます。例えば埼玉県では、小学生、中学生、高校生向けのパンフレットを配布しています。
ただ、まだまだ「ヤングケアラー」が存在すること自体があまり知られていませんし、国が支援を行なっていること自体も知られていません。ですからまずは社会全体で、ヤングケアラーが存在すること、彼らを支援する必要があることを「知る」ことが大切でしょう。
なにより、本人が自分の状況を理解していないと、支援につなげることもできません。そのためにはやはり、社会全体が、ヤングケアラーの存在や問題を「知る」ことが必要ですし、ヤングケアラーの周囲の人が、ヤングケアラーが支援を受けられるように行動することが大切なのだと思います。
ヤングケアラーについては、次の本が役立ちます。まずはヤングケアラーの第一人者、成蹊大学の澁谷智子先生の本です。出版は2018年です! 2018年にすでにヤングケアラーの問題が認識されていたのですが、世の中に広く知られるようになったのは2022年のことなのです。
この本も重要です。新聞社はこうした社会問題の取材には、強みを持って
います。
ヤングケアラーが、適切な支援を、十分に受けられる世の中にしていきたいものです。そのためにはまず「知ること」から始めるべきでしょう。
(5) こども家庭庁について
ヤングケアラーだけでなく、現在は子どもをめぐって様々な問題があります。いじめ、不登校、虐待・ネグレクト、待機児童、貧困……など。ですがこれまでは、学校関係は文科省、待機児童、学童保育、ヤングケアラーは厚労省、貧困対策は内閣府、少年犯罪や性搾取は警察庁などと、担当する省庁が分かれていました。いわゆる「縦割り行政」ですね。そのため子どもの問題に対する対策が不十分と考えられてきました。
そこで2021年、菅政権の時に「こども庁」を作ることが提言されます。2021年12月、自民党や公明党の「子どもの成育には家庭の役割も重要」という意見によって、名前が「こども家庭庁」と変更されます。2022年6月にこども家庭庁を設置する法案が成立し、2023年4月1日にこども家庭庁が発足することが決まりました。NHKの記事がわかりやすいと思います。内閣府のHPには、子ども向けのPDFもあります。
こども家庭庁は内閣府の下に置かれます。こども家庭庁長官が置かれ、内閣府特命大臣が置かれることになっています。大臣は他の省庁に対して「勧告」することができます。「企画立案・総合調整部門」「成育部門」「支援部門」が置かれ、子ども関係の政策をまとめて立案・実行できるようになっています。例えばいじめ問題は文科省の担当でしたが、これからは警察庁や厚労省の担当だった部分をまとめて対策が取れるのです。同様にヤングケアラーは、学校側の対策が遅れていることが指摘されていましたが、これからは文科省、厚労省が担当していた部分をまとめて対応が取れます。日本は少子化対策、子どもの問題に対する対策が立ち後れていましたが、ようやく専門の政府機関ができたのです。そしてようやく省庁の枠を越えて、子どものことを総合的に対応できる機関ができたのです。
ただ、「こども家庭庁」という名前になったことには、統一教会の意向が反映されているのでは、という報道がありました。虐待を受けている子どもにとっては、家庭は地獄だったりします。そうした虐待サバイバーの声もあり、「こども庁」という名前で議論が進んでいたのです。ところが見てきたとおり、名前に「家庭」が入ることになりました。統一教会系の団体である国際勝共連合のホームページ(2021年12月21日)には、「心有る議員・有識者の尽力によって、子ども政策を一元化するために新しく作る組織の名称が「こども庁」から「こども家庭庁」になりました。」とあります。政府は公式に統一教会の影響を否定しています。経緯はWikipediaにもありますので、お読みの皆さんのご判断にお任せしたいと思います。
(6) 受験では
受験では、子どもが持っている基本的人権や、保護者が果たすべき「教育を受けさせる義務」とからめて出題されるでしょう。また貧困や社会的格差の表れとして出題されることも考えられます。これまで、社会的格差を多く扱ってきた学校は、出題する可能性が高いでしょう。過去問をよく確認しておくべきだと思います。
予想問題
本来なら大人がやるべき、家族の介護・世話や家事をしている18歳未満の子どものことを、「ヤングケアラー」と呼びます。
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