見出し画像

2022年時事予想問題 第4位 生理の貧困/フェムテック

(0) はじめに

昨年も「各社重大ニュースに載っていない(扱いが小さい)が、出そうな問題」を挙げてみましたが、今年もやります。末尾の予想問題は有料ですが、他は無料で読めます。まずは第4位からです。(タイトル画像の出典:https://readyfor.jp/projects/period-poverty_nagasaki

(1)生理の貧困

①「生理の貧困」とは

・経済的貧困によって、生理用品を買えない女性がいる
・親の貧困、親による虐待やネグレクト、男親に相談できない、親の知識不足などによって、生理のケアがされない女子児童がいる

ことを指します。
 この問題はコロナ禍で知られるようになりました。コロナ禍による収入減少の影響を強く受けたのは、非正規雇用の女性でした。「社会の変動によって悪影響を受けるのは女性の方が多い」ことが明らかになったのです。
 また、この問題は貧困が主原因なのは間違いありませんが、それ以外の問題も含んでいます。親による虐待やネグレクト、男性が生理についての知識を持たないこと、男性の無理解も原因となっています。
 そして生理による女性の負担の重さもクローズアップされることになりました。一般社団法人インテグリティによると、女性は「一生で約2400日、通算約7年間、450回以上の生理」を経験します。そして女性にとって生理用品は必需品(痛み止めや下着類、ピルなどの生理対策用品も含む)なのですが、自己負担しなければなりませんでした。普通に暮らしていても、男性より女性の方が負担が重いのです。
 このように、「生理の貧困」は、単に女性の経済的問題だけに留まりません。児童福祉の問題、性に関する教育の問題、そして社会的公平・公正の問題とも関わってくるのです。

②対策

・学校のトイレに生理用品を備え付ける
・行政が生理用品を配布する
・行政や学校に相談窓口を設ける

 2021年から、こうした対策が急速に進みました。例えば東京都は、すべての都立学校で、トイレで生理用品を自由に入手できるようにしました。またコロナ対策として、行政が生理用品を配る例も広まりました。女性たちの危機が明るみに出て、声を上げる人がいたからこそ、これだけ急速に対応が進んだといえるでしょう。
 ただ自治体によって対応に大きな差があるという問題もあります。内閣府男女共同参画社会局の2021年7月の調査によると、広島県では79%の自治体が対策を取っているのに対し、鹿児島県ではわずか2%しかありません。

出典:https://www.gender.go.jp/policy/sokushin/kenko/periodpoverty/index.html

 また、国による対策もまだ及ばないところがあります。フランス、ニュージーランド、韓国では、国の予算で学校や公共機関で生理用品を無料配布することを決めました。また生理用品は生活必需品のため、税率を下げている国もあります。ですが日本ではそこまでは進んでいません。
 生理用品の配布は一度で終わりにするのではなく、継続していく必要があります。また国が取り組む必要もあります。政策を決めていくのは我々国民なので、まず生理に対するタブー意識や無理解(性教育に対するタブー意識も含みます)をなくしていく必要があるでしょう。そしてその上で、国民がこの問題の重要性を知り、考える必要があるでしょう。

(2)フェムテック

 「生理の貧困」と密接な関係を持つのが「フェムテック」です。「フェム」は女性で「テック」は技術です。ネットやスマホなどのデジタルテクノロジーを使って、それまで社会的に「みえないもの」とされてきた、生理やそれに伴う女性の心身の問題を、解消・軽減しようとするものです。(シリコンカップなどの新しい生理用品や、快適性の高い生理用ショーツなども含むことがありますが、ここではデジタル技術を使ったものを述べていきます)。これには大きく二つの方向性があります。

①女性の生理やPMS(月経前症候群)などによる心身の不調を、テクノロジーの力で低減する。

・月経管理アプリ 「ルナルナ」など。生理の始まりを入力すると、終わりの時期や次の生理の時期を教えてくれるアプリです。データが記録されますので、そのデータを多様に利用することができます。
・アプリと連動して、サブスクリプション形式で生理用品やケア用品を送ってくれるサービスは、すでに始まっています。
・管理アプリは登録を忘れがちです。そこで「生理用品を箱から出したら自動的に記録してくれる」機械の開発が始まっています。
 データ化によって、女性が自分で健康管理を行なうことが楽になります。またネットを使うことで、生理のケアが楽になります。

②今まで可視化されていなかったデータを活用し、社会の構造を変える。

・病気の人のデータは今まで蓄積されてきましたが、健康な女性のデータは蓄積されてきませんでした。ですがアプリは、健康な女性のデータも蓄積できます。このデータが明らかになることで、今まで健康な女性がどのような悩みを抱えていたか、社会や職場においてどんな苦しさを抱えてきたかが明らかにできます。
・現状の社会はまだ男性向けに作られています。また男性は女性の生理についてまだまだ無知です。ですがこのデータが明らかになれば、男性も女性の悩みや苦しみを(データとしてではありますが)知ることができます。それを通じて、女性も仕事しやすい社会を作っていくことができます。社会の仕組みそのものを変えていくことができるのです。
 このようにフェムテックは、女性の苦しみを緩和するだけでなく、男性中心に作られてきた社会の仕組みを変えていく可能性を持っています。これまで男女はお世辞にも平等とはいえませんでしたが、フェムテックによって、社会的平等に近づくことができるのです。

(3)受験では

 男子校は無縁、と思われるかもしれません。ですが立教池袋で積極的な性教育が行なわれているように、むしろ男子校こそ、女性の動きに敏感になる必要があります。もちろん女子校でも共学校でも出る可能性があります。
 気をつけなければならないのは、「女性だけ優遇されるのはずるい」と考える男子が出てきそうなところです。その場合は、「もともと女性は普通に暮らしていてもお金がかかる」「現在の世の中は男性中心で、女性のことを考えて作られていない」ことを説明するとよいでしょう。まずはきちんと知識を身につけることも重要です。
 男子には、入門書から始めるのがよいでしょう。

フェムテックについて。子ども向けの雑誌に載っているところが重要なポイントです。

予想問題

①日本では、生理用品は税率10%で売られています。食料品には「低減税率」という制度があり、税率は8%す。一方イギリスではEU離脱をきっかけに、生理用品にかかる税率を5%から0%に引き下げました。

ここから先は

593字

¥ 300

期間限定!PayPayで支払うと抽選でお得

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?