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2025年受験用重大ニュース 8社の比較
はじめに
いよいよ2025年受験も大詰めとなり、社会では時事問題対策をとるべき時期が来ました。
大手塾では重大ニュースのテキストが配られ、それを使うのが基本です。ですが他社のテキストが気になったりしないでしょうか。また塾に通わないで中学受験を目指している方は、どのテキストを選ぶべきか、迷うこともあるのではないでしょうか。そこで例年通り、各社のテキストを比較してみました。
(更新履歴 2025年1月16日 毎日新聞「Newsがわかる」を追加しました。)
学研「2025年受験用十大ニュース 時事問題に強くなる本」
①基本データ
2024年10月10日発売
総ページ数 146
税込み1760円
A4変形(上下が短くほぼ正方形)
項目数 17(うち理科3)
問題ページ数 50(35.2%)(うち理科)
②基本的な構成
最初のページに、「塾の先生が考える重要度」が載っています。
①政治(3項目)、②経済(3項目)、③国際(4項目)、④文化・社会(4項目)、⑤理科・環境(3項目)の5章構成です。
各章は、解説2ページ+問題2ページの項目に分かれています。問題は一問一答が1ページ、少し高度な問題が1ページです。全部で17項目あります。
この他用語集、総合問題があります。昨年までは星占いがありましたが、今年はなくなりました。
各項目はルビが多く、フルカラーです。
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③問題レベル
3(5段階)
④利点
・記事ページがフルカラーで情報量が多く、内容が理解しやすいです。
・問題ページの割合が多く、多くの問題に取り組むことができます。
⑤問題点
・どんな項目も4Pで、重要な割に説明が足りない項目があります。
・本の最初に重要性のランキングがありますが、本文はテーマごとに並んでいるため、重要度の順位がわかりにくくなっています。
・ルビが多いため、大人の目には読みづらく感じます。
⑥特徴と使い方
・カラーページが中心です。カラーで学びたいという受験生にはこの本がよいでしょう。
・問題量が多く、問題をたくさん解いて対応したい、という人に向いています。さすがに記述ばかりの最上位校はちょっと厳しいですが、それ以外の学校には十分に対応できます。
四谷大塚出版「四谷大塚が選んだ重大ニュース ニュース最前線2024」
①データ
2024年10月12日発売
総ページ数 108
税込み1760円
A4
項目数 10(うち理科1)
問題ページ数 54(50%)(うち理科_)
付録 暗記カード8ページ64枚
②内容
全10項目で、重要な順に並んでいます。最後の1項目は理科系です。
各項目は基本的に解説2ページ+問題2ページの4ページ構成です。
毎年恒例「あなたが生まれてから」(受験生が生まれてから12年分の出来事を記す)は今年もあります。これは他の本には見られません。
また他の本と違い、記述問題が独立しています。
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③問題レベル
1
④利点
・情報の密度が低く、ページ数も少ないため、短時間で情報をつかむことができます。
・問題ページ数の割合が最も高いです。また記述問題が独立しているのもよい点です。
⑤問題点
・「短時間で情報をつかむ」ための本なので、情報の絶対量は他社に見劣りします。
⑥特徴・使い方
・情報量の少なさは欠点ではありますが、利点にもなります。短時間で学ばなければならないという人には、この本が向いています。
・時事問題の割合がそれほど多くない学校を狙っている方にも向いています。
朝日新聞出版「2025年入試用中学受験時事ニュース完全版」
①データ
2024年10月18日発売
総ページ数 130
税込み1870円
A4
項目数 15
問題ページ数 16(12.3%)
②内容
この本は他社と違い、「朝日新聞のジュニアエラに載った項目のうち、受験で出そうなものをまとめた」本です(毎日新聞が同コンセプトです)。そのため内容も使い方も他社とは違います。
まず、「過去1年の重大ニュース」10項目が挙げられています。次に「5大テーマを深掘り」があります。これらは「ジュニアエラ」記事の再掲です。
巻末に「ニュースカレンダー」があり、各月4ページで起こった出来事を紹介しています。
問題は「この学校でこんなふうに出題された」と紹介されます。昨年は9ページでしたが、今年は16ページと増えています。問題を解いて学ぶのではなく、記事を読んで学ぶタイプの本です。
ほとんどフルカラーで、総ルビです。
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③問題レベル
オリジナル問題はありません。
④良い点
・情報ページがフルカラーです。ジャーナリストの解説やマンガによる解説があり、子どもが一人で読んでも理解しやすいようになっています。
・「5大テーマを深掘り」は毎年ピントがずれていましたが、今年は「2024年問題」「能登」「お金」「ジェンダー」「オリパラ」と、出題可能性が高いテーマを選んでいます。
・ニュースカレンダーの情報量が多く、一年間のニュースを振り返ることができます。
⑤問題点
・背景が白でないページがあり、これは正直見づらいです。タイトルのフォントに凝った結果、読みづらくなっているものもあります。
・他の本とコンセプトが違うので仕方ないですが、問題ページが少ないのはやはり物足りないです。
⑥特徴・使い方
・他社が「受験のために時事問題を学ぶ」ことに重点を置いているのに対し、朝日と毎日は、「世の中で起こっている出来事を理解する」ことに重点を置いています。急いで学ばなくてはいけない人にはあまり向いていません。
・一方比較的時間が取れる、現5、4年生には向いています。総ルビなので、助けを借りなくても読み進めることができるでしょう。
・保護者と一緒に読むのもよいと思います。
読売新聞東京本社「入試に勝つ新聞記事2025」
①データ
2024年10月30日発売
総ページ数 124ページ
税込み1595円
A4
項目数 24(うち理科6)
暗記カード8ページ(84枚)
問題30ページ(24.2%)(うち理科4)
②内容
①政治と社会(5項目)、②経済と暮らし(4)、③海外の出来事(4)、④文化とスポーツ(5)、⑤自然と科学(6、理科)の5章構成、24項目です。
各項目は読売新聞の紙面1ページ+解説1ページで構成されています。
章の最後に練習問題が6ページあります。一問一答1ページ、練習問題4ページ(解答用紙1ページ含む)、適性検査・表現型問題1ページです。適性検査・表現型問題が設けられているのが他社との大きな違いです。
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③問題レベル
通常問題は3 適性検査・表現型問題は4
④利点
・実際の新聞記事を示して説明しており、新聞ではどう報じられたかを知ることができます。
・説明文は少なく、空間が多いので読みやすいです。
・適性検査・表現型問題があるのが最大の利点です。記述問題対策は四谷にもありますが、こちらの方が内容が高度です。
⑤問題点
・情報の絶対量は他社に比べ得ると少なめです。
・新聞記事を使っているため、グラフやイラストをふんだんに使っている他社に比べ、理解のしやすさが劣ります。
・テーマごとに並べられているので、重要性の順位がわかりにくいです。
⑥使い方
・適性検査・表現型問題があるため、公立一貫校を考えている人はこの本を使うと良いでしょう。
・四谷と同様短時間で読めるので、残り時間が少ない人に向いています。
・お子さんに「新聞を読ませたい、新聞に親しんでほしい」と考えている親御さんにもおすすめです。
株式会社栄光「2025年中学入試用 重大ニュース」
①データ
2024年11月1日発売
全148ページ
税込み2420円
A4
全20項目(うち理科5)
問題44ページ(29.7%)(うち理科10)
②内容
社会・理科複合3項目、社会12項目、理科5項目の三部構成です。各項目は2ページが基本ですが、地震、政治情勢などの重要な項目は4ページになっており、重要な事柄がわかりやすくなっています。
加えてニュース年表、SDGs特集、用語集8Pがあります。
かつては特定の国への危機感をあおる描写が目立ちましたが、現在は中立的な書き方になっています。
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③問題レベル
3
④利点
・理科の割合が各社の中で最も多いです。
・表やイラストが効果的に使われています。紙面がすっきりしていることもあり、理解しやすいと感じます。
⑤問題点
・なんといっても値段が高いことです。他社が1500~1600円+税なのに、栄光は2200円+税です。昨年は1800円+税でしたが、さらに値上げになっています。
・予想問題の難易度は低めです。
⑥使い方
・理科の時事問題対策をするなら、栄光が最も優れています。
・値段は高いですが、他社と比べて情報量やわかりやすさは劣っておらず、時事問題を総合的に知ることができます。記述中心の最上位校以外は、十分対応できるでしょう。
みくに出版・日能研「2025年度中学受験用 2024重大ニュース」
①データ
2024年11月1日発売
全208ページ
税込1650円
B5
全24項目
問題47ページ(22.6%)(理科なし)
②内容
全24項目は、1-6 各4P、7-22 各2P、23-24 各1Pと、「重要と思われる順」に並んでいます。ページ数も重要度に見合っています。
24の「SLIM」のみ理科的な要素を持っていますが、基本的に社会だけです。
すべての項目に練習問題、1-6には長い予想問題があります。
これに資料集22ページ、用語集41ページがあります。資料のボリュームは日能研がトップです。
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③問題レベル
2~4
④良い点
・情報量の多さは他社を圧倒しています。用語集も受験に出そうな言葉を幅広くカバーしています。
・重要と思われる順に記事が並べられており、なにを重視すれば良いかわかりやすいです。
・24項目すべてに練習問題が用意されています。
・それでいて価格は安い方で、全体的なコスパはトップです。
⑤問題点
・例年のことですが、理科がありません。
・判型がB5で他社より小さいです(見にくいわけではないですが)。
・四谷、学研と比べると問題の割合がやや少ないです。
⑥特徴・使い方
・用語集が充実しており、現代社会の用語を確認するのに使えます。
・幅広い事柄を取りあげており、しかもそれぞれに(簡単ではありますが)問題が用意されているため、問題を解く形で学んでいけます。
・問題の難易度は低めですが、かなり思考力を問う問題も用意してあり、幅広い受験生に対応しています。
サピックス小学部企画・編集、代々木ライブラリー発行 「2025年中学入試用サピックス重大ニュース」
①データ
2024年11月6日発売
全174ページ
全23項目(うち理科6項目)
問題 30ページ(17.2%)(理科6ページ)
暗記カード 8ページ84枚
②内容
最初に「中学の先生が考える知っておいて欲しいニュース」のランキングが20位まで挙がっています。
①政治・経済(5項目)、②国際(4)、③災害対策(2)、④社会(6)、⑤理科(6)の5章構成、23項目です。各項目は2~8ページで構成されており、知っておいてほしいランキングが高い項目は長くなっています。
その他資料、カレンダー、用語集があります。
問題は6ページが5題あり、うち1題が理科です。いずれも資料やグラフ・写真などの視覚情報を元に考えて書く問題が中心で、記述が中心です。
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③問題レベル
5
④利点
・最初に「中学の先生が考える重要性」が明示されており、どこに重点を置いて学んでいけばよいか分かりやすくなっています。
・「みんなで話し合ってみよう!」がとても良く、時事問題に主体的に関わる姿勢が身についてきます。
・予想問題が非常に高度です。受験生の思考力を育てるのにも役立ちます。
⑤問題点
・時事イラストは正直あまり似ていません。
・予想問題が高度なのはいいのですが、ほとんどの受験生にとってオーバースペックです。このレベルまで問う学校は全国で30校程度でしょう。
・用語集・資料部分は、学研や日能研に比べると見劣りします。
⑥使い方
・さすがはサピ、内容はもっとも高度です。「思考力を育てる」「時事問題の知識を実際に生かす」ことを意識しており、そうしたことを求める最上位校にも対応できます。きちんと読み込むことができれば、受験生の将来にも生きると思います。
・ただ、予想問題はほとんどの受験生にとって難しすぎ、まったく歯が立たない受験生も出てくると思います。サピの難問を苦しんで解くより、他の会社の解きやすい問題を解いた方が、受験生にとってプラスになる可能性もあります。「サピを選んでおけばOK」かというと、そうとは限らないので注意が必要です。
・受験する学校の過去問を読み、過去問に見合った本を買うことをオススメします。
毎日新聞社「Newsが分かる総集編 2025年版」
①データ
2024年12月6日発売
総ページ数 112
税込み1210円
A4
項目数 27
問題ページ数 なし
付録 なし
②内容
全体は「環境・SDGs」「科学・技術」「日本のニュース」「海外のニュース」の4章構成です。
それぞれに5から8項目あり、全部で27項目あります。一つの項目は2~6ページで成り立っています。毎日新聞社の「Newsがわかる」から転載したものです。理科と社会は明確に分けられていません。オールカラーで、ビジュアルで理解できるようになっています。
一方練習問題はありません。
③問題レベル
練習問題はありません。
④利点
・オールカラーで、視覚的に情報をつかむことができます。事柄を大まかにつかみやすくなっています。
・総ルビで、学年が低いお子さんも読めるようになっており、興味を引きやすい構成になっています。
⑤問題点
・練習問題がいっさいありません。
・背景が白でないページが多々ありますが、これは正直読みづらいです。また各ページのタイトルは新しいフォントを多く使っているのですが、中には読みにくいものもあります。
⑥特徴・使い方
・朝日新聞同様、受験生が直前対策に使うものではなく、学年が低いお子さんがニュースを理解するために使うタイプの本です。
・学年が低いうちから毎年買って、お家の方と一緒に読むのがよいと思います。
どんな人に向いているか?
かつての時事問題テキストは、どの社も内容的にそれほど大きな違いはなかったように思います。
ですがここ数年は、各社とも基本的な情報は押さえつつ、特色を出してきました。向き・不向きもはっきりしてきました。ここ数年の動きも踏まえて、私なりの視点で書き出してみます。
学研 問題数を多くこなしたい人。カラーで時事問題を学びたい人。カラーが多いのはアドバンテージです。
四谷 残り時間が少ない人、時事問題対策に時間が取れない人に。見た目のコスパの悪さは利点でもあります。
朝日新聞、毎日新聞 これから受験の5年生、4年生に。ニュースを深く理解したいと考える人に。受験本番の問題対策には向きません。
読売新聞 公立中高一貫校を受ける人に。長い記述の時事問題が出題される学校を受ける人に。新聞に親しむことができる利点もあります。
栄光 理科対策を行ないたい人に。値段は他社に比べて高いですが、「理科に強い」という明確な特徴があります。
日能研 幅広く情報を集めたい人。マイナーな事柄を出題する学校を受ける人。これ一冊でおおむねどこの学校でも対応できますが、最上位校はちょっと厳しめです。
サピ 思考力を育てたい人。難しい予想問題を解く必要がある人。予想問題は万人向けではないので注意する必要があります。資料や用語集は少ないので、もっと知りたい場合は日能研も併用するとよいでしょう。
おわりに
見てきたように、重大ニュースのテキストには会社ごとの「特徴」がはっきり出るようになってきました。
重要になるのは「過去問」です。過去問を見て学校の傾向をつかみ、それに合ったテキストを選ぶとよいでしょう。
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