Apple MusicからSpotifyに乗り換えて:ディグり方の違い編
ときに、私は、ずっとiPhone、Mac、Apple MusicというApple信者三点セットを利用していたのですが、突然Spotifyに移行しました。
というか、なんだか最近のApple製品発表会もわくわくしないし、結局意地を張ってなのか、いつまでたってもiPhoneはLDACに対応しないし、とにかく「アップル・エコシステム」に愛想をつかして、まずはサブスクから解約してみたという感じです。
で、しばらくSpotifyを使用し、両者の違いとかも見えてきたので、今回は、「ディグり方の違い編」と題して、音楽ファンの皆さんにとって、おそらく本質的な違いになるであろう、両者のキュレーション方式の違い、ひいては「ディグ(DIG)」り方の違いに焦点を当てたいと思います。
料金とか、そういう基礎的な情報は、「Apple MusicとSpotifyの違いとは?料金は?どっちがお得??」みたいなアフィ記事(想像)がGoogleに嫌というほど転がっていると思いますので、ここでは省略します。
Apple Musicは人力、Spotifyはアルゴリズム
とにかく、前段でも述べたとおり、Apple MusicからSpotifyに乗り換えて一番実感したのが、両者のキュレーション方式の違いでした。
そもそも両者とも、多少の差はあるとはいえ、基本的に、曲数も、値段も、概ね似通ったもの。唯一、ハイレゾや空間オーディオへの対応の有無は、リスナー体験に直接する差異ですが、Spotifyもそのうち対応すると言われています(ずっと延期されていますが……)。あと、操作性は……好みですね。アップル信者か否かによる。
そこで、リスナー体験に一番本質的に影響を与えるのがキュレーションだと思います。Apple MusicからSpotifyに乗り換えてから、(良くも悪くも)新しい音楽との出会い方や、聴く曲の傾向が大きく変わりました。
一言でいうと「Apple Musicは人力、対して、Spotifyはアルゴリズム」。いずれも一長一短ですので、詳しく見ていきましょう。
Appleの良さ①:「中の人」の存在が垣間見えるプレイリスト
さて、私が一番象徴的だと思うApple Musicのプレイリストが、この「京都音楽通り上ル」です。少し古いですが、2018年のApple 京都のオープンに合わせたプロモーションの一環として展開されたもので、京都にゆかりのあるアーティストの曲が収録されています。
いやぁ、これ、「中の人」の存在を強く感じますよね。選曲も、順番も、あきらかに自動生成ではない。「わかってる人」の犯行って感じがプンプンしますよね。
くるりで始まって、おとぼけビ〜バ〜も入ってるし、なんと放課後ティータイムまで!しかも、締めは非常階段ですからね。
なお、アニメ版『けいおん!』は、ご存知京アニ制作で、京都洛北エリアがロケ地になっています。在住経験のある私にとっても、懐かしい景色がたくさん。
(▽参考文献▽)
おとぼけビ〜バ〜は、今年こそ、遂にグラストンベリーに出演しますし、方方で注目を浴びていますが、これ、2018年ですからね。手が早い。
また、プレイリストの最後は、伝説のノイズバンド非常階段。なんというチョイス。プロ。
(ほぼ)全てのアーティストの人力プレイリストがある
こんな感じで、Apple Musicは、ちゃんとしたキュレーターを、それなりの人数雇って、丁寧に人力でプレイリストを作成している印象があります。
で、驚くべきところは、こうしたキュレーション系プレイリストだけでなく、有名どころの全アーティストそれぞれに、「はじめての◯◯」や「◯◯:隠れた名曲」と題したプレイリストが作成されていること。これも、全部人力で作られているようで、アーティストそれぞれの文脈が、よく見えるものになっています。
また、各プレイリストにはキャプションがありますが、それらも簡潔にして十分。選曲や曲順もよく考えられています。
(▼例①バンプ:新しいのから古いのまで、しっかり網羅。前半は比較的新しめor大ヒット曲、後半に行くにつれて、大ヒットではないけどライブでは頻出の曲が並びます。忘れずにしっかりと、「ガラスのブルース」が入っているのも、中の人の影を感じます。)
(▼例②けいおん:狭義のアーティストの域を出た切り口のプレイリストもあります。流れで再び『けいおん!』を。「天使に触れたよ!」がプレイリストの最後に来ている意味を、履修者なら分かってくれるはず。)
ほかにも秀逸なキュレーション系プレイリストがたくさん
ほかにも、めちゃくちゃいいプレイリストいっぱいあります。あんまり紙幅を割きたくないですが、あと2つだけ貼っておきます。
Appleの良さ②:金にモノを言わせた素晴らしいラジオたち
Apple Musicには、「ラジオ」と題した機能があり、一部は本当に生放送で、一部は実質的なポッドキャストとして配信されています。
日本語は、全てポッドキャストタイプのみですが、これがどれもよく出来ている。まじで。
一つが、オチケンがパーソナリティーを務める「J-Pop Now Radio」。これは、約1時間の番組で、ざーっとJ-Popニューリリースをおさらいしたあと、大物アーティストのインタビューがあって、最後にちょっとコアな曲をかけて終わりというもの。
執筆段階の最新回は、ano×幾田りら。毎週更新なので、週次のリリースをバランスよくさらうことができます。
あと、世間を賑わせている、みのミュージックも番組を持っています。この人、ツイッターがあまりお上手ではないのでは?という疑惑はありつつ、まあ、こういうポッドキャストをやらせれば、ちゃんとおもしろいですよね。
この他にも、もし英語がお上手であれば、英語で配信されている洋楽系のラジオは、無限にあります。
Spotifyの良さ①:アルゴリズムがすごい
さて、打って変わってSpotifyですが、よく言われるように、強みはアルゴリズムを利用したおすすめ機能ですよね。いや、これは、もう色んなところで言われていますが、明らかにSpotifyが、楽曲に関するアルゴリズムでは、トップの技術を持っていると思います。
特に、音楽の趣味がアブノーマルな人は、重宝すると思います。普通のキュレーションでは出てこない曲がわんさかでてくる。
ユーザー各位が一番よく使っていると思われるのが、「Release Radar」。毎週金曜日に更新されて、過去の自分の視聴歴に基づいて、その週のニューリリースをアルゴリズムによって、自動でまとめてくれます。
ちょっと恥ずかしいですが、今週の私のやつを貼っておきます。ジャンルもバラバラだけど、確かにまあ聴いた記憶があるなってやつが上がってきます。
ただし精度の低いプレイリストも少なくない
比較のために、Spotify謹製の京都プレイリストを見てみましょうか。
まあ、見てもらったらわかるんですが、とにかく曲数は多くて全部入りになっているものの、あんまりストーリーとか選曲の軸は感じないですよね。しかも、先ほど紹介したApple Musicのプレイリストと比べたときに、重要なアーティストを落としてしまっている感じもします。
アーティストごとのプレイリストも同様です。とにかく曲数は多いんですが、まあそれだけという感じ。結局、Spotifyの強みは、個人個人の視聴履歴から導き出される、オーダーメイドのプレイリストにあって、こういう文脈のないプレイリストの精度は低いですね。
Spotifyの良さ②:色んな人がプレイリストを作って公開してる
これは、厳密には、Spotify本体の機能ではないんですが、Spotifyのもう一つの大きな強みは、いろんな音楽オタクたちが、いろんなプレイリストを作って公開しているところだと思います。
ご多分に漏れず管理志向が強いAppleと違い、そのあたりのインターネットの力をうまく活用できているのはSpotifyです。
(▼例①:Peterさん(@zippu21)が作っている、アルバムのエンディング曲ばっかりを集めたプレイリスト)
(▼例②:「実質ドラムンベース」。実質ドラムンベースの曲ばっかりが入っています。)
(▼例③:ちょっと古いですが、私の崇拝するハヤシベトモノリさん作った、2019年ベスト)
おまけ(TOWER RECORDS MUSIC)
というわけで、今回は、Apple MusicとSpotifyのキュレーションの違いをまとめてみました。
実は、TOWER RECORDS MUSICもその間使ってみたんですが、うーん、まぁがんばっているものの、根本的にアプリの操作感が悪かったり、いまいち曲数が少なかったりと、なんとも言えない出来でした。
趣向しては、Apple Musicと同じように、人力プレイリストで付加価値をつけようとしていて、例えば、全国のタワレコ店員のおすすめが見られるのは、非常に面白い機能でした。今後の発展に期待です。
時に、仲間うち3人で、音楽悲喜こもごもをお伝えしています。ご贔屓に