(閑話)ディズニーランドのパレードと音響システム
アルバム紹介で「Baroque Hoedown(エレクトリカルパレードの原曲)」の話をしたので、興味深い点として、パレード音響についても少し。
パークの音事情
みなさん、ディズニーランドには行ったことがありますか。
……行ったことある前提で書きますから、無い人は次回行く時に楽しむポイントの予習として読んでいただければ。パレードのネタバレは、無いです。
さて、凝った建物やアトラクションから、大小さまざま仕込まれた小ネタ、果ては、あの人流を難なく捌くキャストまで、パークに行って驚くことはたくさんあります。市中では見られない規模とクオリティが毎日行われている。恐ろしい話です。
一度パークを訪れると、どこに行っても常にBGMが流れているのにお気づきいただけるかと思います。リアル空間で常になんらかのBGMが鳴っているってのは、私はあそこ以外で体験したことがないです。
BGMはエリアによって違い、そのエリアの境には大概の場合、噴水等があり、そのノイズでBGM同士が混じるのを防いでいるというのはあまりに有名な話ですね。
パレードの音響に驚く
さて本題へ。
普段はそうやって、パークワイド中になんとなくBGMが流しているスピーカーが、1日に何度か大仕事をするタイミングがあります。
それが、パレードの時。
これ、初めての時にはかなりの衝撃でした。パレードは、あの複雑な形のパーク中を練り歩くように運行するのですが、沿道どの場所で観ても、途切れがないんです。
ありえん。どうなっとるんだ。
客視点からのパレード
何をそんな有難がっているかというと、止まって観ている客からは以下のように聴こえるからなんです。
時間になるとイントロが流れ始める。
しばらくすると、フロート(山車)がやってくる。当然、それぞれのフロートにはいろんなキャラクターが乗っていて、各キャラクターに合ったBGMに切り替わる。
フロートが途切れるタイミング(※)でも、曲は途切れない。
最後のフロートがいなくなると、アウトロが流れてパレード全体が終了する。
つまり、目の前にベルがいれば「美女と野獣」が流れているし、ジーニーがいれば「ホールニューワールド」が流れている。
しかも、よくよく聞くと、地面から生えている固定スピーカーからは伴奏が、各フロートのスピーカーからはメロディやセリフが流れているんです。
各スピーカーが同期しながら自動で切り替わる
これって普通じゃないですよ??
だって、もちろんフロート本体にもスピーカーはついているわけで、その、動くスピーカーと、パレード沿道に170個以上あるスピーカーが、曲を切り替えながら寸分のズレもない。
しかも、パレードってのはライブものなので、毎日ピッタリ同じ時間で運行できるわけじゃない。不測の事態(機械トラブルや客の飛び出し等)によって、フロートが到着するのが遅れたりするのは、ままあるはずです。
つまり、全部のスピーカーが、現在地等の情報から同期しながら、自動で切り替わるようになっているはず。
どんな仕組みなんだ……。
仕組み
仕組みを調べたり、推測したりしてみました。
①フロートのスピーカーの動き
こちらは至極簡単で、乗っているキャラクターに合ったBGMをループしているだけです。
②固定スピーカーの動き
固定スピーカーはというと、フロートのループと同じ長さ・BPMの伴奏ループを、全フロート群分用意してあり、それを移動状況によって切り替えているのです。
具体的にはこんな感じ。
先頭のフロート群が近づくと、通常のBGMを停止しイントロを流す。
先頭のフロート群が到着したら、音量を絞り、そのフロートのメロディに合わせた伴奏(アンダーライナー)を流す。
次のフロート群が来たら、次の伴奏に切り替える(これを繰り返す)。
横断歩道のタイミングになったら、音量を上げて間奏を流す。
最後のフロート群が通り過ぎきったら、音量を上げ、アウトロを流す。
アウトロが終わったら通常BGMに戻る。
もう一度客視点で
こうして、①フロート、②固定スピーカーの音が混じることで、客としては音も途切れず、かつ一体に聴こえるのです。
つなぎ目にもこだわりが光る
このように、パレードの進行状況によって自動的にBGMが切り替わるのですが、気になるのはつなぎ目の処理ですよね。
ここは2つの仕掛けによってクリアしています。
ループブロック自体の工夫
1つ目の工夫として、各ループの冒頭と最後にはのりしろが設けられています。
何を言っているかというと、各ループブロックは、
パレードテーマ→各キャラクターソング→パレードテーマ
のように、前後のループと接続できる(し、繰り返しても違和感ない)構成になっているのです。
もちろん、転調があっても、そのループが終わるときには必ず元の調に再転調するようになっているみたいです。
フロートスピーカーの工夫
もう一つの仕組みは、各フロートに搭載されているスピーカーが、全方位スピーカーではなく、指向性のものを使っており、前向きには音が流れていない、ということです。
これにより、前後のフロートの音が混ざりにくくなっています。
実際の動画
実際にはどんな感じになるのか、というとこんな感じです。
その他細かい点
パーク全体を俯瞰した場合
パレードルートには、170個以上の固定スピーカーがあるそうなのですが(多っ!)、それを訳30ブロックに分け、ブロックごとに次に流すループを判定しているそう。
コントロールとズレの回避
色々と調べてみると、各フロートにGPSが設置されている、もしくはパレード沿道にコイルが設置されていて、それで位置を判定しているとのこと。
また、ズレの回避にはどうも、SMPTEタイムコードを使用しているみたいですね。これは、もともと映像と音声を同期させるための、タイムコードの規格です。で、シンデレラ城の天辺から信号を発信していて、各フロートやスピーカーがこれを受信しているみたいですね。
終わりに
なんだか、結構複雑で意味不明な記事になってしまった気がしますが、納得いただけたでしょうか。
まだまだ、生のフルオーケストラ音源を使ったりしているのに、どうやってBPMがずれないようにしているのか、など謎はたくさんありますが、とにかく理解した部分だけ記事にしました。
では、また。
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