【アルバム紹介】For the Birds: The Birdsong Project, Vol. 1
こんにちは!今日はちょっと変わり種のアルバムを紹介します。
その名も「For the Birds」。世界に名だたるアーティストが、鳥類保護のために集ったチャリティー・コンピレーションアルバムです。
背景紹介
ハリウッドで劇伴をやってるRandall Poster(代表作:"The Wolf of Wall Street"など)が発起人となり制作されたアルバム。
The New York Timesへのインタビューによると、コロナ禍のロックダウンで街が静かになったことで、これまで気づかなかった街中には鳥の鳴き声(birdsong)に気づき、本アルバムを構想したとのこと。
どうも、世界の鳥類のおよそ8分の1が絶滅の危機に瀕しているらしい。
こうした背景から、この5月20日にリリースされたのが、『For the Birds: The Songbird Project』のVol. 1。サブスクではVol. 1とされていますが、ハード版はLP4枚組です。
今後、6月、7月、8月、9月にVol. 2〜5も発売され、最終的にはLP20枚組のBOXとなるそう。
本アルバムの収益は、野鳥の保護活動を行っている全米オーデュボン協会(野鳥の会のアメリカ版みたいなやつ)に寄付されるとのことです。
アルバムについて
そんなこんなで、恐悦至極の超豪華アーティストによる大量の書き下ろしを集めたアルバム。
ミニマルやトランスからノイズ、オルタナ、はたまた小説家による語りまで、とにかく鳥の鳴き声に着想を得て書かれた全てが入っています。
中には、実際に鳥の鳴き声を使っている曲もたくさんありますね。自然の音を組み込んだ音楽というのは、もしかすると音楽の原初の形態なのかもしれません。
Adam Green、A. G. CookにTerry Riley。洋楽オンチの私でも知っているビッグネームに加え、世界各国の新進気鋭のアーティストも含まれているよう。ちらほら日本人の名前もあります。
さて、詳しくは曲を見ながら!
曲紹介
とにかく曲数が多いので、掻い摘んで数曲だけ。あとはみなさんも実際にアルバムを聴きながら、お気に入りの一曲を見つけてください。
どれも聴き始めると良いので、迷いに迷って選んだ(選びきれていない)数曲です!
01.「Wood Dove」
長年コラボを続けている、オーストラリアのシンガーソングライターNick Caveと、イギリスの作家Warren Ellisのコンビによる一曲。
Wood Doveとは、欧州では一般的に見られる野生の鳩の一種ですね。クークーという声で鳴くらしいですが、現物を見たことがないので全く想像がつきません。
幻想的かつ非常にミニマルな一曲。なんとも言えないんですが、この落ち着くけれども暗くはない感じが、アルバムの頭にぴったりですね。
03.「Seeds」
宇多田ヒカルとずっと共同制作しているA. G. Cookと、アメリカのシンガーソングライター、Alaska Reidのコンビの1曲。この2人もずっとコラボしてるみたいですね。
1、2曲目のどちらも素晴らしい、染み渡るような曲だなと思って聞いていましたが、やっぱりこういう旋律的なものが来ると、安易に安心する。やっぱり邦楽を聞いて育った生粋の日本人なんでね。
気になったので、この2人の曲を過去作漁ってみましたが、ポップですがかなり攻めた音作りの曲ですね。ちょっと気になる。またちゃんと聴いて記事書いてみたい。
12.「Bird Calling」
アメリカの有名ラッパー、Wale(ワーレイ)のラップ。作曲家のDamon Albarnと、DJのMark Ronsonとの合作。
最初は鳥の鳴き声の環境音から入り、"Can you hear the sound of the bird calling?(鳥が呼びかけている音が聴こえるか)"という掛け声(?)と共に曲が動き始めます。
その後に続くラップも鳥についてですね。まぁ、英語オンチなので、あんまりなんて言ってるかわからないんですけど。
13.「One for Sorrow」
James Lavelle率いるイギリスのプロジェクト、UNKLEによる一曲。この曲は、ジャンル的には何になるんですかね……アンビエント??
UNKLEは、一応trip hopということになっているそうですが、trip hopといえばエレクトロニカではなくて、生音のイメージがあるので、この曲は違うんですかね(あんまり詳しくないので分かりませんが)。
この次の14.「One Let Free」もそうですが、鳥の鳴き声≒環境音を使うものは、抽象的な音楽と相性が良いみたいですね。
15.「Kyoto March」
20世紀のアメリカの詩人、Gary Snyderの詩、"Kyoto March(3月の京都)"を、アメリカの作家Jelani Cobbが朗読したもの。
まだほの寒い京都で、日暮れから夜明けにかけての情景を詠み込みつつ、子育てをする鳥について詠んだ詩のよう。
16.「Sanctuary」
連続します。
本当にこのアルバムにはなんでも入っていますね。ドリームポップの大家、Beach Houseによる一曲。
割とクラシックぽい感じのピアノソロからスタート。中間部から薄いシンセと、シンセチェンバロっぽい音が入ることで、一気に幻想的な感じになります。
急に引き込まれそうになったのも束の間、すぐにピアノに戻り、気付けば鳥の鳴き声の環境音だけになり、曲は終わります。
非常に短い曲なのに、ひとときの儚い夢を見たかのような感覚に陥ります。このアルバムの中で、一番好きな曲。
20.「Una Melodía」
スペイン語。
全然、El Búhoというアーティストは知らなかったんですが、曲を聴いて気になったので紹介。最初はコーラスから始まるんですが、繰り返すうちにリズミカルになっていき、突然にEDM調のサビに。
いきなりの曲展開に驚いて紹介しちゃいました。ラテン系のリズムを感じますね。
33.「Salt Point」
アメリカの実験音楽家、Tyondai Braxtonによる一曲。
完全に実験音楽ですね。ノイズとリバーブの曲。正直言って、知見がなさすぎてこの曲がどうなのか全く分かりません。
が、なんだかとりあえず触れておかなければいけない特筆すべき曲な気がしたので、一応ご紹介。正直ここまでいくと、鳥とは??となりますね……。
40.「Whistling in the Dark」
アメリカのウクレレ奏者、Molly Lewisによる曲。
口笛が旋律のインスト曲。もしかして、私が全然知らないだけで一大ジャンルなのかもしれませんが、口笛の曲ってあんまり聴いたことなくて珍しいなと思って紹介。
途中から丸めのリードシンセが一本入ってきて、口笛とハモるのも良いですね。
42.「Oreals」
ニューヨークのジャズ・サックス奏者、Rudresh Mahanthappaの曲。
鳥の鳴き声とサックスの掛け合いになっていますね。これも趣向が面白いと思いご紹介。サックスってのも、かなり超絶技巧が演奏できる楽器ですね。
にしても、そもそも鳥の鳴き声の方がこんなに都合よくいくものなのか。ちょっとメロディアスすぎますよね。もしかしたら、鳴き声音MADかもしれない。
終盤で急な展開。何やら不気味というか、ちょっと呆気に取られる終わり方しますね。
47.「Why Does the Girl Bird Sing」
アメリカのボーカルグループThe Rocheの一員だった、Suzzy Rocheによる曲。
コード進行も音色も昔ながら、というかありきたりですが、こういうのが結局落ち着きますね。特に、不思議曲をたくさん聴かされたあとなので尚更。
普通に「鳥の歌声にインスパイアされた」というこのコンピアルバムの発注意図に沿った曲だし、一番まともだ。
終わりに
さて、いかがだったでしょうか。
曲紹介を見てもらうと、明らかにアルバム後半になるにつれて解像度が下がるのがバレてしまっているかもしれませんが、結構どの曲も面白くて、聞き飽きないアルバムです。
私も後半、もう少し聴き込みます。また、最初に紹介した通り、Vol. 5まで出るので、引き続きみなさんもフォローしてみてください。
噂によると、オノ・ヨーコのトラックもあるらしいですよ。
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