「免疫力」を整理してみました。
新型コロナウイルスの話題で不安になっている方も多くいるようですが、「免疫力」に関してできるだけ分かりやすく整理してみようと思います。
分かりやすさを追求して医学用語をできるだけ使わないようにするため、「完全には正解と言えない」「けど間違ってもいない」というレベル感で書きますのでご理解ください。
ここでは「免疫力」を大きく3つに分けます。皆さんが興味のあるところだと思いますので、新型コロナウイルス(COVID-19)を例にとりながら整理していきます。
①感染防御力
目や、鼻、口の中、のどなど皮膚に守られていない部分にウイルスが付いた時に、それ以上体の中に入れない防御能力です。人の体にはこの段階で大半の病原体の侵入を防ぐ機能が多く備わっています。
普段、何気なく目をごしごしと手でこすってもほとんど病気にならないのはこの防御力のおかげです。
一方で新型コロナウイルスはこの防御力を突破する力が強い可能性があり、そのためウイルスがついている可能性のある手を頻繁に洗って、目、鼻、口、食べ物にウイルスをつけないことが感染予防になります。
②感染後の免疫応答力
①の防御を突破されてしまい、体の細胞の中にウイルスが入り込んだ状態が「感染」です。
感染後は一部の免疫細胞が急激に増加します。さらのその中にはウイルスの動きを封じ込める免疫物質を作るものが現れます。この時、体にある栄養やエネルギーの大半を免疫応答に使って体の中に免疫機能を広げていきます。体中の体液に免疫物質を充満させることができれば、ほぼウイルスの制圧が完了します。
ウイルスが体の中で増えるスピードと免疫応答のスピードの勝負で免疫応答が勝てば、感染しても軽症で済み、ウイルスが勝てば肺炎など重症化していきます。
この時、感染した人の体力が勝負になるので高齢者が重症化しやすいという分けです。
また安静にせずに活動していると活動のためにエネルギーを使ってしまい、免疫応答力が十分に発揮できなくなるおそれがあります。
③免疫記憶
感染後に回復すると、侵入してきたウイルスを狙い撃ちする免疫能力を記憶した細胞が眠りにつき、次の侵入にそなえます。
次に同じウイルスが体に入ってきた時は、すぐに反応し効率的に体から排除します。「一度罹った病気には二回目はかからない」というのはこの仕組みがあるからです。感染すると重症化する危険のある病原体に対してはワクチンを打つことで、リスクを抑えながら、免疫記憶を獲得させる仕組みもあります。
「汚い環境で育ったから、免疫力がある」といった発言が聞かれますが、これはたくさんの病原体に対して免疫記憶があるということを言っています。個人的にはあまりお勧めしませんが。。
なお、新型コロナウイルスは全員が初めて出会うウイルスなので免疫記憶をあてにすることができません。
まとめ
新型コロナウイルスは「①感染防御力」の突破力が高そうなので、外出後や症状のある人の近に行った時は手洗いをしっかりすること、感染者がいる可能性が高い人混みは避けること、感染してしまった時は体力勝負になるので普段から栄養、睡眠をしっかりとって体力を養っておくことが大切になります。
最後に
やはり、免疫や新型コロナウイルスの話を医療者でない人にも分かりやすく書こうとすると、「正しさ」の維持が難しく非常にスリリングでした。
このnoteを書いたのは医師のネットでの情報発信者は正確性を重視して書かれているので一般の人には分かりづらいこと。また今は正確な情報が何より重要なため、医師の発信者の皆さんにはそのまま正確な情報発信をし続けて欲しいからです。
一方で最善の対策行動の理由が分からない一般の人が不安や不満を感じている様子や、「なぜ」が分からないためデマに惑わされてしまう様子がSNSから感じ取られたためチャレンジしました。
また「②免疫応答」は過労状態でも十分働かない恐れがあります。今後、急激に患者数が増えた時に医療者に負担がかかり、感染後に医療者から多くの重症者がでて医療が提供されなくなることを懸念しています。
今は全ての人が自分と周囲の人をいたわって、万が一感染しても軽症で済むように感染対策と共に体力維持を意識して欲しいと願っています。