第6章:図書委員としての自信
大輝は図書室が大好きだった。本が好きなことに加え、図書室の静かな空気が心地よかった。休み時間や放課後に他の生徒が騒いでいる間、図書室で本に囲まれている時間は、まさに大輝にとって「安心できる場所」だった。
図書委員として本を整理したり、新しい本をリストに追加したりする作業は、誰よりも得意だった。大輝は本の情報をすぐに覚え、探している生徒にぴったりの本を薦めることができた。そのスキルは、最近図書委員になった伊藤さんも驚いた。
「田中君、また新しい本のリストを作ったの?すごいね、いつも助かるよ。」
伊藤さんの言葉に大輝は少し照れくさそうに笑いながら、
「いや、別にそんな大したことないよ」
と答えた。しかし内心では、他の人が自分を頼りにしてくれることが、少し誇らしく感じていた。
大輝は、図書委員の仕事を、心のどこかで
「協調性のない俺にはどうせことぐらいしかできないからな」
と思っていた。それはまさに「劣等コンプレックス」だ。
(アドラーは劣等感を向上心に変えろって言ってたな…)
そう考えた大輝は、次の一歩を決めた。
「もっと図書委員としての役割を活かして、学校の中で何か大きなことをやってみたい…」
今までだったら、そんな大きな目標は自分には無理だと思っていた。しかし、劣等感を克服しようと決意した大輝は、思い切って自分のアイデアを形にしようと思い始めた。
「伊藤さん、ちょっと提案があるんだけど…」
昼休み、図書室で伊藤さんに声をかけた大輝は、少し緊張しながら話し始めた。「図書委員の活動で、学校全体に本をもっと広められるようなイベントをやってみたいんだ。例えば、本の紹介コンテストとか…みんなが自分の好きな本を紹介して、クラスメイト同士で投票するみたいな…」
伊藤さんは目を輝かせて、「いいね、それ!絶対面白そうだし、みんな参加してくれると思うよ!」と賛成してくれた。
その瞬間、大輝は感じた。自分が「できない」と思い込んでいたことに対して、挑戦することの大切さを。もちろん、まだ具体的にどう進めるかはわからない。しかし、最初の一歩を踏み出したことで、自分の中に少しずつ自信が生まれ始めていた。
コラム:劣等感を克服するためのヒント
自分の得意なことを認める
劣等感にとらわれると、どんなに得意なことでも「誰でもできる」と思いがちです。まずは、自分の得意なことを素直に認めることが大事です。挑戦する勇気を持つ
劣等感があると、挑戦を避けてしまいます。しかし、小さな挑戦からでも始めることで、少しずつ自信がついてきます。他人の助けを借りる
誰かに自分のアイデアを話してみることで、新しい視点が得られることもあります。挑戦は一人でやるものではなく、周囲のサポートを受けることも大切です。行動し続ける
劣等感を克服するためには、継続的な行動が必要です。最初の一歩を踏み出すことが難しいですが、その後も行動を続けることで、自己成長につながります。
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