見出し画像

女性の三大漢方薬

漢方の考え方では、女性は7の倍数の歳で体の変化が現れるといわれています。
生理を迎えてから、ひどい生理痛に襲われたり。妊娠、出産、閉経。
気がついたら人生の半分、半分以上も様々な女性特有のトラブルを抱えていたり。
漢方薬の起源的な考え方は、女性の体の変化に合わせた、女性のために作られた薬と言っても過言ではありません。なぜならば、女性の健康が安定すれば、子孫繁栄につながり、それが国の繁栄につながったからです。
女性特有のトラブルには、数ある漢方処方の中でも「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」 「加味逍遙散(かみしょうようさん)」「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」の3つ がよく使われ、「婦人科三大処方」と呼ばれています。漢方では女性特有のトラブルを「血の道」の不具合と捉え、中でも血が滞る瘀血(おけつ)にその原因があると考えるので、この三大処方は、瘀血を取り除く駆瘀血剤(くおけつざい)という共通の働きを持っています。簡単にいうと、”血の巡りをよくする漢方薬”です。皆さんもよくご存知なシナモン(桂枝・桂皮)が含まれてます。では、この3つの違いはどういったところで、何を基準に選んだら良いのでしょうか?

まず、一つずつ特徴を見ていきましょう。


当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

「当帰芍薬散」は貧血などの血の不足(漢方では血虚(けっきょ)という)の症状や水毒に効果があります。血の巡りが良くない、巡る血も足りていないような虚弱体質の方にはこの当帰芍薬散です。芍薬(シャクヤク)で血を補い、当帰(トウキ)で暖めて巡らせます。月経不順や、月経時に貧血とめまいに悩まされている方。手足が冷たくてなかなか寝付けなかったり、いつもなんとなくだるさを感じている方におすすめできる処方です。水のトラブル(水毒)に対処する生薬も多く含まれています。利尿作用でむくみをとり、弱った体をいたわりながら優しく効いてくるタイプの生薬で構成されています。

体の線が細く虚弱な女性に合う当帰芍薬散


加味逍遙散(かみしょうようさん)

「加味逍遙散」は「気」や「血」の異常に効果がある処方で、イライラやうつ状態、不眠 などの精神症状によく使われます。更年期障害の治療にも多く使われており、手指や掌の 湿疹やしみ、肝斑(顔の左右に対象に現れるしみ)などの皮膚症状がでている場合も、この薬を選択する判断基準になります。
症状がコロコロ変わり、原因はよく分からないけど調子が悪い(不定愁訴)方は、とりあえずこの加味逍遙散を試してみてください。気にトラブルを抱える(ストレスを抱える)ことによって、血や水の巡りが悪くなっている状態を解消する漢方薬です。やや体力がない方から、まあまあ体力がある方まで幅広い体力の方に使えます。
加味逍遥散は自律神経に働きかけてホルモンバランスを整え、沈みがちな心に穏やかに作用しながら女性の体調不良を緩和する万人向けの処方と言えるでしょう。生理前に特に気分が落ち込む方や(PMS)イライラや不安感が強い更年期の方におすすめします。


イライラやムカムカ、まさに頭にくる!と、なりやすい方に加味逍遙散


桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

「桂枝茯苓丸」は、血の滞り(瘀血)を治す成分が最も多く含まれるほか、のぼせやむくみにも有効な 処方です。
強い瘀血に牡丹皮(ボタンピ)と桃仁(トウニン)が対応してくれる漢方薬です。体力のある方にお薦めです。
足は冷えているのに顔は熱っていて汗をかくといった更年期の冷えのぼせ(ホットフラッシュ)は気の逆流気逆)の代表的な症状で、桂皮(ケイヒ)が対応してます。
桂枝茯苓丸には赤血球をバラバラにする効果も確認されており、どろっとしたレバーのような固まりで出血するような月経や、子宮内膜炎などの炎症性疾患、打撲ですぐ紫色のあざになってしまう場合などにも効果があります。血流が悪くなるタイプの肩こりや湿疹、シミにも効果的です。
何より、生薬を細かく刻み蜂蜜等で練って小さい粒にした丸剤という形をしているので、運びやすいし、病院でもらうエキス顆粒という漢方薬より効きがとても良いです。(同じ桂枝茯苓丸でも病院で出される保険が効く漢方は”エキス顆粒”といって生薬を煮出した液の水分を飛ばして顆粒にしたものが多いです。効き目は丸剤に比べてマイルドです。)


まあまあ体力がある方から体力に自信のある方、冷えやのぼせがある方に合う桂枝茯苓丸


三大女性漢方の使い分け

いかがでしたか?ご自分に合う漢方薬が少しイメージできたでしょうか?前回のnote  ”自分に合う漢方を見つけられるために知っておきたいこと その② ~ 原因を探る手がかり「気(き)・血(けつ)・水(すい)」~” でご説明したように、身体のバランスを崩すとき、自身の身体の癖によって「気・血・水」どこに出やすいか、タイプが分かれ、そのタイプが合う漢方薬選びのキーになります。
当帰芍薬散は「血・水」、加味逍遙散は「血・気」、桂枝茯苓丸は「血」のバランスを崩した時使う漢方薬です。そこに証の考え方を取り入れると、下記の図になります。(参考: 自分に合う漢方を見つけられるために知っておきたいこと その① ~「 証 」~ )

女性のライフサイクルの中で生じるさまざまなトラブル、特に身体のクセを変えるには、西洋医学では解決できない ものが少なくありません。しかし漢方の力を借りれば、その多くを改善することが期待で きるのです。あなたも漢方を味方につけてみませんか?



川久保育子 pharmacare代表

▶︎ 経歴
2000年薬剤師国家資格を取得後、朝日生命糖尿病研究所(現 朝日生命成人病研究所)入職。糖尿病の基礎を学び、生活習慣改善カウンセリングに携わる。生活習慣改善の為には西洋医学に対する見地だけでなく、東洋医学の見地も必要との思いから生薬・漢方認定を取得。また田畑隆一郎博士のもと無門塾で10年以上に及び漢方知見を深める。漢方診療所の研修を経て、順和会 山王病院へ転職。山王病院ではその漢方的アプローチを用いて、不妊治療においての漢方相談、生活習慣改善カウンセリングに携わる。また、糖尿病教室などを通し生活習慣改善へのメンタル的改善方法の啓蒙、コーチングを用いての職員研修等も担当。2022年に同院を退職。2023年オンライン健康相談のpharmacareを立ち上げる。
▶︎ 自己紹介
長年の病院勤務を通してどうしても拭えなかった”もっと寄り添ってその方の健康に携わりたい”という想い。その想いを伝えるために独立し、現在はpharmacare代表として、漢方養生を基本とした体質改善やセルフメディケーションの相談、セミナー、執筆業務に携わっております。 ”心身を整えるのは自分自身であって、それは毎日のちょっとした気付きだったりする”をミッションに、その気付きを持てる心と身体の土台作り、その方ならではの健康を内側から育むための情報、また自分自身の漢方薬を使っての体質改善、妊活経験等を分かりやすく発信できるよう心がけております。プライベートでは2人の息子、1匹の娘(犬)の母です。どうぞよろしくお願いいたしします。
▶︎ 資格・所属
東亜医学協会、日本不妊カウンセリング学会会員
薬剤師、スポーツファーマシスト、HCJ認定メンタルコーチ
▶︎ ホームページ

▶︎ お仕事の依頼
こちらよりメッセージいただければと思います。
https://pharmacare.kmac.co.jp/contact/


いいなと思ったら応援しよう!