『glow』とは何だったのか、水瀬いのり第二章とは何なのか、考えてみる。
(前回)
ご無沙汰しております。kuraです。
さて今回ですが、前半で、2022年のライブツアーのセットリストや構成からアルバムglowを読み解いていき、後半は、その背景や想い、彼女が何を考えて、何を伝えたかったのか、考察していきたいと思います。
半年以上経過し、アルバムやセトリの読解も既出だと思いますし、このくらいなら私でも…的な評を、前回の記事の際にいただいたりもしたので、書き起こす意味あるか?という感じではあるのですが、時間だけは費やして考えてしまったので、自分のために残しておこうという感じです。
前回にも増して長丁場ですが、物好きな方、ライブ円盤をより楽しむための視点を増やしたい方は、是非お付き合いください。
なお、ライブツアーの細かい考察は別に…、という方は2章からお読みいただければと思います。結論は6章に記述しています。
1.LIVE TOUR glow の考察
さて、『glow』について深堀りする上で、ライブツアーは極めて大きい要素でしたので、歌詞と曲順はもちろん、衣装やメイクなどの観点も交えて話していこうと思います。
glowという単語については、『日常にある小さな輝き』を表すことがインタビュー等々で語られていますが、ここでの輝きとは、「元から自分が持っているもの(能力や自分らしさ、培った経験)」や「すでに身の回り・近くにある存在(家族・友人・仲間・ファン)」といった、定量的に示しづらい身の回りの価値あるものを抽象的に表す言葉であると、私は考えています。
これを前提としつつ、1曲ずつ順に見ていきます。
(太字は各ブロックのまとめになっています)
ーーー<前半(キラッとした感じ)>ーーー
ーーー<後半(メッセージ性が強い・ずっしりくる)>ーーー
本編では、前半で触れた身近にある煌めきや、後半で見つけた自分らしさなど、セットリストの過程にある1つ1つのglow(日常にある小さな輝き)が道標の役割を果たすことで、1曲目のsunrise glowから、「光が集まって道になる」の言葉で表されるラストのglow(曲)までが、見事に繋がっていたように思います。
ーー<Encore>ーー
本編を、閉じこもったり(#01付近)、停滞してしまったり(#10付近)、試練にぶつかったり(#16付近)など、#19のglowの歌詞「まだ前にも進めはしないけど」の言葉通り、自分を見つめ直していた時間と考えると、アンコールは、ようやく前に踏み出す瞬間、明日をどうしていくかを提示しているようにも感じられます。
(特に、本編直後の#E1での飛び出し方とメッセージ性は絶妙でした。)
glowツアーのためにそれぞれの曲の歌詞が書かれた、という訳ではないので、少々飛躍している箇所があるかもしれませんが、全体的にはこんな感じのブロックに分けられるような気がしています。
また、このブロックごとのメッセージ性は、メイクと衣装によって、より一層、引き立てられていたと感じます。
個人的には、今までの水瀬いのりライブで、最も曲のイメージや構成をより際立たせていたメイク&衣装だと思いました。
セトリについては、一旦このくらいで。
こうして書き出して思ったのは、全編を通して既存曲がかなり上手く活かされているということで、本人も話していましたが、予想していた以上に『glow』と似たメッセージ性の既存曲をたくさん持っているなと。
一方で、「僕らは今」のように、今回のセットリストの中で、以前からメッセージ性が少し変化したと感じられる部分もありました。
(これに関しては5章で、詳細に触れようと思います。)
2.自分らしさを体現した『glow』
1章をまとめると、glowツアーのセットリストは、主に下記の3つのパートに集約されるように思います。
各パートでは、既存曲を上手く使いながら、似たメッセージ性の曲を並べることで、反復的にメッセージを強調しているように感じられました。
他方、アルバムglowについても、ライブと同じ①~③の3つのパートの要素を抑えており、1曲1曲のglow(日常にある小さな輝き)が道標の役割を果たすことで、光が集まって道になるglow(曲)に繋がるという流れは同じになっています。
(②中盤の可能性ある自由な未来というメッセージが、終盤に集約されている点や、①前半の身近な煌めき部分が、輝度の高低で分かれているというよりも、朝/夜の時間帯で分かれている(本人談)など、ライブにあった既存曲がない分、コンパクトにまとまっている印象です。)
さて、ここで『glow』の構成について改めて考えてみると、『輝き/煌めき』というワードこそ新たに登場したものの、『①身近の存在の大切さ』『②少しずつでも前に進むこと』『③自分らしく在ること』といったメッセージは、言い換えれば、まさに前回の記事で触れた『愛』『連帯』『前進』『自分らしさ』といった彼女のアーティスト活動におけるキーワードそのものであるように思います。
これは、glowツアーのセットリストの中の既存曲の存在に違和感がなかったことにも表れているように、過去から彼女が大切にしてきた変わらない信念・積み重ね・歩みそのものであると言えると思いますし、であるからこそ1曲1曲が彼女の道標となり得たのではないでしょうか。
(ちなみに、彼女がツアー千秋楽の神戸公演で、「ツアーを走り切った」を「歩き切った」にわざわざ言い直したのは、道標を見つける過程=走り抜けたのではなく歩みである、というところに由来するのかもしれません。)
3.カッコいい私への期待
ここからは、『glow』がどうしてこういった構成になっているのか、制作時の背景や、インタビューから見えてくる制作意図や経緯といった裏側にも触れながら、さらに掘り下げていきたいと思います。
先ほど挙げたキーワードの中で、特に『自分らしさ』については、この3年間の楽曲(僕らは今~REAL-EYES)を経て、聴衆を引きつける魅力として、より一層確立されてきた部分だと感じます。
まさにその時期に、ドンズバな『自分らしさ』をコンセプトにした、水瀬いのりを体現したかのようなアルバムを用意できた、という時点でセールス的には大成功であり、本人・チーム水瀬・キングレコードの手腕を感じましたし、後にも先にも、このアルバムこそが、彼女のアーティスト活動を語る上で最も重要な意味を持つアルバムになるという確信がありました。
一方、予想外だったのが、曲調や歌い方をこれまでと変えたこと、具体的には、思ったよりも強く主張してこないということでした。
というのも、前回のHELLO HORIZONツアーのMCで、「自分の音楽やキャラクターやライブを拠り所にしても良い」という頼れる存在としての強さを感じられる発言もあり、今回のアルバムは「私のように、みんなも自分らしく生きよう!」とか「私について来て!」と、少し先の、少し高いところから、アップテンポな曲調多めで、僕らに向けて力強くメッセージを訴えかけるようなアルバムに仕上げてくる思っていたからです。
今になって考えると、そういった力強さは彼女らしくないのでは?という意見にも頷けるのですが、18年の幕張→19年の武道館→20-21年の横浜アリーナと、恐ろしく早いペースで駆け上がりながら、ライブの度に成長していくパフォーマンスや、それに呼応するように増える若いファンからの支持を間近で感じていると、カッコよくて強いイメージが年々強くなっていて。
”自らよりも少し先、或いは憧れという1つ上の階層”から、自分らしく在ることを認め、肯定し、声高に、自分らしい生き方・在り方が良いと発信してくれる、僕らを率いるリーダーとしての期待のようなものを、感じていた方も少なくないのではないでしょうか。
同様に、レコード会社の側にも、似たような期待、将来図があったのではないかと思っています。
その起源には、彼女の歌唱力が広く認知されることになった「戦記絶唱シンフォギア」の「キャロル・マールス・ディーンハイム」役があると思うのですが、彼女はデビュー直後から、歌声の力強さやカッコよさに焦点を当てた楽曲が多かったように感じます。
また、昨今の、僕らは今~REAL-EYESにおけるチーム水瀬いのりの楽曲やライブ制作・プロモーションについても、『自分らしく在ることの大切さ』という彼女の強みを前面に出しながら、コロナ渦の、不安を感じやすく、光や希望となる存在が求められる時勢柄に合わせるように、導き手になるような、力強い曲調・メッセージで訴えかけるものであった気がしていて。
現国のタイアップが、仮に持ちかけられたものではなく、彼女のために獲得してきたものであるならば、一層その意味合いは強くなると思いますし、『自分らしさを大事に生きる』ことを体現する模範的なリーダーとして、聴衆の背中を押すような、強いメッセージを発信するアーティスト、という強みを活かせる方向性を与えたかったのかもしれません。
加えて、周囲だけでなく、彼女自身も、カッコいい水瀬いのりが期待されていたことを感じていたというような発言をラジオでしており、この期待を自認していたようでした。
4.ありのままの、ふつうの私
そういった期待に対し、彼女自身が何を感じていたのかですが、これについて、発売直後のラジオの発言を抜き出してみます。
大きなステージを経験し、たくさんの人の「期待」に応えようとし過ぎた結果、それが「壁」や「重荷」に感じるようになってしまっていた、言い換えれば、”力強く引っ張っていくカッコいいリーダー”という、アーティスティックな一面”だけ”を切り出した『ありのままでない、自分らしくない私』を自ら作り上げてしまい、それを続けてしまっていた、いうことなのかなと思いました。
また、こうも言っています。
こういう歌い方をする「から」好き、こういうことができる「から」好き、という行為や能力の話ではなく、私の在り方、私がただ在ることを愛してほしい、という、”正しく”、”ありのままの”私を見てほしいという感情があるように思います。
またそれは、『ありのままでない、自分らしくない私』が期待されているという、自分への過大評価や、完全無欠な印象で本質を塗りつぶす”神格化”への忌避感の表れであるようにも思います。
彼女が様々な場で、「私はふつうの人間」「みんなと同じ」という言い回しを使ったり、自らに対して「ネガティブ」「リーダー向きではない」といった、ダメな部分も包み隠さない姿勢を取ったりするのは、この、ありのままの私を見てほしいという感情の表れなのかもしれません。
(それ故に『glow』は、ありのままの「気張らず、だらっと、ラフに聞いてほしい」なのだと思いますし、ありのままの「弱さを許す」「今の自分でいいと肯定する」メッセージなのだと思っています。)
加えて、「(心も)苦しい」「自分を救う」という言い回しから、単なる物理的な歌唱法の話ではなく、心理的な面をも払拭したいということ、加えて、やや強い言葉選びから、どことない切迫感、自分が今後も音楽活動を続けていくために必要不可欠な変化であることが感じられる気がします。
(※本人も補足していましたが、彼女自身、過去の楽曲は大好き&今の歌い方で歌うのが楽しみと発言しており、楽曲自体に対してではなく、歌唱法への言及である点に注意して下さい。)
5.可能性ある、自由な未来
では何がきっかけで、その感情を留めておけなくなったのか、ということを考えた時に、それは、『ありのままでない、自分らしくない私』の存在が、彼女から見える未来の可能性を狭め、迷いや停滞感を抱えてしまっていたからではないかと思っています。
というのも、ラジオやライブのMC等を聞いていると、glow(曲)の歌詞の「未来に筋書きなんて何もいらない」という一節を、”特に”大切にしているような印象がありました。
これは、なりたい自分を見つけられない一方で、”力強く引っ張っていくカッコいいリーダー”という周囲から提示された/期待された、こうあるべきという道のり、この先に敷かれたレールのようなものが見えてしまった、そして、その上を進まなければ、という感覚を抱く自分に対して、glow(曲)により、そのレールから外れる、自由であることの赦しを与えられたような感覚があったからではないか、と考えています。
”ふつうの人間”において、考えは日々updateされ、変わっていくのが当然のものであって、一貫などしておらず、たくさんの矛盾を抱えているものですが、こと”アーティスト”においては、活動や信念・音楽性など、様々な部分に変わらないことを求められることが少なくないように思います。
また、例えば「カッコいいアーティスト」のような、特定の一言や肩書きで説明されることも少なからずあり、アーティストの特徴や魅力を端的に言い表す、特徴づけるという点では正しいのですが、多面性のない1コマに囚われてしまう一面もまた、あるように思います。
だからこそ、未来の可能性に触れたglow(曲)の詞が刺さり、だからこそ、”ふつう”であることを彼女自身が求めているように感じますし、いわば、今回の音楽性の変化は、単に音楽性だけに閉じた問題ではなく、自身の未来の可能性を拡張させるために必要不可欠な変化・拡張であり、延いてはそれが、今後の音楽活動が楽しみ、と言えることに繋がったように思うのです。
(昨今、彼女が良く口にする「今後が楽しみ」「ワクワクする」といった発言や、「新しい表現」「表現の拡張」という言い回しは、この未来の見え方が肯定的なものに変化したことによるものであると考えています。)
この変化を歌で感じたのが、『glow』における”僕らは今”の位置づけで、今回のライブで聴いた際、特に、「約束された栄光なんてないから」という歌詞の部分について、以前から変化している印象を受けました。
前回のライブツアー時点、つまりシングルとしての”僕らは今”対しては、「みんなで」「一緒に」といった『連帯』を表すようなキーワードが説明に添えられることが多く、「約束された栄光なんてないから」はどちらかというと、(コロナ渦で)一時的に失われてしまったものの尊さを噛みしめるように歌っているような印象でした。
一方で、アルバムglowの全曲解説のラジオのタイミング、つまりアルバム曲としてのこの曲に対しては、「僕らがこれから迎える新しい輝き、というところでメッセージが強くなればと思い収録した」と言及しており、ライブではWill・星屑のコントレイル、アルバムではglow(曲)のような、未来の無限の可能性を謳う曲と並べられていました。
言い換えれば、「約束された栄光なんてないから」が、レールをただ敷かれた通り進んだとして、その先にある栄光と言われるようなものは、私にとっての栄光ではないかもしれない(絶対的な価値を持つ栄光ではない)という、自由な未来を肯定する意味を含んでいるように感じましたし、そう考えると、アルバムやライブでの”僕らは今”の配置にも納得できる部分が多いような気がしています。
6.glowとは、水瀬いのり第二章とは、
さて、歌い方の変化の要因や必然性について色々考えてきましたが、その変化とは具体的にどのようなものだったのでしょうか。
「寄り添う」「隣で」という位置関係は、HELLO HORIZONツアーの頃にも滲んでいた『みんな(ファンと)横並びである』『上下ではなく隣、同じ目線の高さの関係性でありたい』という親近感を感じさせます。
いわば、『glow』を経て、力強く引っ張っていくカッコいいリーダーから、より”正しく”想いを届けられる、考えすぎず、ありのまま、自然体で、聞き手の日常に寄り添うような、歌い上げるのではなく語りかけるような、自分らしい伝え方へ変化した、ように思えるのです。
これは、実際の歌い方からも感じ取れる気がしますし、glowツアーの中でも、神奈川公演での「皆さんと同じハートを持ってますからね」というMCや、兵庫公演での「私が倒れそうなった時は(みんなが)支えてね」というMCにも表れているように感じました。
ここで重要なのが、序盤で話した通り、『glow』自体のメッセージ性は『身近の存在の大切さ』『少しずつでも前に進むこと』『自分らしく在ること』といった、既存曲と連続性があり、過去から一貫したメッセージであるということで。
つまりは、より自分らしい方法へと”伝え方”を変えただけであり、”伝えたかったこと”、メッセージ性、信念は何ら変わっておらず、「変化」といいつつも、自身を見つめ直し、最も自分らしい形に「再定義」した意味合いが強いように思います。
以上をまとめると、
『glow』とは、身近な日常にある煌めき、彼女が過去から大切にしてきた『自分らしく在ることの大切さ』を道標にしつつ、困難や試練にぶつかってもそれを糧に、可能性ある自由な未来へと踏み出そう、自分らしく輝こう、というメッセージを込めた作品
(煌めきは作品の前半、困難/試練は作品の中盤、自分らしさ/未来は作品の後半に対応しており、各パートは水瀬いのり自身の歩みとも重なっている)
であり、
水瀬いのり第2章とは、これまでの第1章で確立した『自分らしさを大事に生きる』というメッセージ性とズレつつあり、模索していた「伝え方」の部分だけを、『glow』を通して見つめ直し、再定義したことで、より自分らしい表現で自由に表現し、自分らしく輝いていくフェーズ
になるのではないかと、私自身は考えています。
特に、『glow』での音楽性の拡がりは勿論、ライブの舞台セットや衣装、演出へのこだわりは、まさにこのより自分らしい表現で、自由に表現できるようになった結果であると感じますし、今までの用意されたライブ構成では決してたどり着かないであろう、素晴らしいshowが見られたと感じましたし、実際に、可能性の拡がりに言及した場面もありました。
(2つ目の発言、自身のテーマカラーとも言える色を渡して、無限の可能性を表すような色に再定義する発言は、何とも象徴的だなと感じます。)
(追記)Single「アイオライト」の話
さて、昨日に発売したsingle「アイオライト」に関しても、まさにglowで可能性が拡がったからこそ手を出せたジャンル・表現であり、以前にも増して近い距離感の歌い方であるように思いました。
1曲目のアイオライトについては、「多色に煌めく」という歌詞が特に刺さったことがインタビュー等で触れられていることも、前述の「虹色」と同じく、可能性の拡がりを感じさせます。
2曲目のクータスタの歌詞については、色々な解釈ができると思いますが、個人的な第一印象としては、(ここまでで書いてきた)glowの制作の裏側にあった想いや背景、そして形にしてからの反響をも含んだ一連を、俯瞰から振り返っていると捉えられるように思いました。
であるならば、支持されているのは自分らしくない私であり、他人から満たされているように見えても、”わたし”は孤独で、期待は時に自分を苦しめていた、その中で、クータスタの”わたし”が、glowを制作した”わたし”・ありのままを選択した”わたし”を肯定している、とも取れる気がします。
(3曲目、運命の赤い糸に関しては、glowとは文脈が違うため省略しますが、「愛」の表現というところで、個人的に1番ライブで聴くのが楽しみな曲なので、みなさんも是非たくさん聞いてください。)
7.あとがき
まずは、ここまでお読みいただきありがとうございました。
上手く他人に伝わるものになったか不安ではありますが、無限にある解釈の1つを示せたことで、これを機に様々な感想が飛び交うと良いなと思っています。
本編で書いた変化については、肯定的に受け取れたという方もいれば、そうでない方もいらっしゃったように思います。
彼女が好きであれば『glow』を肯定的に受け取らなければならない、なんてことは当然ない訳ですが、一方で、この良さが多くの人に伝わるといいなとは思っているので、肯定的に解釈できる一助に、本記事が少しでも貢献できたなら幸いです。
かくいう私自身も、彼女の地声ハイトーンが惹かれる入口になったところもありますし、寂しさのようなものもあるにはあるのですが、例えばglowツアーで歌われた「春空」で、とにかく力で持っていくのではなく、歌詞に合わせて歌い方を使い分けるように変わっていたり、彼女の歌を日常聴きしたいなと思う瞬間が圧倒的に増えたりなど、変化の良い面も多く感じています。
何より、こうして音楽性が拡がっていくことは、特定のジャンルに偏らず、豊かな感情表現ができる”役者”の能力を最大限に活かす歌・輝き方になると思いますし、私自身はこの豊かな感情表現こそが、声優アーティストの歌が最高に良い理由であると思っています。
また、一助という点で、今回の変化のもう一つの可能性についても、ここで触れておきたいと思います。
というのも、昨年末のシンフォギアライブを訪れた際、個人的に良い意味でも悪い意味でも、キャロルの歌い方が以前のライブから変わったような印象を受けたのですが、これについてフォロワーさんと話す中で、彼女が理由なく役の歌い方を変えるはずがないという立場に立った時に、歌い方を変えざるを得ない理由があったのでは?という考えに至りました。
そして、その理由として最も考え易いのが、”喉への負担”であり、基本的に土日連続でのライブ公演がないこと、そして、”歌い方を変えたことで、土日連続でもできそう”という話になり、実際に2023年のツアーでその日程が組まれたことを考えると、これが歌い方を模索しなければならなくなった発端である可能性もあるのかなとも思います。
声優さんが喉をやってしまった、みたいな話を聞くことも、残念ながら昨今少なくないので、見落としていたのですが、当然、仕事の度にそうなっている訳ではない訳であって。
と考えた時に、ライブを2日続けては出来ないと感じるほどの負担がかかっていた、ということであれば、異常な状態であったようにも思えてきます。
例えば、同じ声優アーティストで喉が強いと言われていた水樹奈々が、30代のライブツアー中に声が出なくてしまったことや、歌手の持田香織が、高いキー設定と喉の酷使により、20代の頃の歌い方を変えたことなど、キー設定が高いアーティストが、若い時のまま、同じような歌い方を続けるのは難しいように思える部分もありますし、比較的深刻だったという可能性も無くは無いように思えて。
とはいえ、これは推論の域を出ませんし、仮に種明かしがあるとしても何年も先だとは思いますが、本編で触れたメンタル面が理由であったとしても、あるいはこういったフィジカル面が理由であったとしても、いずれにしても変わらないまま歌手活動を継続していく道は無かったように思っています。
最後に。
いずれにしても、彼女がこの道を歩んでいくことを選んだことについて思うのは、自分らしく生きる、すなわち、何に価値があるかは人が決めるのではなく自ら判断するものであること、誰かが憧れるものではなく、なりたい自分になる、ということで。
自分以外の大勢から支持される、駆け上がれる階段が用意されているということ自体、多くの声優アーティストが憧れるようなもので、理想の私に向かって、あるいはその理想の私も私の一部であると抱えて、階段を駆け上がる人もいるかもしれませんが、目の前の階段は違うと一度上るのをやめ、自分らしく輝ける別の道へと歩み方を改めたことには、彼女の勇気を感じましたし、どこまでも彼女らしい、自分らしさが表れているようにも感じました。
これこそが、自己肯定力高々、もとい、自己受容(self-acceptance)が出来る方だということを何より表していると思いますし、誰かの言葉を借りるのであれば「高く遠く飛ぶこと、それだけに囚われない、自由な未来へ歩み出した瞬間」であるように思います。
自分らしく在れる「今の」彼女が大好き。
彼女が自分らしく歩む道を、これからも応援していきたいと思います。
2023.4.21
.kura@smpgnm7
8.謝辞、参考資料
・terra様(@llterra98 / Blog -水樹奈々・水瀬いのり研究部)
自分が参加できなかった公演のMCや感想も細かく残して、聴かせていただいており、いつも助けられております。多謝。
・ゆーき様(@yu_kiyu_shi)
他界隈にも関わらず話にお付き合いいただき、某仙台/某横浜で投げかけていただいた言葉をきっかけに、こうして形にまとめる事が出来ました。多謝。
・ぷち様(@imagin_breaks)
今回の記事を書いている最中、いただいたreplyや投稿から、色々な気付きをいただきました。多謝。
・水瀬いのり MELODY FLAG 第1回〜第341回
https://www.youtube.com/playlist?list=PL8fgX9U51tx4wG4oIHXuP5v5D1jvCfP8V
・glow / hello horizon 簡単なライブレポ&ラジオ発言まとめ
https://togetter.com/li/2090613
・嫌われる勇気 - 岸見 一郎 (著), 古賀 史健 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4478025819/
自己肯定力高々(自己受容)について
・誰かについての話
https://note.com/pgnm7/n/n312e518b82b6
期待の階段をもう少し長い間上った人の話
・作者ホームページ
https://pgnm7.skr.jp/
過去のライブ・イベント歌唱履歴、セットリストなど掲載しています。
ライブの振り返りなどにご活用ください。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?