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僕らの時代を歌う、水瀬いのりちゃんの愛の表現と、信念と、変化の考察。


さて今回は、声優アーティスト、水瀬いのりさんに関する記事です。

水瀬いのり、という名前を聞いて、「近年、アニメに数多く出演している人気声優」という印象や、「特徴的なミックスボイスとコーラスワークの光る楽曲が印象的なアーティスト」という印象を抱く方も多いかもしれません。


そういったお芝居や歌について触れている記事は、それなりに存在していると思うのですが、今回はそういった外身の話ではなく、彼女の価値観や、人間性といった内面から、その魅力を読み解いてみたいと考えています。

本記事の前半では、主に歌の表現力について、各ライブツアーを経ての変化や、ライブで思い出に残った曲・セットリストの考察などをしつつ、掘り下げていきます。

また後半は、彼女の信念、持っているメッセージ性について考えながら、そのメッセージを現代で発信することの意味、そして何故、これほどまでに若い世代を惹きつけるのか、私なりに感じていることを書いていきたいと思います。


相変わらずの長丁場にはなりますが、どうぞよろしくお願い致します。



1.ファンからアーティストへ

私が彼女の活動を追いかけ始めたのは、2016年の秋、ちょうどラジオを始めた頃でした。

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昔からA&Gのラジオが好きで、彼女の番組も何気なく聴き始めたのですが、思ったことを遠慮なくズバッと言い放つお喋りがとても面白くて。

加えて、同時期にたまたま訪れた某工学院の学祭や、リゼロの番宣配信で、彼女のお喋りを聞いたのですが、(仕事中にもかかわらず)不機嫌さや苛々が声色や表情に滲んでしまっていたりなど、繕わない、飾らない振る舞いが特に印象的で、いい意味での正直さに、興味を抱くようになりました。


また、曲をじっくり聴くようになったのは、この時期に作っていた1stアルバム「innocent flower」がきっかけでした。

これまでのシングル曲もいい仕上がりではあったものの、詞に周囲の大人が用意した方向性のようなものを感じることがあったのですが、その点、このアルバムの1曲目に選んだ「春空」がとても印象的で。

特にサビの「自分のペースで良いから」という歌詞のフレーズは、マイペースな彼女にすごく合う彼女らしい詞に感じましたし、年齢以上に大人っぽさを感じる歌、素晴らしいメロ、今風のポップスバンドなアレンジも含め、個人的にすごく刺さる曲で、もっと聴きたい、知りたい、と思う大きなきっかけになりました。(日比谷の野音で聞いた春空は、今でもすごく印象に残っています。)


そんな水瀬いのりの、私の中での元々のイメージは、旧マネジメント時代のtwitterでのアピールや、イベントでのカラオケ歌唱などが先行していたために、ファンが抜けきらないまま前に立っている、というものだったのでした。

一方で、この頃からは、本人の口から憧れの人について話すということが、共演や食事などの機会を除いて、殆ど無くなったと記憶しています。

(むしろ、本人がその話題を意識的に避けているような印象さえありました。これに関しては、マネジメントがキングレコードに移ったのが大きかったのではないかなと思っています。)


今思えば、旧マネジメント時代に変に擦れず、好きな事・好きな人に向かって"真っ直ぐに”駆け上がってきたからこそ、今の水瀬いのりがあるようにも思うのですが、いずれにしても「ファン」としてではなく、「1アーティスト・水瀬いのり」としてステージに立とうとするのであれば、この先をどう歩んでいくのかを少し見てみたいなと思い、追いかけ始めてみた、という訳です。


2.歌を歌うから、歌を伝えるへの転換点

そんな経緯で訪れたライブツアー”BLUE COMPASS”でしたが、当時ライブを見ていて、少し気になったことが。

当日聞いた歌自体、CDにも劣らない素晴らしいものだったのですが、一方で歌っている時の視線が中空を漂っていたり、MCが距離感を置くようなよそよそしいものだったりしていて。

ステージ上では別の人格になる、というアーティストもいるとは思うのですが、ラジオやトークイベントでの飾らない、自然体な彼女から鑑みると、らしさがあまり感じられない、随分と距離のあるステージに感じました。

(後年のインタビューやラジオで、自分らしさに悩んでいた事が語られていたこと、また、時系列的に少し前の殺害予告の件や、塩対応と言われてしまうほどの人見知り加減等々、今となっては納得する部分が多いです。)


そんな彼女にとって、大きなターニングポイントになったと考えているのが、アルバム「Catch the Rainbow」での初の作詞です。

2番に「自分を信じられる場所」というすごく印象的な歌詞もありますが、ここで当時のインタビューを、いくつか引用したいと思います。

歌手デビューした当時は、私らしく歌おうと思っていてもどこか取り繕ってしまう部分があって、本当の自分の歌ってなんなんだろうと悩んでいたんです。…(中略)…どうして私はこの仕事をやっているんだろうと考えたときに、自分が歌いたいだけではなく、ファンの皆さんに「勇気をもらいました」とか「元気が出ました」とか言ってもらえるからなんだと気付いたんです。
https://natalie.mu/music/pp/minaseinori03

・ダメなところをみんなに見せていいんだなと思えるようになって…(略)
・1番をみんなに向けた歌詞にして、2番は自分に向けた歌詞にしようかな……と思って書いていったんです。
https://realsound.jp/2019/04/post-349403.html

ここ1,2年で弱さを見せられるようになった。知らずのうちに完璧でなくてはいけないとか、今思うと自分らしくしていると言い聞かせてそれに縛られていたようで、全然自分らしくないステージがあったが、今は自然とさらけ出せている気がするし、自由にのびのびしてると感じてもらえてると思うし、弱さを見せれる強さを手に入れたというか…
https://twilog.org/smpgnm7/date-201212 [2020/12 musiclineゲスト会]

それぞれのインタビューでは、ファンの存在の大きさであったり、そのファンに弱さを見せられるようになった、ということが、それまでとは違っているという「変化」として語られています。

ここで、ラジオなどでのお喋りから垣間見えた、「人見知りで警戒心の強い一面」と、「大好きな家族を大切にする一面」の2つの異なる顔を思い出して合点がいったのですが、この作詞をきっかけに、ファンを解像度の低い一括りの「聴衆」としてではなく、愛する家族や友人と同じ弱さを見せられる「味方」である、と彼女が強く認識したのではないかなという気がしていて。


実際に、このアルバムを引っ提げたライブツアー「Catch the Rainbow」の初日大阪公演で、明らかな変化を感じました。

(ライブ後、友人とも明らかにこれまでと歌が別物になった、と話したのをよく覚えています。)

当時のBlu-rayを見返していただくと、このライブを境に、1人1人をしっかりと見て、語りかけるように歌ったり、ファンに向けて手を伸ばして歌ったり、視線や仕草から、ただ「歌う」のではなく「伝える」という意識が感じられると思います。

味方かどうかという、心の持ちようひとつでそんなに変わるのか?と思われる方もいるかもしれませんが、私自身、歌というのはそういうものであると思っていますし、好きな事・好きな人に向かって脇目も振らず、”真っ直ぐに”駆け上がってきた少女にとって、この周囲の存在や周囲への感謝を強く意識したということは、大きな変化だったのでは、と思っています。


3.真に迫る愛の表現

また、前述のターニングポイントくらいの時期から、彼女の歌う「ラブバラード」が特に素晴らしいと感じるようになりました。

(水彩メモリーも茜色ノスタルジアも大好きです、、、)

他方、ラジオ等でのさっぱりした発言を聴いている限りでは、あまり恋愛にのめり込むような印象を持たなかったのですが(個人の意見です)、これほどの真に迫る恋や愛の表現を見ていると、役者としての演技力だけではない、何らかの裏付けがある気がして。


そんなこんなで2年が経ち(笑)、2021年に開催されたライブツアー”HELLO HORIZON”(HHツアー)に足を運びました。

HHツアーでは、「日常やRoutineを感じさせる曲」→「それが壊れていくような曲」→「自分を信じながら新しいステージへ進んでいく曲」と進んで盛り上がりを作りつつ、終盤へ進む構成が取られているように感じました。

(個人的には、この構成から、「ありふれた日常が壊れてしまったまさにこのコロナ渦において、自分を見失わず、みんなで一緒に乗り越えよう」という大きなメッセージ性を感じました。)

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参考)過去のセットリスト一覧

さて、その終盤においては、恋愛、親子愛、周囲への感謝を歌った曲などが並べられていますが、ここで思い出したのが、彼女の家族についてのエピソードの数々でした。


小学生の頃からA&Gのラジオに触れている私からすると、彼女のラジオでは、他の声優さんと比べて両親が話題に上がる事がとても多く、例えば両親へのプレゼントの話や感謝の言葉がよく出てきたり、家族に関してのエピソードを募集するコーナーが”常設”されていたりなど、家族を大切にする印象が強くて。

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そこで思ったのが、彼女の様々な歌の根底に、この「家族愛」があるのではないかということです。


例えばラブバラードを、「キラキラした華やかな恋愛」というより、「家族愛の延長としての愛であり恋」と捉えると、ラブバラードが真に迫っている理由も分かる気がしますし、恋愛や親子愛、周囲への感謝といった様々な愛が、「広義の家族愛」であると考えると、HHツアーのセットリストの終盤のバラバラな形の愛にも、統一感が感じられる気がします。

また、アンコールに並んだ、ファンの事を歌った曲・背中を押すような曲についても、先の章で書いた通り、ファンが家族と近しいカテゴライズに位置付けられているからこそ、感謝や励ましのメッセージに、寄り添ってくれるような、距離の近いニュアンスが乗っているように思えて。

(家族とのエピソードに加え、結婚願望や、子供が好き、という話も、この家族という見方の裏付けになるかもしれません。)

いずれにしても、こういった家族愛、あるいは広義な意味での愛は、水瀬いのりの今後の歌手活動においても、大きなファクターになるのではないかと思っています。


4.水樹奈々を追いかけない強さ

さて前半では、主に彼女の表現力について、その変化や魅力を考察してきましたが、ここからは、本記事のタイトルにもある「なぜ時代を歌うアーティストなのか」という話をしていきたいと思います。

時代を歌う、つまりアーティストとして、何かを発信できる”メッセージ性”が大事になってくると思いますが、ここで一度、彼女の先輩である「水樹奈々」というアーティストについて考えてみると、それは夢に向かって努力する事であったり、前のめりに生きる事であったり、挑戦を恐れない事であったりして。

(水樹奈々の持ち曲には、そういった姿勢を大切にする曲、そういった姿勢を励ます応援歌や、夢について歌う曲が多く存在します。)


では、水瀬いのりが持っている信念、メッセージは何か、と考えた時に、それは「自分らしさを貫くこと」ではないか、と私は考えています。

――そういう意味では、ちょっとゆきと似てるところがあるのかもしれないですね。
水瀬)そうですね。結構流されやすいし、ふわっとしているので(笑)。よくも悪くもマイペースというか、たまに自分のマイペース加減が原因で、痛い目に会ったりします(笑)。
https://gakkougurashi.com/special/special0019.html

("マイペースさ"と言った方が、ピンとくる方も多いかもしれませんが、世間的にはやや否定的なニュアンスで用いられてしまう事が多いので、今回は”自分らしさ”としたいと思います。)


CtR作詞時のインタビューにもあったように、彼女が”自分らしさ”に言及する機会は多いのですが、その点、特に印象的だったのが、アーティスト5周年記念で公開されたインタビューでした。

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https://ddnavi.com/inoriminase/ 

全5編をかけて、人物像を掘り下げる素晴らしいインタビューなので、是非一度お読みいただきたいのですが、ここではその一部を抜粋します。

――それが「この人(水樹奈々さん)みたいになりたい」とはならなかったんですか。
水瀬:なりたいなんて、軽々しく言えないです(笑)。「なりたい」でなれる人ではないですし、持って生まれた才能や魅力がある中、さらに幼少の頃からいろいろな努力と経験を積み重ねてきたからの今であって、ここから自分がどれだけ頑張っても追いつけないですよね (略)

――自分も同じ道を歩むけれども、同じ存在にはなれないとしたときに、水瀬さん自身はどうあるべきだと考えたんですか。
水瀬:この5年間で、自分を表現するにあたって迷ったり、「こんな女性になりたい」「こんなアーティストになりたい」っていう理想像を考えることもあったんですけど、結局わたしはわたしでしかなくて。根底は変えられないので、自分らしくいることで魅力的に見える人になるには、どうしたらいいんだろうと考えるようになりました。…(中略)…何かになろうとしない、背伸びしない自分を好きになってもらえるように、自然体なわたしを魅力的に見せられるように頑張っていくことが、これから先の目標です。
https://ddnavi.com/interview/701087/a/

引用から、”自分らしさを貫く”という信念の強さを感じていただけるかと思いますが、それと同時に、水樹奈々を追いかけて業界に入り、声優アーティストという文脈において、恐らく最も水樹奈々と近しいところまで辿り着いた水瀬いのりが、こうもあっさりと「なりたいでなれる人ではない」と、そしてその「理想像を追わない」と、言い切ったのが個人的に衝撃でした。

水瀬いのりをはじめ、ドームを埋めるほどのファンの多くが、水樹奈々の人柄や人間性を尊敬し、中には、そんな生き方を自らの理想として掲げるも、その理想と現実の自分のギャップに苦しむ、私のような人間もいる訳ですが、この言葉によって、追わなくていいのだと、それでいいのだと赦されるような気がして。

(確かに、分かりやすいところでは、ライブでの激しいダンスや、筋力トレーニングは、私にはできないとあっさり割り切っていますし、かたや向上心の塊、かたや向上心があるという言葉に納得感が無さそうな発言をするなど、全く違っていて。)


ただ、このインタビューを読んで、逃げている、諦めているのではないか、と吹っかけるのは違うと思っていて、誰かになろうとしない、"水瀬いのりらしさ”を貫こうとする彼女とって、水樹奈々の後継者かどうかという水樹奈々軸での些末な議論や評価は、そもそも意味すらないもの、ということなのでしょう。

むしろ、何かになれない、何かが足りていないという渇望から、自己を否定するのではなく、自然体の自分であろうとする、自分らしさを追求する姿勢は、(自分の至らなさや欠点といった、)ありのままの自分を受け入れる強さを感じますし、この弱さを見せられる強さを持った上での自分らしさは、もはやアーティストとして一流の信念であると、私は思います。


5.”時代”が求めるアーティストとは

そんな強い信念、メッセージ性を持つ彼女と、今という時代の関係性について、話をしていきたいと思います。

その点、HHツアーの宮城公演と神奈川公演の「僕らは今」の前後でのMCが、とてもよく彼女の考え方を表していると思いましたので、ここで取り上げます。

<神奈川公演>
・(ファンに対して)いろんな頑張る事、どうしても嫌だけど逃げたいけどやらなきゃいけない事、いっぱいあると思うけど、頑張りすぎないくらいで大丈夫だと思う。自分らしく楽しむことが、1番大事だと思うので…
・自分のことをたくさん愛してあげて、そして、自分の周りにいる人のこともたくさん愛してあげて…

神奈川公演では、自らを受け入れ、自分らしさを貫いている彼女から、みんなも自分を愛そう、自分らしさを忘れずに、という彼女らしいメッセージが伝えられました。

<仙台公演>
・「(僕らは今について)この歌はみんなで一緒に歌って完成する、だから今日は代表して1人で歌うね」
・「私、普段は本当に普通の人で、アフレコで共演している人にも気付かれないくらいだし、街中では誰にも気付かれない一般人」「なので週末のステージに立ってる瞬間だけ、芸能人みたいな感じ」

一方の仙台公演のMCはこんな感じでした。

これを聞いて、1つ目の「今日”は”代表して1人で歌うね」という言葉に、本来はみんなで歌う曲である、というメッセージが含まれていたのに加えて、2つ目が合わさることで、「(今日ではない日の)ステージを降りた私は、みんなと横並びである」というニュアンスが、このMCに含まれていたように感じられて。

彼女は「私は普通の人間」「私なんか」という言い回しを非常によく使いますが、これも上で書いた横並びの意識に近いというか、自分が特別視されたり人の上に位置づけられたりすることへの違和感なのではないかと思いますし、その違和感は、彼女が競争や他人と比較されることを嫌っている価値観に由来するものなのかもしれません。

また、周囲のスタッフに対して、「(対水瀬いのりに対して)技術や技を持ったみなさんが、それぞれの持ち場で能力を発揮することでライブができている」というような発言もあり、一人では何かを成せないという実感からくるものなのかもしれません。


さてここで、現代の社会について考えてみると、いわゆる20世紀型の、決められた通りにこなす”従順さ”や、一定のラインからはみ出さない”均質さ”といった個性を殺す方向性から、各々が個性を発揮すること、そしてそれを生かし合う、多様性を認め合う環境が重視されるようになったと、ここ数年で特に感じます。(組織論、Teamingなどにおいても語られる事があるかと思います。)

そんな中、神奈川公演で発信した「各々が自分らしく個性を生かそうという価値観」や、仙台公演で感じられた「人を上下の関係で捉えない価値観」は、まさに今、この現代で求められている事に近い気がしますし、それが自然なことになりつつある若い世代にとって、この水瀬いのりの在り方は、共感性の高いアーティストに値するのではないかと思っています。


また、そんな彼女が歌う曲には、”道のり”、”前進”、”連帯”、といったコンセプトに関するwordが頻出している事が、定量的なデータで示されています。

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terra氏による研究 - 【水瀬いのりさんの歌詞をテキストマイニングにより分析し特徴を考察してみた・2】, 水樹奈々・水瀬いのり研究部, 2022


「自分らしさを生かし合う事が求められている時代」に、「自分らしさを貫いて突き抜け、夢にたどり着いた水瀬いのり」が、「自分らしさを訴えつつ、”道のり”、”前進”、”連帯”、といったメッセージ性を持つ曲を発信する」、ということには、ものすごく大きな意味があるように思いますし、このメッセージを発信するのは、他ならぬ彼女でなければならないとさえ感じます。

(以前の特番での鷲崎さんの言葉を借りれば、これこそが、「僕と君の物語」ではなく「大きい物語」を、「僕」ではなく「僕ら」を、水瀬いのりが歌える理由なのではないかなと思っています。)

6.頼れる強さの話

さて、最後にもう1つだけ話題を。

今回、こうして記事に書き起こそうと思ったきっかけでもあるのですが、HHツアーの千秋楽で、彼女がアーティストとして、1つstep upしたと感じた出来事がありました。


これまでの彼女は、ここまでに書いてきた通り、表現力やメッセージ性といった、一流のアーティストとしての素養を十分に持っている一方、やや口下手であったり、或いは5章で取り上げた「私なんか」という遠慮がちな一面があったりなど、前に出る事が苦手な印象もあって。

ですが、千秋楽ダブルアンコール後のMCでは、いつにも増して、自分の想いを”言葉として”伝えてくれたのに加え、「自分らしさを忘れそうになったら、私の音楽を聴いたり、私のキャラクターを見たり、このライブに来たりして、あの頃の大切な気持ちを思い出してくれる、そんな場所になれば嬉しい」という発言まであって。

こういった「自分を拠り所にしてもいい」というニュアンスの発言をはっきりと口にしたことは、これまであまり見せてこなかった「頼れる存在としての強さ」だと思いましたし、上下の関係としての上ではなく、あくまでも集団の一員でありつつ、その先頭・少し前を歩いてくれているような、頼もしさ、強さを感じました。

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(最近公開された、少し前を歩く印象を与えてくれるこのビジュアル、個人的にすごく気に入っています。また、ライブというものの面白さは、こういうものがふと垣間見えるところにもあるんだよな…と思います。)


そんな大きな?前進に、心からの敬意と敬愛を表しつつ、今後ますますの彼女らしい活躍に期待し、本記事の結びとさせていただきます。


7.あとがき

まずは、ここまでお読みいただきまして、本当にありがとうございました。

まとまりのない文章ですが、溜めに溜めていた自分の考えていたこと、感じたことを、一通り書き出せたのではないかなと思っています。


この記事を書いていて思ったのが、いのりちゃんは今の声優アーティストの在り方に逆行している、ということでした。

近年の声優アーティストは、この界隈の市場規模が、ある程度膨んだこと、それにより競合が増えたこと、に加えて、1to1マーケティングと言われる時代性などから、売り方が細分化されつつある印象だったのですが、そんな中で、王道ど真ん中でやろうとしていること、そしてそれが可能な人物を見つけ出したマネジメントも本当にすごいなと思いました。

(BC時代こそ方向性に悩んでいた印象がありましたが、武道館も横浜アリーナもあっさりと埋めてしまいましたし、単純な歌や演技の能力はもちろん、今の若い世代を惹きつける人物だと見込んでいたキングレコードの先見の明、さすがと言わざるを得ないですね…)


さて、本当に最後になりますが、ここに書いたのは私一個人のただの考察でしかなく、私以上にいのりちゃんを見てきた方、私とは違ういのりちゃんを見てきた方、今までに触れた媒体、何よりその捉え方よって、無限に解釈が変わってくるものだと思っています。

考察がまだまだ浅い、的外れだ、というご意見もあるかと思いますが、これによって私とは違う色々な意見が聞けたり、議論が活性化したりすれば本望ですので、みなさんが考えている想いや、みなさんしか知らないいのりちゃんについて、もし良ければ私に聞かせていただけると嬉しいです。

(本記事の感想なども気軽に頂けると嬉しいです。)


若干26歳というところに驚かされつつ、まだまだ旅の途中にあるであろう水瀬いのりちゃんを、今後も細々と応援していきたいと思います。


2022.3.20
.kura@smpgnm7


8.謝辞、参考資料

・ダ・ヴィンチ様インタビュー記事
 https://ddnavi.com/inoriminase/ 
 大きく影響を与えてくださった素晴らしい記事。是非1度お読み下さい。

・terra様(@llterra98)、チャモ様(@tapestry0121)
 仙台公演後、午前3時まで交わした議論、最高に有意義でした。多謝。

・水瀬いのり MELODY FLAG 第1回〜第282回
 https://www.youtube.com/playlist?list=PL8fgX9U51tx4wG4oIHXuP5v5D1jvCfP8V
 まいしゅうのたのしみです。

・HELLOHORIZON感想群
 https://twilog.org/smpgnm7/search?word=%23hellohorizon&ao=a

・水樹奈々さん考察記事
 https://note.com/pgnm7/n/n312e518b82b6
 いのりちゃんとは全く違う流れで、自然体であろうとする話をしてます。
 (改めて見返すと正反対くらいに違って面白いです…ご紹介まで。)

・作者ホームページ
 https://pgnm7.skr.jp/
 過去のライブ・イベント歌唱履歴、セットリストなど掲載しています。


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9.頼れる強さの変化についての補足(23/11/8追記)

6章に書いた頼れる強さの話に関してですが、glow以後の展開を知る方にとっては彼女を評する言葉として、少々違和感があったかもしれません。

実のところ、これを書いた私自身もその違和感を抱えて過ごしていたのですが、2023年の末のラジオで、「自分のなりたい自分とかみんなに好かれている自分が”こういう人物”っていう理想像とかたくさんあって、そうなろうかな、そうなりたいってタイミングも勿論あった」と振り返っており、この記事で執筆した感じたものがかつて確かにあったこと、そして、それ以降変化していったこと、を表してくれているように感じました。

第二章の記事も合わせて、ご覧いただければ幸いです。


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