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映像を感じる照明デバイス「Film Lamp」ができるまで
ピラミッドフィルム クアドラのプロトタイプ開発チームが、外部のスペシャリストを招いて、協同開発にトライするプロジェクト。
記念すべき初回のゲストはプランナー / アートディレクターであるブルーパドルの佐藤ねじさん。監修にBASSDRUMの清水幹太さんを迎え、ついに第一弾プロダクト「Film Lamp」が完成しました。
「Film Lamp」ってどんなプロダクト?
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映画やミュージックビデオやゲームなどの映像から、色・光・音を取得して、室内用のライト・BGMに変換する照明デバイスです。
このアイデアはねじさんの下記のような考えから始まりました。
ある目的で作られたコンテンツが、意図せずに別のコンテンツとしても機能するということに興味があります。ゲームやDVDは「光と音が記録されたデータ」なので、映像として観ること以外にも、超低解像度のメディアで映せば「かすかに映像を感じるような照明」になるのではないかと思いました。動的に色が変わる照明だけど、その色の動きにかすかに映画のワンシーンを感じるような、動画とインテリアの中間のようなプロダクトになるのでは。(佐藤ねじ)
まずは企画会議
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最初に行ったのは企画会議です。ねじさんが日頃こんなことやりたいと思っているアイデア・スケッチをプレゼン。たくさんの面白いアイデアにニヤニヤ・ワクワクしながら会議が進みます。
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その中で、フィジビリティ(実現可能性)や、予算・工数・チームのスキルセットを考慮し、最終的には出目の面白さも決め手となって、「Film Lamp」をつくることに決定。
なお、当時の企画名称は「ファミ〇ンライト」。カセットから読み込まれる8bitな色・光を取得して、部屋のライト・BGMに変換することで、技術の金継ぎをしていこう、というものでした。
ファミ◯ンは権利に引っかかりそうなので、映画DVDに変えて実装するということで、プロトタイプの制作に取り組むことになりました。
検証機を作ってみよう
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ねじさんのイメージは、あくまでカテゴリは照明であり、映像のプロジェクションではないということ。
うっすら映像が流れているように感じられる抽象度の高い不思議な照明ということで、空間演出的にフロア全体を演出する装置なのか、単体でいろんな光に変わっていくのを楽しむ装置なのかを議論。
そのため、まずはDVDの情報を変換し照明が光るシステムの構成を起こします。それを元にごくごく簡易的な実装を行って検証機が完成。
検証機を元に「画面の色をどこまで分割するとうっすら映像が流れているように感じられるか」など最終形がどのようなものになるかを協議していきます。
そして決定した指針が下記の4点。
【外観】
パッと見たときに照明装置として認識されるのがベスト
【映像出力】
ルービックキューブのように映像の色をグルーピングして分割
【音声出力】
生っぽくならないように加工して出力
【サイズ】
大きすぎないアロマディフューザーくらいのサイズに
こちらの指針に従った上で、プロトタイプを作成することになりました。
プロトタイプは2パターン
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オーダーがあったキューブ型と、こちらからの提案でドーム型のデバイスの2パターンを作成して、ねじさんにチェックしてもらいます。ドーム型は振動スピーカーで音を出す造りで「生っぽくない音」を実現。ねじさんがイメージ通りだったようで、喜んでもらえました。
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2パターンを比較した上で「プロダクトのバリエーションとして2つあってもよいのではないか」という結論になり、それぞれに対して修正点の洗いだし、いよいよ完成品作成に臨みます。
最終アウトプット完成
ブラッシュアップを経て、ついに完成した「Film Lamp」がこちらです。
プロジェクターとインテリアの中間のような、移り行く色の動きにかすかに映画のワンシーンを感じるような素敵なプロダクトになりました。
同じアイデアを元にしていても見せ方でだいぶ雰囲気が変わるな、という驚きもありました。
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プロジェクトを終えて
今回は、アイデアを形にするプロトタイプ制作について、具体的にどういう流れで進行するかを、佐藤ねじさんとの協業プロジェクトを通じてご紹介させていただきました。
ピラミッドフィルム クアドラでは、「これやってみたい、試してみたい」や、「こういう課題を解決したい」といったご要望に対して、アイデア創出からプロトタイプ制作、検証をお手伝いする仕事も行っております。
ご興味をお持ちの方は是非お気軽に、弊社インフォメーション (info@pfq.co.jp)までお問い合わせください。
STAFF
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佐藤ねじ(さとうねじ) | プランナー / アートディレクター
1982年生まれ。Blue Puddle Inc.代表。「アナログデジタルボドゲ」「CODE COFFEE」「変なWEBメディア」「5歳児が値段を決める美術館」「Kocri」「貞子3D2」など、様々なコンテンツを量産中。著書に『超ノート術』(日経BP社)。
(この記事の内容は2019年8月22日時点での情報です)