シリーズ・師匠
師匠はとても厳しい人でした。
昭和の叩き上げで、鉄拳制裁も辞さないというのがモットーです。
『師匠、もっと柔らかくて甘いパンの方が売れますよ』という私に、
「おいおい、お前さん、ちょっとこっち来い。お前さんがやりたいのは、パン屋かい?それともbakerかい?」と師匠。
『へい、あっしがやりたいのはbakerです!』
「だったらお前さん、小麦のパンを作らなあきまへん。」
『へい、師匠!すいませんでした!』
そんな風な頑固な師匠でしたが、
ある日甘いパンや惣菜パンをたくさん買ってきてくれまして、みんなで食べました。
「どうだい、柔らかいパンは食べやすいかい?」
『へい!美味しいです!』
「でもなトーヤマ、甘いパンなら誰でも作れる。お前さんのパンは、お前さんしか作れん。そんなパンをわかってくれる人は必ず居るから心配するな」
『へい、ありがとうございます!』
「ほな、口直しにワシの焼いたパン食べるか?」
『へい、師匠。でも、腹がパンパンです…』
#ペトラントーヤマ
#手捏ねパン
#国産小麦
#三重パン屋
#店主ほのぼのエッセイ2023
この物語はフィクションです。
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