いつか…
無謀な子猫が哲学書に前足を出した。
それも西欧中世の。五里霧中、
でも夢中。時として猫たちにまで届く
暁光に魅せられて(⁺)。
著者はいう。〈よろこび〉と〈かなしみ〉は
感覚ではなく、心に深く根づいた思い
それゆえ魂に留まり続ける……
天使たちの〈よろこび〉〈かなしみ〉のように。
いつか、重過ぎる体をこの地に残し
いのちの根源に帰っていくとき、
子猫も抱いていますように
幾多の出会いの〈よろこび〉と
狭小な自身の〈かなしみ〉を
いま一度の詩(うた)に変えて。
(⁺)トマス・アクィナス『神学大全』