見出し画像

ペットxスタートアップ海外事例の詳細解説 D2Cドッグフード「The Farmer's Dog」

いつもは海外のペット スタートアップのデイリーニュースを紹介していますが、特定1社を少し深掘りしてみるシリーズも走らせていきます。

今回はペット スタートアップにおいて最も盛り上がっている領域の一つだと思います、D2Cのペットフードのサブスクリプション。

日本でもプロダクトが増えて、ロンチや資金調達の記事でたまに見かけます。私も猫の飼い主として毎月カリカリ(ドライフード)を買いますが、頻繁にブランドスイッチするものではないですし、消費量も予測でき重いフードは運びたくないので定期購入してしまおうと、これと決まれば自ずとLTVは高くなります。日本のペット市場1.5兆円の20%超(約3,500億円)を占めるペットフードの市場規模や、健康食に関するトレンドも追い風に、さらに、Recession-Proof(不況にも強い)な領域でもあり新規参入が増えるのは合点がいきます。

The Farmer's Dog

さて今回紹介するスタートアップはThe Farmer's Dog。犬を対象として新鮮で健康的なペットフードをD2Cサブスクリプション型で販売しています。その特徴を見ていきましょう。

画像1

・会社名 : The Farmer's Dog, Inc.
・本社 : ニューヨーク(アメリカ)
・設立年 : 2014年
・創業者 : Brett Podolsky, Jonathan Regev
・調達状況 : Series B
・調達合計 : $49.1M
・投資家 : Forerunner Ventures(Seed)、Shasta Ventures(Series A)、Insight Partners(Series B)他

すでに100人以上の従業員を雇用し、1,000万食以上の販売実績を持つThe Farmer's Dog。共同創業者の一人Brettは大学の学部卒業2年後にThe Farmer's Dogを起業、もう一人の共同創業者のJonathanは起業前にはドイツを拠点にするスタートアップスタジオRocket InternetでEntrepreneur-in-Residenceとしての経験者のよう。2019年1月にはペットテックでは異例の規模、$39Mという大型の資金調達を実施し話題になっています(それまでの大型調達はCtoCマッチングのサービスを手掛けるWagRoverで$100M+)。

Human-Grade Food

彼らのフードの特徴は以下4つのキーワードで示されています。Real Food、Made Fresh、USDA Kitchens、Vet Approved。

画像2

Real Foodとは、言い換えるとHuman-Gradeのことを指しており、Human-Gradeとは、法的な定義は無いようですが人間でも食べられる(ぐらい安心な食べ物)という意味合いでよく使用されます。なので、健康志向なペットフードを手掛けるスタートアップを形容する際、Human-Grade Pet Food Startupのような表現を見ることが多いです。

さらに細かく見ていくと以下のようにあり、ここでも「Tested on Humans」とHuman-Gradeであることを訴求していることがわかります。

画像3

パーソナライズという顧客体験

上記の特徴説明でも「Personalized Plans」とあるように、The Farmer's Dogの商品を購入する際、5分ぐらいで終わる簡単なアンケートに答えることで、自身のペットに最適なフードが推奨されるという顧客体験があります(これ自体はカスタマイズ型D2Cの定番のプロセス)。アンケートの内容は、性別や体重や体型や犬種の情報、そして、日頃食べているフードや、普段の運動量、現在処方されている事柄、等です。最終的なレコメンデーション画面は以下のようなものです。このケースは、ターキー、ビーフ、ポークを混ぜたプランが推奨されました。ペットフードを選ぶにも種類が多すぎて何を選んだら良いかわからない、という悩み事に対する解決策ですね。

画像4

価格観

初回2週間は無料トライアルがあり、その後は$17.77 per weekとあるので、ざっくり1日$2.5(1ヶ月$75)という価格設定です。物価の違いがあるので単純比較できないですが、今の自分を鑑みると、毎月のフードの出費は、グレインフリーのカリカリ2kgが3,500円とドライささみが2,000円で計5,500円ぐらいの出費なので、20%ぐらいプレミアムがつく感じかあ、仮に犬の飼い主であればトライアルで食いつきを見てみて試してみてもいいかな、という、一人の飼い主目線での個人的な印象です。

数字で見るThe Farmer's Guide

開示されている数値は少ないですが、Forbes(2019年1月時点)での報道を見ると以下のような情報があります。

・顧客の約半数は12ヶ月間の継続購入をする
・毎月配送するフードの数は数百万単位
・この時点でのYoY成長率は500%

今後の展開

資金調達の状況を見るにすでに健全なユニットエコノミクスが達成されていると推測します。今後はより製造や物流面での合理化を進めつつ、「Human Grade Dog Foodと言えばThe Farmer's Dog」という第一想起をとっていくようなマスマーケティングにも注力していくのでは。一方で、グローバル展開を考えると、新鮮なフードの製造や物流はローカライズする必要があるので、どんな手を打ってくるのか。今後も注目です。


関連記事は以下から。


いいなと思ったら応援しよう!