【映画の中の詩】『巌窟の野獣』(1939)
映画の中の詩、詩の中の映画
『巌窟の野獣』(1939)はアルフレッド・ヒッチコック監督。原題は『Jamaica Inn』。
ヒッチコックの英国での最後の監督作品ということですが、私のいちばんの感想は「モーリン・オハラがきれいだった」ということで、ヒッチコック作品としてはもの足りない出来かと。
面白くないことはないのですが・・・。
そのモーリン・オハラはこれが映画初出演作。彼女はこのとき19歳。まさにバイロンの詩 "She Walks in Beauty" の如き美しさ。
バイロンの詩はまるで映画の撮影監督のように光と影の演出で一人の女性の気高さを浮かび上がらせようとしている。
それと、以前レヴューした『夜は我がもの』(1951)のラストに引用されていたヨハネによる福音書「 Lux in Tenebris(闇の中の光)」なども私は連想しました。
映画の中に詩を探していると、これまで平凡だと思っていた詩や詩人が生き生きと存在を主張しているのに出会う。
「詩とは何か」と自分に問うのもいいが、そうすると、どんどん内向きになっていって「現代詩は難解なもの」というような結論に陥りがち(かつての自分)になってしまう。
それよりも「詩はどこにあらわれるのだろうか」と探し物でもする気になれば、もっと詩を豊かに楽しむことが出来るのではないだろうか、とこのごろは思うのです。
参考リンク
「歩むあの人の美しさは」『バイロン詩集 (青春の詩集 ; 外国篇 13)』 小川和夫 訳
https://dl.ndl.go.jp/pid/12583421/1/37
「She Walks in Beauty」(英和対訳)『英米名詩集』稲村松雄, 荒井良雄 編, 加藤恭平 訳
https://dl.ndl.go.jp/pid/1672478/1/65
「あのひとの歩みは美しく」『バイロン詩集 (世界の名詩集 ; 2)』吉田新一 訳
https://dl.ndl.go.jp/pid/1673566/1/80
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