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【続き】 その翼を折らないで

(前記事から続きます)
(前回記述した個人的出来事の顛末なので、結論だけ読みたい方は次記事に進んでください)

翌日(金曜日)の出来事

わたしは自分の涙腺が壊れきってしまったことに衝撃を受けながら、
めちゃくちゃ会社を休みたいと思ってましたが、
今日行かなかったらもう二度と会社行けなくなるような気がして、シャワーを浴びて、服を着て出社しました。

会社の人に涙は見られたくなくて、フロアに入る前に泣き止もうと必死になり、深呼吸してデスクまで向かいました。
これは自分でも驚きでしたが、フロアに入る前には動悸がして、手が震えました。
なんとか一旦体裁を整えられたと思いましたが、
デスク前で上司の顔を見て挨拶しようとした瞬間に、
また涙が溢れてきて、急いでトイレに向かいました。
こんなに涙を我慢できないのは初めてでした。
自分の心の中の一部が破壊されてしまったような感覚があって、
涙腺も壊れた蛇口みたいに制御が効きませんでした。

上司はわたしの様子で何かを察したようで(飲み会には不在でした)
昨日の飲み会でたくさん飲まされたの?と聞かれましたが、
わたしは答えられませんでした。
昨日のことを誰かに言うべきなのか、このままなかったことにすべきなのか、自分の中でまだ整理がついていませんでした。
会社の中で誰を信じていいのかまだわからなかったし、
誰も信じられないような気がしました。
前日の飲み会で他の女性社員の悪口を聞いていたので、
自分が昨日の出来事を人に話したら、自分も悪口を言われるだろうと思った。
入社したばかりなのに、もう孤立するなんて耐えられそうにないと思った。

とにかく泣き止んで仕事をしなきゃ、と思いましたが、
我慢できず、わたしは涙をだらだら流しながら、
割り振られた仕事を午前中いっぱいこなしました。
昼前からは、たまたま東京の研修に向かう予定となっていました。

午前中、客先の事務手続きに上司が連れて行ってくれることになりましたが、
その間も溢れてくる涙をごまかしていました。
その帰り道で、わたしは上司に相談することを決意しました。
こんなに泣いてしまって、今更「何もない」なんて通らないだろうと思いました。孤立するのは怖いけど、「このまま誰にも話さないで耐える」と言う選択肢を思い浮かべる度、一層屈辱的な、惨めな気持ちになりました。
そんな気持ちにこの先耐え続けていくのは辛いし、社外にいて二人きりという今言わなかったら、この先もっと言いづらくなるだろうと思いました。

話があるというと、上司はチェーン店のカフェに立ち寄って話を聞いてくれました。
わたしが泣いていて、周りの視線が痛かったと思います。申し訳ないです。

わたしは、
・大ごとにしたくないし、会社でうまくやっていきたいが、
 今後もこんなことがあれば我慢できる自信がない。
・そういうことをされるのは嫌だということを相手に伝えたいが、
 どう伝えればいいかわからない
と説明しました。
その話は一旦上司預かりとなり、わたしは東京の研修に向かいました。

上司に訴えたことがバレたら、研修に行っている間、
わたしはどんな悪口を言われるのだろうかと思いました。
また、月曜日に戻ってきて出社したら、その時には周囲に嫌われているのだろうかと考えました。
それはとても怖かった。
だから、出発前、わたしはその不安に対する精一杯の誠意として、
そして精一杯の嫌味として、木曜日に一緒に飲んだメンバーたちのデスクに向かって深々と頭を下げたのを今でも覚えています。思いっきり涙止まらないまま。
「昨日はありがとうございました。お疲れ様です」
何人が聞いていたのかわかりませんが。
自分にとって、自分の尊厳を示す唯一の行動のような気がしました。

そしてその後の顛末

奇跡のようなタイミングで東京に戻り、
金曜の夜から週末を実家で過ごすことができたラッキーなわたしは、
両親や友人にアドバイスを仰ぎました。
まだ自分自身かなり混乱していて、
その週末は涙が止まらない状態が続き、食事もほとんど食べられず、時おり動悸や震えがありました。
自分で、「”このくらいのこと”で、こんなに?」と思いました。
研修中の疲れた様子を見て心配して話を聞いてくれた同期や、
深夜まで家族会議を開いてくれた両親には感謝の気持ちしかありません。
わたし以上に憤ってくれて、おかげで救われた気持ちがありました。
恵まれていたと思います。
もう月曜に出社したくない、と心から思いましたが、
周囲からのアドバイスもあり、まだ仕事続けてみよう、頑張ろうと思えました。

月曜出社すると、飲み会にいたメンバーの上司から謝罪を受けました。
また、飲み会にいたうちの複数名から声をかけられ、謝罪を受けました。(いずれも酷いことを言った当人ではありませんでした)
驚いた気持ちと、それでなかったことにできるわけではないという気持ちの間で、複雑な心境でしたが、少しほっとしました。
相手になんの処分が下されるわけでもないけど(そしてそれを望むわけじゃないけど)、悪いのは相手側だと会社が認めてくれただけで、
職場で孤立する恐怖が少し和らぎました。
月曜日の朝出社するまで数日間続いていた涙や動悸、食欲不振も少し落ち着き、
回復していきました。

そしてその後も、わたしは「セクハラ」と感じる発言に時おり触れ続けます。
飲み会での出来事があってしばらくは、自分でも拒絶反応がすごく強かったという自覚があります。
まるで、一定以上の量の成分を摂取した事でアレルギー反応を発症するように、
もう自分の中で満杯のゲージを超えてしまったようで、
そういう発言に、今までよりも強い拒絶反応を示し、敏感になっていました。

しかし、時間が経つにつれ、飲み会での一件とは別に、仕事等での交流が深まっていき、その中で職場の人たちと人間関係を築くようになっていきました。
わたしは、その飲み会で起きたことは許せそうになかったし、今でも許しているわけではないです。今でも思い返すと涙が出るときがあります。
でも、そのことは置いといて、仕事での付き合いは続きます。
その中で、飲み会にいたメンバーとも、只々飲み会の件で憎らしかった感情と不信にとどまらず、別の関係(仕事上のある種の信頼関係?)が出来てきました。
相手側も、職場でのわたしを応援してくれていると感じることが多いです。(仕事を頑張っていると認めてくれた…?)
職場での雑談など、コミュニケーションもよく取るようになりました。

今では、たまに「セクハラ」に値すると思われる性的に不快に感じる発言をされても、思ったことを堂々と言い返せています。それは、社内で色んな人と仕事を通して信頼関係を構築した事により、思ったことを言ったとしても、味方がいる事に確信を持てるからです。
気持ち悪い、と思うことはあるけど、「セクハラ」と指摘したって自分だけが不利になるともう思わなくていい。だから、それほどストレスとは思っていません。
それは、職場で生きていくためにわたしが編み出した処世術であり、距離の取り方です。
これが正しいのかはわかりませんが、
とにかくわたしの居場所の探し方で、自分の今できるベストだと思っています。

(次の記事に続きます)


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百々子
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