見出し画像

『国際協力のリアル』イベントレポート 原貫太さん講演編

2024年6月8日(土)、九州大学にて、ペシャライトと哲縁会が主催し、「国際協力のリアル」というイベントを開催しました。原貫太さんと中村先生の実践を通じて、国際協力の現実について考えるというテーマのもと、約30名の高校生、学生、院生の皆さんにご参加いただきました。本投稿では、講師としてお招きした原貫太さんによる「本当に意味のある社会貢献―SDGsを語る前に知るべきことがある」という講演の内容をご紹介します。


▼『国際協力のリアル』主催団体の紹介

哲縁会とは、中村哲さんの出身大学である九州大学で、中村哲医師の志を次世代に繋いでいくために活動しているサークルです。ペシャライトはオンラインの団体なので、私たちだけでは福岡での対面でのイベントの開催に限界があると考え、哲縁会と一緒に主催することになりました。お互いの特徴を生かし、結果的に最高のコラボをすることができました!

▼中村哲さんの紹介

改めて、中村哲さんの紹介をしました。今回は国際協力をイベントのテーマにしていたので、中村哲さんについて詳しく知らない、という方もたくさんいました。こうして今まで知らなかった人にも少しずつ中村哲さんの想いを伝えることができてよかったです。

▼講師・原貫太さんの紹介

今回のメインパーソナリティー、原貫太さん。原さんは、アフリカを中心に世界各地で取材し、主にYouTubeを通じて国際協力について発信されている「フリーランス・国際協力師」です。現在2024年9月時点でYouTubeのチャンネル登録者数は30万人を超え、今や国際協力業界のインフルエンサーと言えるでしょう。そんな原さんをお招きし、国際協力について私たちと一緒に深めるイベントとなりました。

今回のイベントの流れは次のような形です。

今回の記事では、1,の原貫太さんによる講演の内容をご紹介します!


【原貫太さん講演】「本当に意味のある社会貢献―SDGsを語る前に知るべきことがある」

原体験は学生時代に感じた無力感。

 まず原さんが国際協力に関心を持つようになった原体験についてお話しされました。原さんは文学部出身で、教員になろうと考えていました。しかし、大学生の時に1週間のフィリピンでの海外ボランティアに参加したことが人生の転機になったといいます。

ボランティアにて
「ボランティア活動に充実感を覚えて帰国しようとした最終日、7歳くらいの女の子に物乞いをされました。自分が1週間経験見てきたことの他にも目を向けるべき課題があるのではないと感じ、後悔の念を覚えました。また、世界の格差について「仕方ない」という一言では終わらせず、しっかり向き合いたいという気持ちが芽生えました。この経験を他の人にも伝えたい。しかし、Twitterでその経験を共有したものの、他の大学生が遊んでいるといる投稿にはたくさん「いいね」がつくにも関わらず、自分の投稿にはほとんどつきませんでした。このことに無力感を感じ、この現状をもっと伝えたいという気持ちが、今の活動の原体験になりました。」

対症療法という疑問

原さんは、以前は現場での支援活動を中心にしていましたが、現在ではYouTubeを通じて情報発信に重点を置いています。その理由についてお話されました。

「その理由は、アフリカでの活動に限界を感じたことです。私がウガンダで支援活動をしていた当時、難民を強いられている人は200万人にも上っていたにも関わらず、私たちが支援できたのはたった400人でした。これは対症療法に過ぎないのではないかと疑問を持ち、様々な問題の根本的な原因を理解し、取り除いていかなければならないと考えるようになりました。だからこそ、自分自身が活動するのではなく、人々の世界の現状を広く知ってもらうことで実際にアクションを起こすことができる情報発信に軸を移しました。」

国際協力と身近な生活との繋がり

次に原さんは、洋服やスマートフォンといった身近な物を通じて、世界の問題について話されました。私たちがよく利用しているファストファッションの多くは、中国や東南アジアの工場で作られています。しかし、バングラデシュでの低賃金やラナプラザ崩落事故に象徴される劣悪な労働環境が今も続いており、十分な補償金が支払われていない現実があります。

一方で、廃棄される服にも問題があります。寄付された服は圧縮されて途上国、特にアフリカに送られ、1着数円から数十円程度で売られます。その結果、現地で洋服を生産していた人たちが生計を立てられなくなり、ガーナでは8割が産業を離れたそうです。これにより、現地の産業を破壊するだけでなく、環境問題も引き起こしています。

この問題は、スマートフォンにも当てはまります。スマートフォンの中身について考えたことがあるでしょうか。レアメタルという希少金属はコンゴで多く採掘されており、それが紛争や子ども兵の問題と深く関わっています。

このように、グローバル化する社会の中で、国際的な問題はどこか遠い国の話ではなく、私たちの生活の隅々まで根を張っているのです。

最後に「私にもこの世界を変える力がある」

最近はSDGsという言葉を耳にする機会が増え、関心を持つ人が多くなりました。しかし、「SDGsにどう関わるか」という視点から出発する風潮には違和感があると原さんは考えます。

「問題意識の欠如したSDGsに対する取り組みは、本質的な意味を持つのでしょうか。教育現場やビジネスの場でいくらSDGsが語られても、その取り組みの目的を理解していなければ意味がありません。外から教え込まれるだけではなく、自発的に考えなければ、意味のある社会貢献にはならないのです。

あらゆる出来事がつながるグローバルな社会に生きる私たちは、豊かで便利な世界が誰かの犠牲の上に成り立っていることに無力感を覚えるかもしれません。しかし、だからこそ、誰かを助けようとする前に、自分の足元に目を向けて、豊かさとは何かを考え、何かを始めるだけでなく、何かをやめることも重要なのではないでしょうか。

これから皆さんが起こす小さな変化が、皆さんとつながるこの世界に影響を与えるはずです。皆さんの中に『私にもこの世界を変える力がある』という勇気が芽生えていれば嬉しいです。」


ペシャライトメンバーの感想

Sさん:
二つ考えたことがあります。一つは、原さんの経験の中で、無力感というキーワードが原さんの活動を変化させた要因だったことです。フィリピンの女の子の物乞いのことはTwitterでは伝わらないという無力感、ウガンダでの支援の無力感。このような無力感を感じて終わりというのではなくて、原さんのようにそこから活動に変えていけることが重要だと感じました。私も、たくさんの経験を通じてその都度感じることを大切にしたいと思いました。
もう一つは身近なことのつながりの話で、国際協力をはじめる時になにかをはじめるだけではなく、何かをやめることも大事だと感じました。そういった点で原さんの言うような根本的な原因も伝えていけたらいいと思いました。

Yさん:
原さんの原体験とSDGsへの違和感というのは繋がっていると思いました。そういった違和感や無力感を大切にすることがなにか問題を考える際に探求できるきっかけになります。世界の現実に目を向けるというのは「助けてあげる」という上から目線のことではなく、そこにある世界の構造に目を向けるということだと思いました。原さんのお話されて事例に限った話ではなく、ありとあらゆる消費に関係することで、生活している上では切っても切れないことだと思います。

Aさん:
明確に攻撃するという意思がなくても社会構造の中に暴力が発生しているということを構造的暴力と言いますが、それの話につながってくると思いました。構造的暴力を知ることが原さんのいう自発的に考えることかなと思いました。「SDGs」と言う言葉が前提になることによって思考停止してしまいます。原さんのような原体験であったり、無力感を感じたり、自分の中に生まれる感情から行動を生み出していくことができるので、感じることを大切にしたいです。


次回は、原貫太さんとペシャライトメンバーの対談を公開いたします。
お楽しみに!



いいなと思ったら応援しよう!