キャラソン日記 2023年8月編
こんにちは、私的音楽同好会です。
今回は、2023年8月分の #キャラソン日記 をまとめました。
ぜひ皆さまも、紹介文を読みながら曲を聴いてみてください!
8/2 夢のBalloon
歌唱:らんま
発表年:1990
作品名:らんま1/2
アニメ『らんま1/2』内の企画、乱馬的企画音盤の第一弾に収録された早乙女らんまのキャラソン。本曲ではアニメ内と同じ雰囲気でキャラクターが歌っており、キャラクター自身を題材にした歌詞であるため、現在まで続くキャラソンの形式が1990年には確立されていたと考えうる1つの事例である。このようなキャラソンが製作された背景として、乱馬的企画音盤ではアニメーションも作られており、アニメと地続きになるように演出されたことが考えられる。なお、早乙女らんま以外にも多くのキャラクターのキャラソンが製作されており、どの曲でも各キャラクターらしさが味わえるものとなっている。もちろん、1990年以前にもキャラソンは存在したとするのが一般的だ。しかし、多くのキャラクターを対象に、キャラクターらしさを全面に押し出したキャラソンを作っている事例は少なく、1990年前後に新しい動きが生まれていたと考えられるのではないか。キャラソンの源流探しはこれからも続く。
8/4 indifference
歌唱:渡来明日香
発表年:2009
作品名:俺たちに翼はない
ゲーム『俺たちに翼はない』のキャラソン。歌唱は作中のヒロインである渡来明日香。曲名になっているindifference(無関心)というのは、彼女の一面を端的に言い表している。彼女はちょっとひねくれていて、周囲の人間に無関心なキャラクターなのだ。
渡来明日香のキャラクター性の面白いところは、周囲に敵意をまき散らすようなよくあるひねくれ方をしているわけではなく、妙にユーモラスな側面を持ち合わせていることころだ(それこそがシナリオライター王雀孫の真骨頂であろう)。
この曲の歌い出しの一節に注目してほしい。「ウザイ男どもが 今日も声かけてくる」という一節だ。そもそも、そんな風に状況を冷静に見つめるようなことから歌い出すこと自体がちょっと面白くてクスッとしてしまうが、面白さのポイントになっているのは「男ども」という言葉だろう。「男たち」ではなくて、「男ども」という言葉でないといけない。そう、彼女は、そうやって物事をどこか斜め上から状況を見ていて、それでほんのちょっとだけ普通からはズレた、かわいげのある言葉選びをするキャラクターでなくてはいけないのだ。先の一節は、何気ない歌い出しでありながらも、まさに渡来明日香らしい、極めてパンチの効いた一節であると言えるだろう。
8/7 100%?ナイナイナイ
歌唱:柊かがみ(加藤英美里)
発表年:2007
作品名:らき☆すた
「らき☆すた」よりかがみんこと柊かがみのキャラクターソング。自己紹介的なキャラソンに対して、このキャラソンはかがみんの「内面の吐露」を描いた楽曲になっている。「どうでもいいよとクールなつもりで落ち込んでた」いつもの面子でかがみんだけ違うクラスになるというお約束に対しての悲哀であったり、「私だけばたばた忙しい 役割分担がオカシイ…」と言うような、ツッコミキャラならではの悩みが語られている。そのネガティブな気持ちに対して、「100%満足なんてナイ」と言い聞かせて前を向く、かがみんのファイトソングである。それに加えて、泉こなたに対する愛情・友情についても歌われている。(寧ろこちらが本題なのかもしれない)この曲を本編ではあまり語られない、こなたへの気持ちが表されたラブソング(あるいは友情ソング)と捉えることも出来るだろう。照れくさくていつもは言えないけど……みたいな、かがみんのデレと優しさが溢れている。かがみん、好きだ。
8/9 こはくいろパンプキン
歌唱:松原穂乃花(CV:諏訪彩花)
発表年:2015
作品名:きんいろモザイク
『ハロー‼きんいろモザイク』放送時に制作された松原穂乃花のイメージソング。穂乃花のような準レギュラー的立ち位置のキャラクターでもキャラクターソングが制作されていたことからも、10年代前半ごろの「キャラクターソング」制作の盛り上がりが伺える。
本曲はハロウィンのころを舞台に、友人(恐らく作中の関係を鑑みるに九条カレンだろう)とお菓子を作ろうとしたり、街へ出ようとしたりということが歌われている。イントロのややチープな感じが、特別な一日ではあるもののあくまで日常に内在している、という雰囲気を出しているようにも思える。
『きんいろモザイク』を含む「日常系」の作品において「日常の中のちょっとした非日常」というテーマは、夏休みや文化祭といった場面でしばしば現れる。「こはくいろパンプキン」は、例えば音楽という形でそれが表現されたらどうなるのか、という試みの好例と言えるかもしれない。
8/11 噂がいっぱい
歌唱:二階堂 頼子(小桜 エツ子)
発表年:1995
作品名:逮捕しちゃうぞ
墨東署を舞台とする警察コメディアニメに登場する、噂好きでおせっかい焼きな二階堂頼子のキャラソン。伸び伸びと歌う姿も当然大好きなのだが、今回は曲の構成が綺麗に作られていることに注目したい。1995年に発表された本曲は、キャラソンらしい表現の源流を探る足掛かりになるはずだ。
AメロやBメロで噂をしているシーンが再現された後、サビでは噂に対する頼子自身の姿勢が歌われ、キャラクターらしさがよく分かる構成となっている。また、アニメ内ではツッコミを入れられる場面が多いキャラであるため、間奏などでもツッコミが挿入されており、頼子と周辺人物の関係性も分かりやすい。
キャラソンはアニメと音楽の世界が密接に関係していることが多いが、この曲は音楽的な展開を考慮した上でアニメ内のシーンとも連続している。本曲が発表された1995年には、キャラソンを制作するノウハウが少しずつ確立しつつあったのかもしれない。
8/15 BOUCING♪SMILE!
歌唱:大神環(CV:稲川英里)
発表年:2014
作品名:アイドルマスター ミリオンライブ!
検索サジェストに「BOUCING SMILE 退職」と出るほど、『ミリオンライブ!』に数多あるソロ曲の中でも特にプロデューサーに大きな影響を与えたとされている大神環(CV:稲川英里)さんの軽快なナンバー。「いつもわんぱく、100%元気!」というコピーがつけられる大神さんらしい無邪気な歌声で綴られる「つまんないコトはやめちゃえっ!」のメッセージには、このアイドルを推したくなる理由が詰まっている。サビ後半の「楽しいほうがいいに決まってるよ おんなじ疲れちゃうのならね」の部分は、コード進行も相まって切なくも暖かい。一方で筆者個人としてはこの曲の強いメッセージ性から、「裏で楽曲制作をする大人の意図」の存在を感じなくもない。二次元に限らずアイドルを推す者として、幼いアイドルの純真さを売り出すことには少なからず気持ち悪さ・残酷さが含まれてしまうな……と親のような目線になってしまうが、そんな自分が一番気持ち悪い。
8/17 忘れるために恋をしないで
歌唱:篠原恵美
発表年:1994
作品名:美少女戦士セーラームーンR
美少女戦士セーラームーンに登場する、極度に惚れっぽい性格で武闘派のセーラージュピターのキャラソン。セーラームーンRのキャラソンは、キャラっぽい雰囲気よりも、美しく自律した大人の雰囲気で歌われている。本曲では、セーラージュピターの過去の恋愛に対する本音が綴られていてとても魅力的だ。
しかし、ここで注目したいのはCD上の曲順である。1曲目のプロローグでは、キャラ設定から制作されたモノローグ形式の音声だけのドラマになっており、2曲目のポエムでは、キャラ自身のピュアな気持ちが綴られている。最後の3曲目がキャラソンであり、ポエム寄りの歌い方と歌詞になっている。曲順によって、キャラ設定とキャラソン上の表現の差異を埋めていると考えられないか。キャラ設定は周囲の登場人物との関係に大きく規定されており、キャラの内面は描きにくいが、ポエムを経由することでキャラ自身の内面を歌いやすくしている。キャラ設定とキャラソンを橋渡しした良い表現である。
8/19 美少女無罪♡パイレーツ
歌唱:宝鐘マリン
発表年:2023
作品名:-
海賊コスプレをするセクシー系Vtuberである宝鐘マリンのキャラソン。Aメロでは年齢を気にする描写が歌われており、キャラ設定上は17歳であるにも関わらず、中の人の年齢が仄めかされている。つまり、キャラ設定と中の人の人格が、キャラソン上で混同して表現されているのだ。Vtuberには配信などでのトークが必要であるため、中の人の人格も当然重要であり、アニメキャラと声優を同一視する傾向にある2.5次元よりも、キャラと中の人が一体化している印象がある。キャラクター論からVtuberを考えてみたいと思った一曲。
8/21 オセロ
歌唱:伊井野ミコ(富田美憂)
発表年:2019
作品名:かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~
正義を信じる寂しがり屋である伊井野ミコによる、彼女が正義を信じるようになった経緯を歌ったキャラソン。元々音程が高くハスキーな声をしているが、1番サビ「どうして傷つかなきゃいけないんだろう?」では曲中の最も低い音程で歌われており、伊井野ミコが抱える痛みが伝わってくる。そして2番サビ後のCメロでは「誰か 救いの白を置きに来て」と歌っており、自分の信念に賛同して一緒に歩んでくれる人を求めているのである。タイトな四つ打ちとクランチギターの上に、ストリングスとハリのある歌声が乗せられており、彼女の雰囲気にも曲のテーマにもよく合っている。
8/23 クジラ雲
歌唱:飛鳥川 ちせ(CV:安済知佳)
発表年:2021
作品名:SSSS.DYNAZENON
社会からの疎外感を抱えた飛鳥川ちせによる、孤独と不安の葛藤を歌ったキャラソン。社会の正しさは分かりつつも、学校には上手く溶け込めず、「色褪せたラクガキと私はここに おいてけぼり」で、常に不安が付きまとう。孤独を癒すズルさも知らない訳でなく、「君が今 多分 近づけば 私今 多分 大人になるんだ」という予感もしている。しかし彼女は、不自由で汚い世界に見切りをつけ、自由で孤独な道を選んでゆく。何気なく過ぎる日常の裏に、そんな人生も存在することを、私は肯定したいと思う。
8/24 てっぺん目指し隊
歌唱:ひなた(CV.阿澄佳奈)
発表年:2018
作品名:ヤマノススメ サードシーズン
山登りを題材にした日常系アニメに登場する、主人公あおいの親友ひなたのキャラソン。登山に苦戦し不安になるあおいを、ひなたなりの言葉で励ます一曲になっている。アニメ3期12話のBGMとしても使用されており、すれ違っていた二人が仲直りする場面を盛り上げている。いつもは意地っ張りで素直になれないひなただが、「ワガママ言いなよ 付き合うよ」とあおいに語りかけており、彼女なりの優しさが分かる。しかし、何故ひなたはこれほど献身的にあおいに語りかけているのだろうか。「なんでって?だって一緒に見たい」からに決まっているではないか。
8/26 内緒の恋~Love Four U~
歌唱:中野四葉(CV:佐倉綾音)
発表年:2021
作品名:五等分の花嫁∬
五つ子姉妹と主人公のラブコメに登場する、中野四葉の恋心の動きを歌ったキャラソン。四葉は「みんながね 大切で 大好きで 幸せを 願ってる」と歌うように、他の4人の姉妹の幸せを常に願っている。彼女の小学生の頃の初恋は主人公であったものの、他の姉妹の恋愛感情に気付いてしまった時には、「内緒の恋だっていいんだ」と自分に言い聞かせていた。しかし、「”好き”の気持ち 止まってくれない」という自身の本音に気付き、「聞かれたら もう絶対 迷わない」と決心していく。この心情の変化について、歌パートでは場面描写がされる一方、間奏の朗読パートでは四葉の本心が告げられおり、彼女が抱える葛藤が伝わる一曲になっている。
8/25 こころメッセージ
歌唱:滝本ひふみ(CV.山口愛)
発表年:2017
作品名:NEW GAME!!
ゲーム制作が題材の日常系アニメに登場する滝本ひふみによる、対面で会話する決心を描いたキャラソン。彼女はいわゆるコミュ障であり、対面で話そうとすると途端に挙動不審になってしまう。一方、メールなどのメッセージ上ではとても饒舌で、「ありがとうヾ(。・ω・)ノ 」と顔文字も多用する程にフランクになる、という性格である。そんな中、2番の歌詞の題材にもなっているように、主人公である涼風青葉の一生懸命な言動に触発され、徐々に対面でも話しかけるようになってゆく。「この気持ちは ちゃんと伝えたいから」こそ、彼女はこころのメッセージを声にするのだ。これらの揺れ動く心情が、一歩ずつ刻まれるドラムマシンと優しいシンセサイザーの上で、彼女の柔らかい声によって伝えられており、本曲を聴いている側も心地よい高揚感に包まれていく。
8/26 髪とヘアピンと私
歌唱:斎藤 千和
発表年:2006
作品名:ARIA The NATURAL
ヴェネツィアを舞台とした水先案内人の日々を描いた、アニメARIAの主要登場人物である藍華・S・グランチェスタのキャラソン。藍華が伸ばしていたロングヘアの髪が事故で燃えてしまった後、新しい自分を受け入れ、ショートヘアにすることを決意した心境を歌っている。このエピソードは2期18話で描かれており、先輩の晃さんに励まされて藍華が一歩踏みだすシーンのBGMとして使われ、「今日から変わろうと決めたの」と彼女の心の声を代弁しているように見える。Choro Clubを含めた製作陣によって練り上げられたARIAシリーズらしい演奏にのせて、普段はお転婆である藍華のパーソナルな一面に触れられる一曲となっている。
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