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「どんな事態にも対応できる存在に」 学校に行かない選択をした子どもの居場所を守る

鹿児島テレビ 2023年1月25日放送(FNNプライムオンライン特集記事)

文部科学省の最新の調査によると、不登校の児童や生徒は全国で29万人以上。鹿児島県内でも年々増加し、2021年度は過去最多を記録した。「学校に行かない」という選択をした子どもたちの居場所は今どこにあるのか、取り巻く環境はどう変わってきているのか取材した。

不登校の子どもたちが通う「フリースクール」

午前10時。鹿屋市の住宅地にある一軒家に次々と子どもたちが入っていく。ここは、一般社団法人が運営するフリースクール「ふらっと」。大隅半島の4市5町から20人ほどの子どもたちが通っている。

この日の午前中は英語の授業。と言っても、ここに通うのは小学生から高校生までと、学年はバラバラ。受験生組は試験問題に取り組む一方で、自分のペースでプリントに取り組む子どももいる。


このフリースクールに通う子どもたちが不登校になった理由は、学校での人間関係や家庭の事情などさまざまだが、話を聞いてみると…。

――ここのどういうところが楽しい?

小学4年生:
ぜんぶ!みんなが嫌いな食べ物があるって言ったら、給食にそれが出ないところがいい

高校1年生:
ここに通って9カ月ぐらい。学校はみんなでやるじゃないですか。ここは1人にしてくれるし、フレンドリーに接するからいい

受験勉強に励む中学3年生の男子たち。フリースクールで知り合い、今では同じ志望校を目指す仲だ。

中学3年生:
前は本当にしゃべれなかったけど、なんかいろいろやってるうちに(仲良くなった)

――いつも何の話を?

中学3年生:
だいたいゲームの話

全員がフリースクールで好きな時間を過ごし、のびのびとしている。代表の大倉さんは、この場所を「寄り道」と表現する。

一般社団法人 PS支援機構・大倉一真代表理事:
本当は学校という空間の中でいろんな学びをさせてあげたいというのはあるが、今はあくまで寄り道。せっかく寄り道で来てもらっているんだから、まずは自分の好きなように過ごしてもらい、その中で「実はこういうことをしたい」、「こんなことで悩んでいる」ということを僕たちに一つ一つ話してくれれば、そこは一緒に向き合いながら、解決できる悩みなんだと気づいてもらえたら、それも一つの成長かなと

「学校に行く意味が感じられない」

鹿児島県内の過去10年間の不登校の児童・生徒数の推移をみると、ここ4、5年で大きく増え始め、2021年度には過去最多の3,688人になった。その要因として最も多いのが「無気力・不安」、次いで「いじめを除く、友人関係をめぐる問題」。


この現状について、教育学が専門の鹿児島大学・金子満准教授は次のように指摘する。

鹿児島大学(教育学)・金子満准教授:
「無気力」の中でよく出てくるのは、学校に行く意味が感じられないとか、何のために通っているのかわからないといった、学校の本来の目的が問われていること。そこが一番考えなければならないことだと思う。今、学習という概念は、教員と子どもたちの1対1、もしくは知識の一方的な伝達という、そういった時代ではありません。相互に、つまり、お互いが学びあう関係が学習ですよね


学習の在り方が問われている中で金子准教授がポイントにあげるのが、学校とフリースクールの連携だ。

鹿児島大学(教育学)・金子満准教授:
学校もいろんな特徴がありますよね。そしてフリースクールもいろんな特徴がある。そこがお互いに、できること・できないことをしっかり相談しながらサポートしあうという関係が一番よいのではないか


フリースクール「ふらっと」がある鹿屋市の教育委員会も、不登校支援の場として指導員による学習支援を行っているが、不登校の子どもが増加し、人手が足りていない状況。


鹿屋市教育委員会 学校教育課・弓削壮司指導主事:
もう少し踏み込んだ形で児童生徒の社会的自立のための支援の在り方について、フリースクールとの連携を強化していかないといけないのかなと思っているところです

民間だからこそ守れる「子どもたちの居場所」

専門家、行政ともに連携を課題に挙げる中、フリースクール「ふらっと」が欠かさないのは、子どもたちが在籍する学校への情報共有。

フリースクール「ふらっと」のスタッフ:
きょうはこういう勉強をしていました、きょうの状態はこうでしたと書いたうえで、学校の先生に報告書として送っています


一般社団法人 PS支援機構・大倉一真代表理事:
勝手な理念で子どもたちの対応はできない。あくまでもこの地域共通の認識で同じ方向性を持っていないといけない。僕らはスペシャリストになる必要はないんですよ。病院、公的機関というのは必ず専門職がいるので、スペシャリストはそこで十分。ただ僕らは、どんな事態にも対応できる存在(ゼネラリスト)にならないといけないと思っていて。これは民間だからできることでもある


民間や行政、それぞれの立ち位置で子どもたちの「学びの場」をどう守るのか。大人もステレオタイプに陥りがちな教育観を見直す必要があるのかもしれない。

(鹿児島テレビKTS放送)FNNプライムオンライン1月30日掲載

私たちの仕組みだけではまだまだ十分とは言えません。ここ、鹿児島県大隅地域は東京都や大阪府くらいの広さであるにもかかわらず公共交通機関がほとんどなく、家族の送迎が無ければ支援に繋がることができません。特に、一人親や困窮家庭で支援が必要な方のために送迎の仕組みを充実していきたいです。