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京王線ユーザーで話題の名物アナウンス。あの車掌さんにお礼を言いたい!!

■前回までのあらすじ

パーソルが勤労感謝の日に実施した #これ誰にお礼言ったらいいですか プロジェクト。

前回は親と子供が向き合って食事が取れるこの画期的すぎる席をつくった方を探し当て、ご本人にお礼を伝えに行った。(詳細は下記の記事↓)

さて、今回は第二弾。
次は誰のどんなお仕事にお礼を言いに行くか検討していた我々の元に、こんな投稿が届いた。

東京の通勤時間帯といえば当然満員電車。
相当な混雑で当然車掌さんも多くの対応に追われ忙しいはず。
それなのに通常のアナウンスに加えてわざわざ丁寧なアナウンスをするその車掌。

京王線の、車掌席にいるその人は、どんな人物なのだろうか。

あいにく京王線の車掌さんは車内アナウンスで名前を明かすことはないため、まずは上の投稿をしてくれたポスト主、Nekobusさんにコンタクトを取ることにした。

■あの名物車掌の正体は

Nekobusさんから早速返信をもらい、これらの有力情報をいただいた。

・時間帯について かなり不定期ではありますがこれまでの所感では、新宿駅で少なくとも朝は9時〜10時台、夜は20時〜21時台に耳にしております。

・声の特徴 恐らく20代〜30代の男性の方で、ゆっくりとした抑揚と丁寧な言葉遣いが特徴です。

・お声がけの内容 朝の時間帯の時はお帰りの際もお待ちしております、など。少々大袈裟かもしれませんが、ホテルのフロントスタッフの送迎の挨拶の様な、電車内で初めて聞くと少し驚いてしまうくらい思いやりに溢れた内容です。

恐らく私だけではなく、沢山の方々が日々活力を貰っているのではないかと思っております。この度の企画を通して、京王線ユーザーからこの方へ心からの感謝の気持ちが少しでも伝わればとても嬉しいです。

もしやと思いXで「京王線 アナウンス」と調べてみると、「粋な計らい」「車掌の声に癒される」「これぞ神対応」などの投稿が次々にヒット。
アップされたそれらの動画をよく聞くと、

優しい男性の声で丁寧な言葉遣い、
ゆっくりとした抑揚。
まるでホテルのフロントスタッフのようなトーン。

どうやらすべて同一人物の声な気がしてくる。

さらに、その声の特徴はすべて、Nekobusさんが教えてくれた車掌さんの情報と完全一致しているのである。

しかしこれだけでは推理の域を出ない。

我々はその事実を確かめるために、京王電鉄さんにこの車掌さんについて問い合わせた。

するとほどなくして、一本の電話が。

その車掌、すぐにわかりましたよ。彼はSNSであがるたびに社内でも話題になる人です。取材OKですので、高幡不動駅に来てください。」

京王線に限ったと言えど、かなりの数の車掌さんがいるはず。
そのなかで、驚くほどすぐに特定されたあの声の持ち主は社内でもかなり有名な名物車掌のようだった。

動画や投稿を繰り返し見ているうちに、すっかり車掌さんのファンになってしまった我々は約束の地、高幡不動駅に向かった。

■ついにご本人とご対面。あのアナウンスの理由とは。

高幡不動駅に到着し、京王電鉄さんの広報部の方と待ち合わせた我々。
「それではこちらへ」と言われるがまま、改札の窓の向こうに大きな待機所とかがあるのかな、という我々の予想を大きく裏切り、たどり着いたのは通路の脇の大きな扉。

中の写真は撮影できなかったが、入り口はこのようになっている。乗務区という見慣れない文字。

恐る恐る中に入ると、駅というより、そこはまるで会社の一室。
壁には「1人1人が京王の顔!」「腕まくりしてませんか?手袋は汚れてませんか?」と書かれたポスターや綺麗に磨かれた全身鏡など、ふだんから鉄道のプロとしての礼儀や身だしなみを大切にしていることがありありと見てとれる。

初めて目にする駅の裏側に興奮しながらキョロキョロしていると

「あ、来ましたよ」
広報の方に声をかけられた。


「こんにちは」


あの声だ…!
ずっと探し求めていたアナウンスの声の持ち主に、我々はようやく対面できたのである。

今回取材させていただいた中三川さん

謎の名物車掌:初めまして。中三川と申します。

●ウワサの名物車掌 中三川さんについて

ー本日はどうぞよろしくお願いいたします。ちなみに、こちらのNekobusさんのご投稿、ご存知でしたか?

中三川さん:知らなかったです。
ありがたいですし、こうして届いているんだと思えるととても嬉しいです。

ーこういった取材は初めてなのでしょうか?

中三川さん:車掌になってから約5年ですが、これまでにお声をいただくことはあったものの、こうしてインタビューされるのは初めてで。緊張しています。

ー声的にかなりベテランの方かなと予想していたのですが、めちゃくちゃお若くてびっくりしております。車掌さんとしてふだんどのようなお仕事をされるのでしょうか。

中三川さん:そうですね、車掌の主な業務としてはドアの開け閉め、車内アナウンス、お客さまとのやりとり、そして重要なのは非常時の対応、お客さまの安全確保ですね。

ーそういったやり方などは研修などで教わるのですか。

中三川さん:はい。最初に研修を受けて、師匠と申しますか先生のもとで基本を教わります。私の先生はアナウンスにこだわる方で細かくご指導いただきました。

実際にふだん使われているものを使って丁寧に説明してくださった。

●名アナウンスにたどり着くまでのいきさつ

ー中三川さんのアナウンス、動画でも拝見しましたが本当に細やかで優しくて感銘を受けました。ご自身で研修で教わったことをアレンジして、という感じなんでしょうか。

中三川さん:それこそ最初車掌として1人立ちした時は緊張して、やらないといけないことに必死でした。それに段々いい意味で慣れてきて、心の余裕ができた時に、お客さまのためにもっと何かできないか、と思ったんですよね。

ーそれがアナウンスの工夫だったのですね。

中三川さん:そうです。AIや機械化が進んでいる中、人がやるこの仕事に人ならではの工夫をしたいと思いました。
例えば乗り換え口の案内。プライベートで慣れない電車に乗る際は、何も調べないでアナウンスと看板だけで乗り換えるようにしています。その時に感じた「ここわかりにくかったな」「もっとこうすれば良いかも」という気持ちをふだんのアナウンスに活かすようにしています。

ー確かに、京王線沿いでイベントがあった際の車内アナウンスがわかりやすい!という声をSNSで拝見しました。

中三川さん:ふだん乗車されないお客さまが多く乗車されるイベント時や、ご年配のお客さまなどが多く乗る時間帯は、特に親切な案内を心がけています。

ーえ!時間や乗客によってアナウンスを使い分けているということなんですか?

中三川さん:そうです。車内の雰囲気や時間帯によって声のトーンやキー、抑揚や大きはもちろん、どこまでの情報を踏み込んでアナウンスするかは声の使い分けをしています。

中三川さんの声の使い分けをまとめると、以下のようになるそうだ。

朝/夜: 通勤ラッシュの時間帯は乗り換え口など知っているお客さんが多いため情報は最低限。声は低めで落ち着いたトーンで話す。

昼: 特に休日などお出かけする方が多い場合は、キーを上げて抑揚をつけて話す。

●そこまでアナウンスにこだわる理由

ー本当に凄すぎるスキルです…。そこまでのこだわりを持って取り組まれるモチベーションの源泉はなんなのでしょうか。ホテルや飲食店ってサービスを上げることで来客が増えて、結果売上が伸びることがあると思うのですが、交通手段に関してはそういうイメージがなく。

中三川さん:もちろんこれで京王線沿いに住もう!と思ってくれるお客さまがいたら嬉しいですが(笑)。私としてはたまたま私が車掌として乗務する列車に乗ってくださった訳ですから、乗ってよかったなあと感じてくれればうれしいな、と思っています。やっぱり人には優しくしないと、と。

ーそれも研修で教わったことなのでしょうか。

中三川さん:いえ、母です(笑)。
あと私がアナウンスでこだわる大切な理由が他にもありまして。
それはアナウンスで車掌への信頼感を得られると、有事の際にもアナウンスを聞いてくれる、ということなんです。
やはり車掌の使命はお客さまの安全。何か事故やトラブルが起こった際、少しでもこの人なら安心だと、その際のアナウンスに信頼を置いてくれることが重要だと私は考えています。

ーなるほど。確かに災害やトラブルなどの有事の際、その時初めて聞く声よりふだんから馴染みがある声のアナウンスの方が「この人なら安心だ」と信頼できますよね。

中三川さん:また、実は自分で言うのもおこがましいのですが、車掌1年目の時に私のアナウンスに関してお褒めのお声を100件以上いただきまして。

ー100件!?それって凄いことですよね?

中三川さん:会社の人には自作自演を疑われました(笑)。どの声も大変うれしくて、だからこそマイクパフォーマンスだけではなく、これからもお客さまの安全という一番基本で一番大切な部分を誰よりも疎かにせず向き合いたいと思っております。

今後は英語でのアナウンスやご案内も勉強して磨きたい、と更なる高みを目指す中三川さん。

そんなどこまでもやさしさと向上心のかたまりな名車掌中三川さんに

「いつも素敵なアナウンス、ありがとうございます!!!!」

と京王線ユーザーの皆様に代わってポストをお渡し。

「嬉しいです。額縁にハマりますかね。」とはにかみながら受け取ってくださり、記念撮影も行った。

※安全に十分配慮して撮影を行なっております。
※安全に十分配慮して撮影を行なっております。

▼結論とまとめ 京王線の名物車掌を探し当てたところ、プロ意識の高い名車掌すぎた。
・名車掌さんの名前は中三川さん
・2024年現在車掌デビューして5年
・せっかく人がやる仕事だから、と思いアナウンスへの工夫を始めた。
・アナウンスは台詞だけでなく車内の雰囲気やお客さまに合わせて抑揚、声のキー、大きさなどを細かく調整している。
・アナウンスが好評で年間100件以上お褒めの声が寄せられた
・アナウンスにそこまでこだわる理由は  
 ①有事の際にお客様から信頼してもらえるため。  
②自分がたまたま乗務する列車に乗ったお客さまに乗ってよかったなあと感じてほしいから。

■中三川さんのお話を聞いて

「次は〇〇駅、〇〇駅。お出口は右側です。」
「次は〇〇駅、〇〇駅。お出口は右側です。皆様本日もお疲れ様でした。」

文字数にすればたった数文字程度のちがい。
昨今は前者のような自動音声のアナウンスが主流になってきた。
たしかに効率性や正確性だけを考えると録音した音声を流すほうがいいだろう。

しかし、

「たまたま乗ってくださった方が、乗ってよかったなあと感じてくれれば」
「この時代に人がやっているから、人ならではの工夫をしたい」

中三川さんは車内アナウンスを情報伝達手段としてだけではなく、車掌と乗客という人と人ならではのコミュニケーションと捉え、常に誰かのためにできる最大限はなにか考えて実践されていた。特に、ふだんから信頼関係を結んでおくことが、有事の際の安心につながるというお話は目から鱗が落ちた。

いきいきと、ご自身の仕事について語る中三川さんから
世の中を良く変えることは新しい発明や革新を起こすことだけではなく、
派手さはなくとも、じぶんの仕事の中でいま誰かのためにできる最大限を追求すること
なのだと、改めて気付かせてもらった。

そしてまた、この中三川さんのアナウンスの意図やご本人の名前すら知らない乗客の方々が、ちょっとした違いに気づいてSNSでスポットライトを当ててくれたことも素敵だ。

実際にその投稿を持ってその仕事のご本人にお礼をお伝えすると、みなさんとても喜んでくれたのは印象的で、
やはり注目や称賛を求めてその仕事をやったわけじゃなくても、自分の仕事が誰かのためになっているという実感はうれしいものなのかもしれない。

現にパーソルが実施した最新の「はたらいて、笑おう。」グローバル調査でも、「自分の仕事は、人々の生活をより良くすることにつながっていると思いますか?」という質問に対し85.9%の人が「はい」と答えている。

もし今後も、お礼を言いたいナイスな仕事を見つけたら勤労感謝の日に限らず、投稿してみてほしい。もしかしたらその先ではたらく多くの人にお礼が届くことだってこうしてあるかもしれないだろう。

最後にはなりますが、取材にご協力いただいたみなさま、
#で投稿してくださったみなさま 、ありがとうございました!


え?これで終わり?ここまで読んで中三川さんのアナウンスの声聞けないの???と不安に思われた方、ご安心ください。

もちろんアナウンスの動画も頂いております。

それでは最後にお聞きください。
京王電鉄の名車掌、中三川さんのアナウンス〜朝ver〜です。

文:「#これ誰にお礼言ったらいいですか」プロジェクト事務局メンバー

「#これ誰にお礼言ったらいいですか」プロジェクトサイトはこちら