問題解決の本を読んでみた③−4
問題解決の本の3章、3部作で作り終えられると思ったのですが、今回の話が長く、急遽4部作に変更しました。
そのため、③−4に該当する動画が二本あります。
手を打つ場所を決める
原因分析ができたら、対策の立案に向けて、どの原因に手を打てば良いか考えて行きます。
因果の構造図はWHEREで特定した問題が発生している原因を表しているので、これらの原因を解消すれば、特定した問題は解消されることになる。
対策とは「原因に対して打つもの」である。最後の最後でHOW思考に陥ってしまわないように最後まで気を抜かず行きましょう。
せっかく問題を特定して原因を深掘りしたのに、それを無視して全く違う対策を検討してしまったらもったいないお化けが出ますよ。
因果の構造図には、かなりの数の原因が記されているはずです。その全てに手を打ち、原因の解消ができれば理想的ですが、現実的ではありません。手を打つためのリソースは限られています。
数多くある原因から最も効率的・効果的に問題が解消される原因を探しましょう。
因果の構造図では、下にある原因が引き金となって上になる原因を発生させています。そのため、基本的には下にある深い原因に手を打てば、上にある原因にも効果が現れることになります。
しかし、実際には、深すぎる原因には手を打てなかったり、効果が現れるまでに時間がかかりすぎたりします。
一概に深いところに手を打てば良いとは言い切れないのです。
手を打つ場所を選ぶ際、三つの段階を経て選んでいきます。
まずは問題解決の効果を高め、次に対策の実現性を高め、最後に検討の効果を高めます。
問題解決の効果を高めるポイントは次の4つです。
主たる原因に手を打つ
全体に影響が出るように手を打つ
浅すぎず深すぎないところに手を打つ
立場とリソースを考え、分担しながら手を打つ
続いて、対策の実現性を高めるポイントは次の3つです。
「単にやっていないだけの原因」に手を打つ
「入ってくる矢印が少ない原因」に手を打つ
「下にある原因」を避けて手を打つ
最後に、検討の効果を高めるポイントは次の2つです。
悪循環を断ち切るように手を打つ
いくつかの原因にまとめて手を打つ
①主たる原因に手を打つ
まず、問題解決の効果を高める最初のポイントは「主たる原因」に手を打つことです。ある問題に対して複数の原因が考えられる場合、全ての原因が同じように作用しているとは考えにくいです。数ある原因の中には、特に強く影響を与えている原因、いわゆる「主たる原因」が存在します。
この「主たる原因」が何なのかをしっかりと見極め、そこに手を打っていくのが最も基本的な考え方です。
例えば、アミューズメントパークの売り上げ低下の問題で、「来客数が減少している」原因を探した結果、「施設が古くなっている」という原因が出てきたとします。
「施設が古くなっている」といっても、施設にはいろいろなものが考えられます。アトラクション、土産屋、レストラン、通路、階段、インフォメーションセンター、ゲートの扉……この中で「来客数が減少している」に最も効いていると思われる原因は、おそらく集客の目玉である「アトラクション」ではないかと推察できます。
実際に何が主たる原因なのか調べるには「なぜなぜ分析」のポイントである「事実で確認をする」を実践しましょう。
潜在顧客も含めた顧客にアンケートをとり、アミューズメントパークに来場する際に上記のいずれの新しさを重視しているか、というデータを取れば、結果は一目瞭然です。
なかなか階段やインフォメーションセンターやゲートの扉という結果にはならないでしょう。
関係はしているが、主たる原因でないものに手を打っても効果は限定的だと考えられます。
いくつかの原因を見比べた場合に「こちらの矢印の方が太い」「原因として大きく効いている」ものを探しましょう。
枝葉にいくら手を打っても、目覚ましい効果を得ることは難しいです。しっかりと情報に基づく検討を行い、主たる原因を明らかにすることで、効果の高い手を打つことが可能になります。
②全体に影響が出るように手を打つ
アミューズメントパークの売り上げ低下が来客数も減少しているが同時に客単価も下がっているという原因で引き起こされている場合、全体に影響が出るように「来客数」に効いている原因にも「客単価」に効いている原因にも両方に手を打つ必要がある。
「来客数」にしか効かない対策では「客単価」についての原因は解消されず、効果が限定的になってしまう。
原因に対して手を打つ場合は、しっかりと因果の構造図を見渡し、広く「全体に影響が出るように」手を打ちましょう。
③浅すぎず深すぎないところに手を打つ
なぜなぜ分析では、「打ち止め」になるまで原因を掘り下げます。それでは「打ち止め」になったところに手を打てば良いかというと必ずしもそうではありません。
あまりにも深い原因に手を打とうとするとWHEREで特定した問題が解消するまでにかなり長い時間がかかってしまいます。
例えば、「メーカーで新製品の販売数が伸びていない」原因として、「新製品がお客様に認知されていない」←「営業が新製品の説明を行えていない」←「営業に新製品の知識がない」←「営業教育が不足している」と掘り下げた。さらにその原因として、「教育ツールが不足している」←「営業部門の教育に対する意識が欠如している」まで掘り下げ、対策として「営業部門の意識改革を実行しよう」と考えたらどうなるか。
意識改革のためのいろいろな施策を実行しても、実際に新製品の販売数が伸びるようになるまでには長い年月を要します。
この対策は中期的には非常に有効ですが、来月や再来月といった短期間で効果を出したい場合には、間に合いません。
短期で成果を出そうとするなら、「教育に対する意識の欠如」にはひとまず目をつむり、とりあえずは営業担当に「該当の新製品についての知識共有会」を開いたり、お客様に新製品のアピールをする方が早いでしょう。
このように、中長期的な抜本策を講じるなら「深いところ」、クイックヒットで短期的な効果を狙うなら「浅いところ」で効果が出るまでの時間軸を考えながら、さまざまな深さのところにいくつか手を打つのが現実的なやり方です。
とはいえ、「浅いところ」と言っても、浅すぎて「商品が売れないのは商品を売らないからだ」などと「コインの裏返し」にならないようにしましょう。
④立場とリソースを考え、分担しながら手を打つ
「効果を得るためには何ヶ所に手を打てばいいのか」疑問に思いませんか?
多くの手を打てば打つほど問題は解消されるかもしれませんが、数ある原因の全てに手を打つと膨大な数の対策が必要となり、現実的ではありません。
どのくらいの数の原因に手を打てば良いかは、対策を打つ際には誰しも疑問に思うことでしょう。
数は「可能な限り」というのが正しいと思います。この「可能な」というのは、つまり、「あなたの立場と使えるリソースの範囲」ということになります。
どうしても担当レベルでできることは小さいHOWに縛られます。
けれども、自分で手が打てる範囲が限られているなら、残る部分は他の人に働きかけて説得し、動いてもらうやり方もあります。これが「分担しながら手を打つ」という考え方です。
自分で対応できる範囲には限りがあり、他部署なども巻き込んで分担して問題解決に取り組むのが一般的です。
より多くの原因に対して手を打てば、より効果の高い問題解決となることは間違いありません。
あとは、あなた自身がどのような立場にあり、どこまでのリソースを使えるのかにより、自分で手を打つ場所が変わってきます。自分の力だけだと問題解決の効果が限定的となりそうであれば、積極的に他者に働きかけて分担し、組織として効果が出るように問題解決を行なっていきましょう。
⑤「単にやっていないだけの原因」に手を打つ
いよいよ、どの問題に手を打つのかを考えることになる。まずは基本事項として「単にやっていないだけの原因」があればすぐに手を打つことを覚えましょう。
新人の受注が上がらないという問題を掘り下げていった結果、「要望を聞く時間を取っていない」という原因にたどり着いたとしましょう。さらに「なぜ要望を聞く時間を取っていないのか?」と考えた際に、実は深い理由がなかったとします。
特に忙しくもなく、顧客を訪問するのに嫌な理由もなく、顧客に一旦断られたわけでもない……「なぜやっていなかったんだろう」という状況は「単にやっていないだけ」の状態です。
このような原因がみつかればラッキーです。
やっていなかっただけなので、「ではやりましょう」と決められます。できない理由は特にないので、実現性の高い対策になります。
実際の仕事では、長年にわたって解決しない問題で「単にやっていないだけ」の原因はなかなかみつかりません。見つかったらラッキー。
⑥「入ってくる矢印が少ない原因」に手を打つ
「単にやっていないだけ」つまり、「入ってくる矢印がない」打ち止めの原因はなかなかみつかりません。
どうしても入ってくる矢印があるものを選ぶことになります。
入ってくる矢印が多く、出ていく矢印が少ない場合、できない理由はたくさんあるが、波及効果は少ないことになります。
反対に入ってくる矢印が少なく、出ていく矢印が多い場合、できない理由は少なく、波及効果が大きいことになります。
入ってくる矢印が多い場合は、まだ原因の深掘りが少なく、できない奥深い原因が多数残っている可能性も高いです。
とりあえず「入ってくる矢印が少ない原因に手を打つ」ことが原則となります。
⑦「下にある原因を避けて」手を打つ
これまで、対策の実現性を高めるために、「単にやっていないだけ」「入ってくる矢印が少ない」つまり、「それ以上の奥深い原因がない」原因に手を打つように述べてきました。
しかし、現実にはそういう原因ばかりが都合よく見つかるものではありません。
そこで、対策の実現性を高めるための最後のポイントとして重要なのが「下にある原因を避ける」というテクニックです。
これは対策を考える際にとても有効なテクニックですので、しっかり理解していきましょう。
先程の「新人の受注が上がらない」問題についての掘り下げの図を見てください。
もし、一番下になる「要望を聞く時間を取っていない」という原因がどうしても解消できないときは、どうすればよいでしょうか?
たとえば、「要望を聞く時間を取っていない」原因は「他の業務が忙しい」なぜなら、「社員数が減った」「新たな取り組みを開始している」、すなわち、「会社の業績が悪化している」というふうに悪循環に陥っている場合が考えられます。
「社員を増やす」とか「新たな取り組みは凍結する」といったことを決断できる立場にあなたがなければ、あなたは対策が打てないことになります。
「だって人が減っているのに業務が忙しいんじゃ、どうやっても時間が取れないし、お客様の要望なんか聞けるわけがないよ。どうしようもない!」と愚痴を言いだしてしまいます。
このように「どうしようもない。仕方ない」と愚痴で終わらせてしまう人はあちこちにいますが、それでは問題解決には繋がりません。
思い出してください。問題解決のためには「人のせい」「環境のせい」にしていてはいけないのです。
一方で、この状況を打破して問題を解決していくためには、割り切りが必要になります。
「どうしようもないものはどうしようもない」
と割り切って、
「下の原因が残っていることを大前提に上の原因を解消できないか」考えていきます。
「要望を聞く時間を取っていない」のは仕方ないと諦めて、その一つ上にある「お客様の要望を聞けていない」に手を打つことを考えます。
そうすると「要望を聞く時間が取れない大前提で、お客様の要望を聞くためにはどうするか」考えることになります。
そうすれば手を打てそうなアイディアが出てくるでしょう。
ヒアリングシートを作って配布してみよう、とか、訪問する時間はないが電話をかけてみよう……などなど。
どうしようもない原因があっても、その原因を避けて手を打つことで問題は解決できる!
最近流行りの「逃げてもいいんだよ」というのはこういうことですね。
⑧悪循環を断ち切るように手を打つ
もうほとんど「なぜなぜ分析」はマスターしました。後少し、「検討の効率を高める」ためのポイントを説明します。
因果の構造図には悪循環が起こる場合があると述べました。
あるレストランで「利益が低下している」問題があったとします。コスト削減は努力しているので、「売上が低下している」ことが主たる原因だったとします。
その原因は「お客様を呼びこめていない」←「店構えが古びている」←「回収する予算がない」←「利益が低下している」と元に戻ってしまい、悪循環に陥っています。
このような状況の場合、この悪循環をどこかで断ち切る必要があります。
実は悪循環は上手く断ち切ると「好循環」に持ち込むことができます。
ぐるぐると循環している中で、「下にある原因を避けて手を打ちます。」
例えば、「お客様を呼びこめていない」に手を打つ場合、下に「店構えが古びている」という原因があるので、この原因を避けて対策を考えます。
雰囲気の良さをアピールしても通じないので、料理の味や貸切利用などサービスをアピールします。
この対策が功を奏して、お客さまを呼び込むことができれば、売上が増え、利益がふえ、店舗を改修する予算ができ、店構えを刷新できます。
古びているならではの雰囲気の良さからは脱却しているので、店構えを刷新すれば、さらにお客さまが増えることになります。
このように悪循環が逆に回り始めると、一瞬にして好循環に切り替わるのです。
好循環に入れば、放っておいても事態はどんどん良くなっていきます。
これは、わたしたちが目指すところだと思います。
ほんの少しのボタンの掛け違いで、物事が悪循環に陥ってしまうことはよくあることです
しっかりと因果関係を見極めて、効率的な問題解決を行うようにしていきましょう。
⑨いくつかの原因にまとめて手を打つ
最後は「いくつかの原因にまとめて手を打つ」という考え方です。
「新製品の販売数が伸びない」という問題を掘り下げた原因がいくつか出てきたとして、それぞれの原因にバラバラに手を打つと効率が悪いです。
「プレゼン能力が低い」という原因に「プレゼンテーション能力を強化する研修の実施」という対策を行い、「現場で使える販促資料がない」という原因に「販促資料の作成」という対策を行ったとします。
これを別々の担当者が連携せずに勝手に実施すると、販促資料がバラバラでそれらを用いてプレゼンテーションができるレベルまで営業を育て上げる必要が出てきます。
しかし、「いくつかの原因にまとめて手を打つ」ことを意識していると、「プレゼン能力が低い」と「販促資料がない」の二つをまとめて対策しようと考えることができます。
これにより、プレゼン能力が低くても説明できるような販促資料を作成することができ、プレゼン能力を強化する研修を軽くすることができます。
このような「いくつかの原因にまとめて手を打つ」ことを「一網打尽の対策」と呼びます。
さまざまな原因に対して個別に対応するより、まとめて手を打つ方が効率的に進むこともあります。
具体的な対策の検討を行う際には「まとめて一網打尽に手が打てる原因はないか」を是非考えてみてください。
動画
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